純粋な軍事の話(5)

2019.03.18

「このコーナーは物騒な話ばかり書いている」と敬遠される方もいらっしゃると思います。
ですが、軍事抜きに歴史は語れませんし、現代は、物騒な国が物騒な兵器を有する時代です。
避けては通れない話として書いています。
 
では、戦争において最も重要なものは何でしょうか。
それは「情報」です。
「そんなこと、当たり前だろ」と怒られるかもしれませんが、もう少し話を聞いてください。
情報の大切さのような当たり前のことを「当たり前だ」と言って終わらせてしまうことが多いと思います。
でも、それだと何も進歩がありません。
だから、もう少し聞いてください。
 
情報そのものも大切ですが、情報伝達の早さと正確さが伴っていないと、むしろ、その情報が危険となります。
かつ、早さと正確さは「二律背反」として、同時に達成不可能な要素です。
ゆえに、軍事情報における最優先課題もその矛盾の解決にあります。
 
桶狭間で今川義元を破った織田信長は、義元の首をとった者より本陣の場所を探り当てた者により多くの褒美を取らせたとあります。
情報の価値を知り抜いていたからです。
だが、この時代はリーダーの判断が絶対であり、情報の価値判断ができるリーダーをいただけば、勝てないまでも負けは回避できた。
 
しかし近代は、戦国時代よりはるかに複雑になっていて、その分、情報の価値の見極めが重要になっています。
対立の度合いを深めている米国と中国ですが、両国の軍事情報を的確に掴むことは難しいです。
特に、民主主義の米国に比べて、一党独裁の中国の軍事情報は、嘘やガセネタばかりで、よく分かりません。
「米国と肩を並べるのも時間の問題」とか「もはや上回っている分野もある」とかの脅威論があるかと思えば、「張り子の虎」とか「質が相当に低い」とかの楽観論もあります。
客観的な事実情報を客観的手法で読み解いていくしかありません。
 
近年、南シナ海では、ベトナムやフィリピンの漁船を体当たりで沈めるなどの暴挙が目立つ中国ですが、米艦の威嚇通過には手出しひとつしません。
また、連日、領海侵犯を繰り返す尖閣諸島では、自衛隊との衝突は巧妙に避けています。
私は、中国の軍事能力は過大に見積もられていると思っています。
 
かつての冷戦時代、仕事で旧ソ連との最前線の情報に接する機会がありましたが、巷の話とは大きく異なっていました。
当時も今も、米軍の軍事能力は、兵器、兵員、統率、情報のどの分野でも突出しています。
そして日本は、2つの点を除いて一流の能力を備えています。
その弱点は「統率の弱さ」と「兵員数の不足」です。
憲法9条の縛りがきつく、有効な統率の仕組みや戦略が組めないことが最大の弱点になっています。
世界史上、「防衛しか出来ない」、いやその防衛すら「法違反」だと言われる国は、現代の日本以外見当たりません。
仕方なく、米軍の統率下での軍隊となっているのです。
この自衛隊を「軍隊」と呼ぶことすら非難されてしまう国です。
この話、次回に続けます。