2022年7月31日号(経済、経営)

2022.08.03

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2022年7月31日号
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発行日:2022年8月1日(月)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2022年7月31日号の目次
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★中国経済は「末期状態」と判断すべきか?(その1)
◇これからの近未来経済(20):新しい資本主義を知ろう
◇論理思考は大切だが、もっと大切なことがある(4)
☆生産性の向上(その2)
 
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
コロナ禍の第7波が予想をはるかに超えるレベルで拡大しています。
さりとて経済活動は止められず、政府も自治体も打つ手なしの状態です。
弊社の地元の浅草の人出を見ていると、感染が広がるのも“しょうがないか”と思うしかありません。
もはや、我慢して“集団免疫”を獲得する時を待つしかないのでしょうか。
 
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┃★中国経済は「末期状態」と判断すべきか?(その1)        ┃
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これまで、幾度となく「中国経済は破綻する」と言われてきましたが、それらの予測はことごとく外れ、未だに破綻しない状態が続いています。
私も破綻予測派でしたが、自由資本主義の中で育ったせいか、中国のような独裁による「国家資本主義」に対する理解不足があったように思います。
 
ですが、不動産バブルが異様に膨らんでいく中国を眺めていると、「日本のバブルと同じ道をたどっているのでは」との危惧が大きくなってきています。
「いや、日本以上の崩壊になるだろう・・」とすら思えます。
バブルのゴールは破綻ですが、難しいのはバブルが弾ける時期の予測です。
自由主義国と違い、国家がむりやり延命させることが可能な中国では、政治的な要因が大きく絡んでくるため、より難しくなります。
しかし、延命策は延命でしかなく、根本的な解決には繋がりません。
習近平政権は強引なゼロコロナ政策を続けていますが、経済的にはこうした政策が、バブルの延命策を行き詰まりに追い込むことになるでしょう。
そこで、今回から数回に分け、中国経済が末期状態かどうかを論じていきたいと思います。
 
中国政府は経済崩壊を何より恐れています。
崩壊が現実になれば、現在の習近平政権のみならず共産党独裁が崩れるかもしれないからです。
しかし、現政権が相次いで打ち出す政策は支離滅裂、かつ矛盾だらけです。
中央政府は、異常に加熱した不動産バブルに対し、近年、過剰と思えるほどの規制を掛けてきました。
しかし、この規制強化で不動産バブルが崩壊する兆しが強くなってくると、崩壊に歯止めをかけようと、一転して、在庫整理を促すよう不動産市場に対する規制緩和に動き出したのです。
だが、この緩和が逆に不動産市場での投げ売りを呼び、バブル崩壊が早まるとの懸念が強まってくると、地方政府に対し、不動産価格の大きな変動を禁止する「値下げ禁止令」を出すよう圧力を掛けてきたのです。
つまり「不動産在庫は減らせ」、しかし「不動産価格の値下げは許さない」という、市場メカニズムを完全に無視した中央政府の方針のもとで、地方政府も不動産業者も右往左往状態に陥っているのです。
 
現在、中国の不動産業界は空前の在庫余り状態です。
2006年ごろから始まった都市開発の猛ラッシュで、いまや居住可能な住宅は34億人分に膨れ上がっています。
人口14億人の中国の2.5倍近い数で、全国民が2戸ずつ住居を所有してもなお余る計算です。
この歯止めがかからないことも独裁政治の大きな欠陥なのです。
慌てた習近平政権は、2016年に「脱・住宅在庫あまり」を重点政策として打ち出し、不動産開発プロジェクトに歯止めをかけるバブル圧縮政策を次々に打ち出しました。
1990年の日本の「総量規制」とよく似た政策です。
当然、それによって起きた不動産企業のデフォルトの連鎖が中国経済を直撃し、銀行の経営リスクに繋がり始めています。
まさに、日本のバブル崩壊の再現に他なりません。
違うのは、「値下げは許さん」という強権の発動です。
まさに独裁国家でなければできない政策です。
次回に続けます。
 
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┃◇これからの近未来経済(20):新しい資本主義を知ろう      ┃
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本メルマガの読者の方でも、岸田首相の唱える「新しい資本主義」については「言葉だけ知っている」というレベルではないでしょうか。
私も似たようなもので、以下の4分野を推進するという程度の知識しかありませんでした。
(1)人への投資と分配、(2)科学技術・イノベーションへの重点的投資、(3)スタートアップの起業加速及びオープンイノベーションの推進、(4)「GX(グリーン・トランスフォーメーション)及びDX(デジタル・トランス フォーメーション)への投資
 
ですが、それも無理はありません。
具体策が書かれた「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 ~人・技術・スタートアップへの投資の実現~」が発表されたのは今年の6月7日で、それまでの間、ほとんどの人はその中身を知ることができなかったわけですから。
政権発足が2021年10月ですから、「なんと悠長な・・」と言うしかありません。
 
さて、気を取り直して、その内容を解説したいのですが、とても紙面が足りません。
というより、長文のわりには、さしたるインパクトが無いのです。
と、ここで気が付きました。
「インパクトはないが、なんでも一応の品揃えはある」ということにです。
そして、これが自民党の特徴であり、強さと言えることにです。
一言で言って、デパートなのです。
「新しい資本主義」は、こうした自民党という政党の性格そのものを表したものなのです。
ゆえに、掲げた重点投資4分野に目新しさはなく、これまでの政策課題を並べただけに過ぎないのです。
しかも、どの課題も、これまで有効な手が打てず“売れ残った”古い政治商品ばかりです。
つまり、当然”やらなければならない”ことばかりなのです。
故に、岸田首相は、胸を張って「どうだ!」と威張るのではなく、「なぜ、これまで実行してこなかったのか、アベノミクスが頓挫した要因との関係はどうなのか」を、まず国民に丁寧に説明する必要があるのです。
そして、この文章全体を覆っている隠しようもない“官僚臭さ”を排して、ご自分の筆で書き直して欲しいと切に願います。
 
ですが、首相の批判だけするのも片手落ちなので、次回から重点分野の4点について、私なりの意見を述べていきたいと思います。
 
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┃◇論理思考は大切だが、もっと大切なことがある(4)        ┃
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「倫理・社会」という授業がいつから始まったのか、調べてみました。
Wikipediaによると、高校では1963年から始まり、1982年に「倫理」という名称に変わったとありました。
すると、私は高校で「倫理・社会」を教わったはずですが、まったく記憶にありません。
当然、内容を理解する由もありません。
若い人に聞いてみると、授業では、なにやら“道徳的なこと”を教わったようですが、ほとんど記憶に残っていないようです。
どうも、教える先生側のほうが「倫理」を理解していないような印象を受けました。
 
そこで、学校の先生をしていた友人に聞いてみたところ、やはり授業内容の大半は道徳論のようでした。
となると、以前の「道徳」と内容に大差はなく、なぜ「倫理」としたのかがわかりません。
おそらく、字面が「倫理」のほうが“カッコよい”程度のことだったのでは、と皮肉に見ています。
 
前号で書いたように、「倫理」は、自分が決める自らの行動規範であり、外から強制されるべきものではありません。
一方、「道徳」は社会秩序を守るため、自分が所属する組織で決められた行動規範として、守ることが義務付けられた規則のようなものです。
この組織の最小単位が家族であり、大きな単位が地域であり、国家となるわけです。
法律には、公が制定する「道徳」の側面があります。
かつて存在した「尊属殺人の罪の重さ」などは、「親は子より上位にある」とする道徳論から来ていました。
道徳は、宗教の経典のように明文化し易いので、「論語」のように文書として現代に伝わっているものもあります。
それに対し、「倫理」は個人の内面に存在するものであり、明文化されるものではありません。
また、他人に宣言する必要もありません。
 
宗教は道徳の色合いが強く、信者が守るべき規範を制定していますが、宗教によって大きな違いがあります。
キリスト教は「~するな」とか「~せよ」というような道徳的規範が多い宗教のように思います。
その反対が仏教で、個人の行動より個人の心理の持ち方のような倫理的側面が強いように思います。
イスラム教は?
海外現場で接した経験しかありませんが、両方の要素が入り混じっているように感じました。
 
さて、ここまで「論理では割り切れない大切なことがある」を論じてきましたが、論理思考を否定しているわけではありません。
どのような問題であれ、まずは感情を排して“論理的”に解決への道を模索するべきです。
しかし、その道を絶対視しないで、割り切れずに残る“余り”にも目を向けていきたいものです。
 
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┃☆生産性の向上(その2)                     ┃
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第1回で述べたように、生産性の計算式は以下のように単純です。
・生産性=GDP(国民総生産)/労働の総投入量(=労働人口×一人当たりの労働時間)
つまり「働き方改革」で休日が増え、残業を減らしても、GDPを現状維持できれば生産性は向上するわけです。
 
これを一企業で考えてみましょう。
働く時間が減っても売り上げが維持できれば、この企業の生産性は「向上した」といえます。
こんな企業が多ければ、日本全体の生産性は向上するわけです。
これは小学校の算数の問題ですね。
 
企業にとっては、売り上げ維持の中で残業代が減れば利益が向上するので、良いことです。
ですが、残業代が減った労働者は収入減となり憂鬱になります。
なんのことはありません。
これでは、労働者の収益の一部が企業利益に変わっただけです。
「ならば、基本給を上げて残業代の減った分を補填すれば良いだろう」という声が聞こえてきそうです。
たしかにそうですが、企業は、「そう言われてもね・・」と、どうしても基本給を上げることには及び腰です。
利益が落ちた時に基本給を下げることが難しく、かつ人員整理も難しいからです。
企業側の自由度を上げる工夫が必要になるわけです。
 
もう少し考えてみましょう。
売上高の維持と生産性の向上を両立させるには、労働の総投入量を減らせばよいわけです。
ところが、労働の総投入量=労働人口×一人当たりの労働時間です。
つまり、生産性の計算には、時間当たりの給料は無関係なのです。
これが、労働者が生産性に関心を持てない要因のひとつになっているといえます。
ということは、生産性の計算式に「時間当たりの報酬」を組み込めば関心を高める効果があるのではないでしょうか。
 
弊社では、労働の総投入量を「総コスト」に変え、個人単位の報酬(給料ではありません)と労働時間、さらに労働の質を表す指標とをリンクさせて生産性を割り出しています。
この結果を見積単価に反映させるようにして、企業収益を維持しながら各人の意識を上げるようにしています。
 
生産性の向上には、デジタル化や仕事の仕組みを変えるなどの抜本的な対策が必要ですが、働く個人のモチベーションも欠かせない要素といえます。
しかし、前述したように生産性の計算には労働報酬が入っていません。
企業は、この関係性の希薄さを真剣に考えないといけないのではないでしょうか。
 
例外はありますが、時短は進んでいるようです。
「良いことじゃないか」と言いたいのですが、人々の表情が明るくなったとは言えません。
かえってサービス残業が増えたとか、仕事の能率が落ちたとかのマイナスの声もあちこちで聞かれます。
日本は、どうも良い方向に向かっているとは言えない雰囲気に包まれているようです。
この雰囲気を変えるためには、生産性向上の果実を賃金報酬の引き上げに繋げることが重要になってきます。
それには、生産性の向上を人件費以外のコスト削減につなげるコスト管理の改革が必要です。
次回、そのことについて考えてみたいと思います。
 
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<編集後記>
日本はEV(電気自動車)の普及が進んでいないと言われますが、それが悪いとは思えません。
普及を阻んでいる要因に充電時間の長さとかバッテリーの問題などがありますが、抜本的な解決策は見通しすら立たない現状です。
脱炭素の切り札のように言われて、購入には多額の補助金が付けられていますが、この補助金はEVを持たない多くの庶民が負担しているのです。
「どこか変だな?」と、疑問ばかりが湧いてきます。
 
 
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