中国の今後(後編)

2017.10.03


中国は10月18日から、5年に一度の全国人民代表大会(略称=全人代)を開催する。
この全人代には、常に「日本の国会に相当するもの」との説明が付くが、民主主義国家の国会とは似て非なるもので、新しい執行部のお披露目のセレモニーと思ったほうがよい。
ただ、今回の大会は世界の注目を集めている。
2期目に入る習近平主席の独裁体制が固まるかどうかに関心があるからである。
まず第一の注目点は、習近平国家主席が「党主席」のポストに就任するかどうかである。
ご存知のように、共産党一党支配の中国では、国家主席より共産党のトップのほうが格上である。
今の習近平国家主席の共産党での肩書は「総書記」である。
なぜか共産主義、社会主義は「書紀」とか「委員長」とかの肩書が好きなようであるが、この話はまた別の機会で。
現在は、総書記が共産党トップを意味するので、習近平氏が最高権力者であることは間違いない。
総書記よりも“エライ”「党主席」というポストは、毛沢東が1976年に死去するまで保持していたが、
個人崇拝が強くなり、そのことが文化大革命の悲劇に繋がったということで、1982年に、当時のトップ トウ小平が廃止した。
それを覆し「党主席」を復活させるということになれば、習近平総書記の独裁体制が固まり、
「2期10年」が慣習となっているトップの座を半永久的に保持することを意味する。
日本にとっても無関心ではいられないことである。
二番目の注目点は、「チャイナセブン」と言われる7人の常務委員の顔ぶれである。
8月31日号で書いたように、情報では以下の顔ぶれが上がっていた。
習近平 国家主席(留任)  太子党派
李克強 首相(留任)    共青団派
胡春華 副首相       共青団派
汪洋  全人代常務委員長  共青団派
栗戦書           太子党派
陳敏爾           太子党派
韓正            海派
入れ替わりがあるとすれば、以下の候補。
劉奇葆 共青団派
趙楽際 太子党派
王滬寧 太子党派
かなり以前から、習近平主席の右腕と言われ腐敗撲滅(というより政敵打倒)に辣腕を振るった王岐山の留任が取り沙汰されていた。
しかし、定年67歳といわれる常務委員として残るには、69歳という年齢がネックであった。
上記のリストに王岐山の名前はないが、慣例を押し切る可能性は残っている。
もし留任ならば、それだけ習近平主席の権力基盤が強固になったことを意味する。
これが第三の注目点である。
「中国の夢」を語ることで、習近平主席は壮大な野望を持っているかのように思われるが、現実の厳しさはよく見ている。
今の中国が見ている世界情勢は、次のような世界である。
「小さな武力衝突は起きても、大国間の戦争は起きない。経済のグローバル化と相互依存はさらに進展し、世界の平和は続く」
「一方、政治的には米国一極体制から多極化への動きが加速され、その過程の中で、世界は不安定化する」
そして、中国が進める世界戦略については、以下のように思い描いている。
「世界が不安定になることは、リスクであるが同時にチャンスでもある。今や世界大国となった中国は、こうした新しい時代の秩序の形成やルール作りに積極的に関与し、自国の権益を拡大していく」
その先には、薄ぼんやりではあるが、米国に代わって世界一の強国になるという野望が見え隠れしている。
こうした野望の実現性については、次号の「中国の野望はなるか?」で解説したいと思う。