2016年6月30日号(経済、経営)

2016.07.19

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2016年6月30日号
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 H  A  L  通  信
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                発行日:2016年6月30日(木)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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          2016年6月30日号の目次
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★世界経済はどうなるのか?(5):英国のEU離脱
☆今後の日本の景気はどうなるのか
☆施主代行から見た建設工事に対する見解
☆小さな会社の大きな手(15):投資の怖さと中毒
 
http://magazine.halsystem.co.jp
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今号は経済、経営の話題をお送りします。
 
英国のEU離脱で、参院選が霞んでしまった感があります。
離脱が予想外だったこともあって、誰も次の展開が読めない状況です。
今号は、この話題から解説したいと思います。
 
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┃★世界経済はどうなるのか?(5):英国のEU離脱         ┃
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英国のEU離脱で株式や為替相場は揺れていますが、実体経済への影響はまだ何も出ていません。
今のところは、投資家心理が揺れて、マスコミが騒いでいるだけです。
 
実体経済への影響はこれから少しずつ出てくると思いますが、全てが悪材料というわけではありません。
日本としては冷静に情勢を見て、先走りしないことが肝要です。
ここは「後出しジャンケン」でいくことです。
 
英国にとっては、国際金融センターとしてのロンドンの価値が下落することが最大の懸念材料です。
ロンドン市が単独でもEUに残留すると息巻いているのは、この懸念からです。
すでに、外国銀行は、EU内に拠点を移すか、新たな拠点を作る動きを始めています。
この座をフランスのパリが狙っています。
オランド大統領の英国非難のトーンが上がっているのを見れば、明白です。
当初、穏健な発言が多かったドイツのメルケル首相の言動が強硬になってきているのも、同じ果実を狙っているからです。
 
EUとの交渉では、離脱派の甘い目論見は全く通用しないことは確実です。
これまで、英国はEU内でかなり特権的な権利を得てきました。
例えば、通貨をユーロに移行せず、ポンドのままとかの権利です。
「それなのに、何をわがままな・・」という思いがEU側に強いのは当然です。
EUとしては連鎖を防ぐ意味から、強硬姿勢を崩さないでしょう。
 
現在、EUは53の国・地域との自由貿易協定(FTA)を結んでいますが、英国は、この果実を全て喪失するわけです。
これらの協定を一から独自に結び直すには、気の遠くなる時間と労力が掛かります。
しかも、当然、足元を見られますから、今より悪い条件を飲まざるを得なくなります。
「お先真っ暗」と言ってもよいでしょう。
 
世界経済への影響は、これからの英国とEUとの交渉結果次第となりますが、その道筋が見えたあたりから、結果はどうあれ、世界経済は落ち着きを取り戻すでしょう。
いったん株式などの債券を現金化したファンドも、現金を持っているだけでは損失が出るだけです。
いずれ投資に回さなければなりませんので、結局、元に戻るのも時間の問題と思われます。
為替相場におけるユーロは、しばらくは低迷するでしょうが、もともと世界最大の経常黒字と実質金利の高さという強みを持つ通貨です。
一方でポンドの下落は続き、長い目で見れば、相対的にユーロは今以上に強くなる可能性があります。
 
直後に行われたスペインの総選挙でEU批判派が伸び悩んだように、離脱のドミノ現象は起きないと予測します。
離脱から起きる混乱や経済的損失を考えて、各国国民が冷静さを取り戻すと思うからです。
性質は違いますが、民主党政権のお粗末さに懲りた日本の有権者のその後の選択を見れば、EUでも同じようなことが起きるように思います。
 
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┃☆今後の日本の景気はどうなるのか                 ┃
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英国のEU離脱劇が参院選の最中のこともあって、「日本の景気は大丈夫か?」という懸念が改めて浮上してきた。
実際、株式の大幅下落や円高など、これまで安倍政権が強調してきたアベノミクスの成果が飛んでしまったような現象になっている。
安倍首相の心中は「リーマンショック級」なのかもしれない。
 
そのような皮肉はさておき、まずは、円ドル相場がどうなるかが第一の焦点である。
もちろん、EU離脱の影響でポンド、ユーロは下落し、いずれに対しても円高に振れている。
しかし、問題は対ドル相場である。
この点、日本の国内景気と米国景気の動向が相場を決めるという図式に大きな変化はない。
具体的には、次の3つの動きに注目すべきである。
(1)日本の経常黒字、(2)米国の利上げ、(3)輸出企業およびファンドの為替ヘッジ
6月27日の週明けの東京市場に注目していたが、為替相場は102円台と落ち着いていた。
つまり、市場は上記の3指標の動きを見て、当面の模様眺めを決めたようである。
となると、短期的には100円を挟んでの小幅な上下になると見ている。
 
ただ、米国の利上げ見送りが確実になると、95円以上の円高という局面も考えられる。
そうなると、政府の介入も現実味を帯びてくるが、大幅な介入は難しく、効果は期待できない。
その場合、政府に残された手は金融政策と財政出動になるが、日銀の緩和余地は乏しい。
黒田総裁は自爆覚悟の策を繰り出すかもしれないが、危険すぎて踏み切れるかどうか。
残された財政出動であるが、早々と「秋には10兆円の補正予算を」という声が聞こえてくる。
となると、この情報はとっくに市場に漏れてしまっている。
だから、「市場は、すでに織り込み済み」との声が同時に聞こえる。
この通りだとすると、政府の情報リーク戦略はオソマツである。
 
だが、上記の予想を覆す大胆な策を政府が打ち出すことも可能なわけである。
参院選で改憲勢力が2/3以上となれば、憲法改正が国会の議題に上るであろう。
その際、9条問題より先に「新しい国造り」の指針を打ち出すことが出来れば、日本は世界から注目される。
例えば、「47都道府県の解体と再編」とか「首都移転」、「陸海空の交通網の大幅な機能向上」、「税制の大幅改造」・・いくらでも出てくる。
外交政策でも、「米国が離脱しても、日本は環太平洋の国々とTPPの締結を全力で推進する」とか「移民の受け入れ」などを、タブーなしに国会の議論の場に載せていけばよい。
その中で、当然「防衛問題」は大きな議題になる。
9条改正は、そうした中で議論すべきであり、「憲法問題=9条問題」とするのは不毛な議論である。
 
経済があってこその国民生活である。
選挙後の国会は、この大原則から議論に入って欲しいものである。
 
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┃☆施主代行から見た建設工事に対する見解              ┃
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前号で、弊社が施主の代行として設計・施工の総合管理を行った工事のことに言及した。
この工事では、元請けの希望を入れた「適切な工期の確保」を行ったが、結局、工期を延長する事態になってしまった。
工事会社は、工期終盤は土日も夜間も施工する「いつもの光景」で頑張ったが、間に合わないことが明確になった時点で、弊社から工期の延長を申し入れた。
こちらから申し入れた理由は、「工期を守る」という契約違反を回避する手段として行ったことであり、施主の許可を取った上で行った。
もっとも、こうした危険があることを想定して、弊社の判断で、デッドラインとなる引渡し日には1週間のクッションを設定してあったが、このことは工事会社には伏せてあった。
こうした処置で実害は出なかったので、ペナルティも無しとした。
 
この工事会社は、技術もそこそこあり、施工も誠実に実行していた。
また、社長をはじめ、役員、社員の方の応対も好感を持てる会社である。
それなのに、なぜ工期遅延が起きたかである。
理由は簡単である。
弊社が総合管理に入っていたからである。
読者のみなさんは「話が逆?」と思われるであろう。
分かりやすく言えば、弊社の存在が工事会社の甘えにつながってしまったのである。
施工経験を持つ弊社がいるから「問題が生じてもなんとかなる」という甘えである。
そこに落とし穴があったのである。
 
結果として、工事会社は、弊社の存在により工期遅れへのペナルティは免れた。
しかし、「適切な利益の確保」は同様にはいかなかったはずである。
工期の妥協は出来ても、それによるコスト増までは面倒は見られないからである。
また、当然、品質の妥協は出来なかったから、施工手戻りのコストも余計にかかったはずである。
 
でも、基本的に「良い会社」なので、弊社で行った「クッション・ゼロ式」のコスト分析結果は伝える予定でいる。
この分析を徹底して行えば、今後の工事でのコスト管理を強化していけるはずである。
次の工事での結果が楽しみである。
工期、品質、コストにおいて、本当に「信用を託す」ことが出来るか会社になれるかどうかの判定は、もう少し先になる。
 
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┃☆小さな会社の大きな手(15):投資の怖さと中毒         ┃
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しばらく戦略投資の話を続けてきましたが、そろそろ”まとめ”に入ります。
 
一番難しい戦略投資は、新事業を起こすことであり、新商品の開発だと思います。
よく話題に上るソフトバンクの孫社長が行ってきた企業買収や多額の株式購入も戦略投資の範疇に入りますが、少し違和感があります。
あれは、戦略投資というより“博打”だと思うからです。
孫社長と交際がある、ユニクロを展開する(株)ファーストリテイリングの柳井社長もこう言っておられました。
「孫さんは、もっと事業に関心をもったほうが良いのだが・・」
 
たしかに、戦略投資と博打は紙一重かもしれません。
前述のエピソードも、あくまでもビジネスに軸足を置く柳井さんと博打に足を踏み入れた“かもしれない”孫さんの違いだと思いますので、これ以上の論評は避けます。
 
話を元に戻します。
ここまで弊社が行ってきた新事業や新商品開発の成功確率は1割ぐらい(良く見て2割?)だと自覚しています。
今のところ、稼いだカネよりつぎ込んだカネのほうが大きいです。
ですから、ここで、この先の展開を諦めれば、差し引き損失で終わります。
しかし、諦めなければ終わりは来ません。
というより、諦められない状況を作ることが成功のカギだと思うのです。
それは、「経営者自身の弱気を封じ込める」ためです。
何度も言及していますが、背水の陣こそが成功のカギだからです。
 
もっとも、メルマガで、こんな話ばかりを読まされていたら、気が滅入って仕方ないですね。
一番大事なことは、経営者がこのような状況を楽しめる性格かどうかです。
成功者と言われる経営者の方々のお話を聞く機会があると、いつもそこに注目してお話を聞いています。
そして、例外なしに、苦境というより「激動を楽しむ」気質が備わっておられることを感じます。
 
でも、気を付けるべきことは「“楽しむ”から“中毒”に移行しない」ということです。
よく耳にする言葉があります。
「倒産と離婚はクセになる」
残念というか幸いというか、私は両方とも経験がありません。
それで、両方の経験を持つ知人に、その時の心境を聞いたことがあります。
その知人は、こう言いました。
「破綻するまでは心労で限界まで追い込まれていた。でも、破綻してみたら『あっ、こんなものか』と思ったし、破綻処理が終わってみれば、何もかも失ったが、晴れ晴れとしたよ」
私には、その心境の深いところまでは分かりませんが、なんとなくは理解出来た気がしました。
私も、倒産を決意したところまでは追い込まれた時があります。
その時の心境は、案外落ち着いていました。
妻や家族からは、とてもそうは見えなかったようですが、今思い出しても、本人は、どこか”すっきり”していたように思います。
 
だが、これが「中毒現象」なんだと思います。
成功率が低い戦略投資ですが、それでも「勝ちに行く」戦略でなければなりません。
「一か八かの博打」であってはなりません。
そして、失敗を悟ったら、即時撤退して、傷を深めないことです。
「1勝9敗は良いが、10戦10敗は負け癖が付くからダメだ」
これが、戦略投資の鉄則だと思っています。
 
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<後記>
6月29日、自民党の小池百合子氏が東京都知事に立候補を表明しました。
前々から名前が上がっていましたから、都民からすると違和感はないですが、自民党都連は「事前に相談がなかった」ということでへそを曲げています。
都連はどうしても人気アイドルの父親を担ぎたいようで、ご本人の辞退表明にも関わらず日参しているようです。
都民のひとりとして、こうした自民党都連の姿勢には不快感を覚えます。
知事を選ぶ主役は都民であって政党ではありません。
その姿勢を逸脱しているように思えて、「みっともねえぜ!」と言いたいです。
 
また、出たい人が立候補できることは民主主義の柱の一つです。
小池百合子氏が、たとえ自民党を除名されてもの強い気持ちがあるなら、圧倒的な勝利を収めると思います。
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