2019年6月30日号(経済、経営)

2019.07.01

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2019年6月30日号
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発行日:2019年6月28日(金)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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           2019年6月30日号の目次
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★経済発展とはなんだろう
☆付加価値
◇超人への憧れが商売になる
◇現代貨幣理論は成り立つといえるのか?
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
「老後2000万円必要」という言葉だけを切り取って騒ぐマスコミと国会。
年金だけで老後を暮らせると考えている国民は皆無でしょう。
「だから、国会での真剣な討議を」という淡い期待は・・、抱くだけムダですね。
こんな茶番国会に頼らず、自分の人生は自分で考えていくしかないようです。
でも、そんなこと当然か・・・
 
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┃★経済発展とはなんだろう                     ┃
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中国の驚異的な発展は、日本や欧米諸国の援助なくしては不可能であったと言えよう。
では、なぜ自由主義陣営の諸国が共産主義の中国を援助したのであろうか。
同じ共産主義国家のソ連とは激しく対立していたのにである。
 
それは、いろいろな方が解説しているように、中国は豊かになれば共産主義を捨てて自由主義国家になると、欧米は信じたからである。
しかし、結果は真逆となった。
豊かになった中国は、国内においては共産党独裁を強め、海外に対しては軍事力を前面に出した強引な覇権拡大を推し進めている。
中国はどこで曲がっていったのであろうか。
 
今の経済発展の基礎となった改革開放政策を主導したのは、トウ小平(とうしょうへい)である。
彼はこう言った。
「豊かになれる者が先に豊かになって落伍した者を助ければよい」
いわゆる「先富論」である。
この思想は、共産主義の理想そのものといっても良い。
しかし、発展した中国は助け合いの社会にはならず、極端な貧富の格差が発生し、富者も政府も落伍した者を見捨てる社会となった。
この姿は、もはや共産主義とはいえず、弱肉強食の原始資本主義の姿である。
 
しかも、凄まじい格差によって中国社会は分断され、階層を異にする者同士の共通の場はまったく無い。
こうした中国の姿は、「経済発展とはなんだろう」という疑問を我々に突き付けているとは言えないだろうか。
 
日本は、明治以降、急速な経済発展を遂げたが、その結果の世界大戦でその果実の大半を失った。
国民生活は地に落ち、食事にも事欠く極貧に落ちた。
私は、そうした時代に子供時代を過ごした一人だが、不思議と「不幸だ」という意識はなかった。
あえて言えば、「あの時代の日本は貧しかったが、心は豊かだった」と言える。
その背景にあったのは、水と緑に恵まれた日本の国土である。
何もなく、畑の農作物を盗むほどに飢えていた子供時代であったが、緑の野山や丘を駆け、川で泳いだ日々は、精神的には豊かであった。
 
そうした日常は、決して田舎だけのものではなかった。
復員後、東京で頑張った父は、やがて家族を東京に呼び寄せた。
狭い借家での貧しい暮らしであったが、当時の東京には、緑の丘や川もあった。
防空壕の跡などは、格好の遊び場であった。
田舎ほどではなくても、屋根に寝そべって見上げる空には無数の星々があった。
 
今の日本は年2%にも届かない低成長経済下にあり、GDPも中国に抜かれ、差が開く一方である。
それでも言える。
中国の人々より幸せであると。
 
経済は国家の根幹を支える大事な要素である。
おカネは、個々の生活を支える大事な基盤である。
しかし、無限の経済発展や無限の収入増を追い求めることは不可能であり、時には下落を受け入れることで、真の豊かさが何かを実感できるのではないか。
経済は、無限の上下を繰り返す海の波のようなものなのだから。
 
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┃☆付加価値                            ┃
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ガソリンスタンドがどんどん消えていく。
燃費の良いエコカーが普及した当然の結果なのだが、そうした未来を見据えて手を打ってきたスタンドの経営者がどれだけいたであろうか。
ガソリンのように価格以外に付加価値を付けられない商売は、最終的には2社しか生き残れないと言われている。
1社になると独占となり価格を自由に釣り上げられるので、法で独占を禁じている国が大半である。
つまり、市場競争の終焉は2社だけとなるのである。
それを裏付けるように、石油元売り会社の合併が相次ぎ、2社体制に近づいている。
 
では、こうした事態を回避できる付加価値とは、どんな価値であろうか。
消費者に「えっ、こんなものがあるの」と言わせる、驚きを起こす商品を生み出すことである。
アイリスオーヤマという会社をご存知と思う。
「羽のない扇風機」に代表される“驚き家電”を次々に生み出している成功企業である。
そのアイリスオーヤマが、新たな挑戦として、スポーツ施設市場に参入することを発表した。
しかも、初年度30億円受注と強気の目標を前面に出しての挑戦である。
さらには、下降局面の韓国市場へ進出するという。
既存の市場に、彼らなりの風穴を開ける戦略があるのか。
その帰趨に注目したい。
 
一方、堅調だった建設受注が下降に向かい出した。
建設産業は、請負産業の宿命で、常に発注者の都合で市場動向が決まってきた。
産業自らの努力で市場を開拓してきたとは言い難い。
 
昔、ある大手の不動産会社の社長から言われた言葉を思い出す。
その社長は、私にこう言った。
「君は建設会社の内情に詳しいようだから、スーパーゼネコン5社の違いを説明してくれないか」
私はこう答えた。
「どこに依頼されても、同じものが同じような品質で造られるでしょう」
その答えを聞いた社長は「なるほど」と言い、言葉を続けた。
「やはりそうか。僅かな金額の違いだけということか。しかし、それを選択とは言わんな」
最後の「それを選択とは言わんな」という言葉が、今も耳の奥に残っている。
 
建設会社の付加価値とはなんであろうか。
その社長はこうも言った。
「先ほど君から聞いた新たな構想の建設ビジネス。あのようなものが、我々にとっての新たな選択肢となるのだろうな」
その話は、また後日に。
 
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┃◇超人への憧れが商売になる                    ┃
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世界の檜(ひのき)舞台で活躍する日本人アスリートが増え、頼もしい限りです。
その中でも、大リーグの大谷翔平選手、ボクシングの井上尚弥選手は別格と感じます。
「どこが別格?」と言われるかもしれませんが、この二人の共通項は「超人」です。
高々と放物線を描くホームランを打ち上げたかと思えば、弾丸ライナーを観客席に打ち込む大谷選手。
世界レベルの対戦相手を一撃のもとにKOし、涼しい顔をして立っている井上選手。
そうした姿から、二人に「超人」を感じる人も多いのではないでしょうか。
 
超人への憧れは、時代を超えた一般人の普遍的な感情です。
それゆえ、昔からエンタテーメントの世界は、そうしたヒーローで溢れています。
スーパーマンやスパイダーマンなどのマーベルの主人公たち、スターウォーズの登場人物たち、人間ではないが、鉄腕アトムなどのロボットたち。
みな「超人」であり、普遍的な人気を保っています。
 
そうしたスーパーマン的主人公は架空に過ぎませんが、スポーツの世界はリアルな世界です。
その世界の現実の超人たちにファンが熱狂するのも当然といえます。
子供の頃に憧れた人物を思い返してみれば、数々のスポーツ選手たちが脳裏に浮かぶのではないでしょうか。
 
現代は、CG技術の驚異的な発達によって、現実かと見紛うばかりの映像が溢れています。
ゲームだけでなく、映画やTVの中で実写さながらのヒーローたちが暴れまわっています。
しかし、どこか空虚だと感じるのは私だけではないと思います。
大谷選手や井上選手たちの人気は、ネットの普及で進むバーチャル世界に対するアンチテーゼかもしれません。
スポーツ界の超人たちは、バーチャルではなくリアルな肉体を持つ現実です。
プログラムが生み出した電子信号ではなく、生身のボディーを持った人間です。
そこに強い意義があるのだと思います。
 
バーチャル世界の「Eスポーツを五輪種目に」という声もあるようですが、オリンピックは生身の人間が競うリアルな世界です。
こうした考えにはまったく賛同できません。
やりたければ、別の世界でどうぞと言いたいですね。
 
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┃◇現代貨幣理論は成り立つといえるのか?           ┃
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前月号でMMT理論(現代貨幣理論)の簡単な解説をしましたが、読者のみなさまには「釈迦に説法」でしたね。
ところで、MMT理論が建設産業には追い風になると、感じられた方は多いのではないでしょうか。
建設産業は、現在ではなく近未来の世界を創る投資産業です。
現在の価値基準を上回る価値を生み出すことを目標とする産業です。
ゆえに、MMT理論と相性が良いのは当然といえます。
 
先日の日刊建設通信新聞の最終面一面に、京都大学大学院の藤井聡教授がMMT擁護論を展開されていましたが、業界紙も同様の主旨を持っているのだろうと思います。
 
しかし、そうは言っても、冷静に考える必要はあります。
MMT理論が成り立つには、いくつかの前提条件があります。
自国通貨が国際的な信用を持っている、政府が金融世界を的確に運用する力量を持っているなどの条件です。
こうした条件を考えた場合、日本の財政運営は本当に大丈夫と言えるのでしょうか。
少し考えてみましょう。
 
日本の「国の借金」は、2018年度末で1,304兆4000億円となり、対GDP(国内総生産)比で237%に達しています。
また、その大半(976兆6035億円)は国債で、2018年12月末時点でその国債の43%を日銀が保有するという異常状態であることもたしかです。
それでも大丈夫といえるのは、異次元の低金利状態が続いているからです。
その超低金利のおかげで、国債の利払い費用は年間で“たったの”9兆円で済んでいるのです。
この先、大幅なインフレが起こり、金利が暴騰すれば、利払いは数十兆円に跳ね上がり、予算を組むことすら難しくなります。
これは単純な算数の問題ですが、しかし、現実にはそうはならないでしょう。
 
どうしてか。
日本国民全体に「将来への不安」というバイアスが強烈にかかっていて、インフレへの圧力になっているからです。
また、若者の「欲望」が異常な低次元に落ちていることも大きな要因です
つまり、今の日本は、世界史上で例のない「低欲望社会」になっているのです。
ゆえに、金利がほぼゼロなのに預貯金額は増え、2018年12月末時点で、個人の金融資産が1,830兆円に膨れ上がっているのです。
金利が安い今はおカネを借りるチャンスなのですが、企業も借りようとせず、返済や内部留保に回す。
だから、国がいくら財政支出を増やしてもインフレになりようがない国、それが日本なのです。
 
MMT理論には「インフレが起きない限り」という前提が必要ですが、今の日本がそれにピタリと当てはまっているのです。
しかし、それは前述したように、日本特有の現象が下敷きにあるからで、MMT擁護の経済学者たちの主張する「日本が良い例」というのは少し違うと思うのです。
やはり、MMTは危険な理論であるとの認識は必要なようです。
 
日本の場合、もうひとつ特殊な要因があります。
それは次号で解説します。
 
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<編集後記>
 
香港が、危惧されたように共産主義中国に飲み込まれる方向に進んでいます。
それを阻止せんとする香港市民の抵抗はすさまじいですが、いつまで続けられるでしょうか。
経済界は、今回の香港デモは、中長期的な潜在リスクが顕在化してきた兆候と捉えていて、今後、警戒感は広がっていくと思われます。
直近の市場は、すでに、中国に関係する一連の事態をリスク要因として捉え、香港デモの前からリスクオフの薄商いの様相を強めていました。
世界的に「米国債、円、金」の安全資産の価格上昇が続いていますが、それも、そうした見方を裏付けています。
香港デモが、根幹的な中国リスクへと発展する起爆剤となるか、見ていきたいと思います。
 
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