中国の思考法を学び、対処する(5)

2020.11.30


日本人の多くは、他国との経済・文化交流は、政治と切り離してできると思っています。
しかし、中国のような独裁国家相手には、政治と分離した交流は不可能です。
中国は、親中派だったオーストラリアの前大統領時代、経済を武器に深く入り込んでいました。
こうした「目に見えない侵略」に気づいたオーストラリアの現政権は、見えない侵略に対する防衛のための立法措置に取り組んでいます。
中国に脅迫されながらも最近のオーストラリアが屈しないのは、こうした背景があるからです。
民主主義国家にとって大事なことは、安全保障があってはじめて民主主義、自由主義が保障されるという、あたりまえの事実を認識することです。
 
中国の侵略は、孫子の兵法に基づいて行われています。
これを習近平主席は「魔法の武器」と呼び、兵法の駆使を各機関に指示しています。
その中核にいるのが、共産党中央委員会直属の機関「統一戦線工作部(略称、統戦部)」です。
この機関は、海外工作費に年間6億ドル(約6300億円)を使っているということです。
3兆円ともいわれる米国CIAの予算に比べれば少ないといえますが、外国への工作費用だけという点に要注意です。
シャープ侵略といわれる全体の予算額は、闇の中です。
 
習近平主席が唱える「中華民族の偉大な復興」の戦略は、次の二段階(平和・軍事)に集約されます。
(1)「平和的」に中国経済圏を膨張させる「一帯一路共栄圏構想」の実現
(2)組織改革や軍備拡大により統合作戦能力を高めた人民解放軍によるアジア・西太平洋地域への段階的「軍事進出」
 
しかし、第一段階の一帯一路は、その展開先で激しい反感を引き起こし、現地住民の心を勝ち取ることに成功しているとは言い難い状況にあります。
2018年9月、ナウル共和国で開催されたPIF(南太平洋地域・太平洋諸島フォーラム)の首脳会議で象徴的な出来事が起こりました。
中国外交部特使団の杜起文団長が、格上の各国の大統領や首相たちを差し置いて先に演説しようとして、議長国ナウルのバロン・ワカ大統領に制止されました。
それに対し、杜団長は、謝るどころか、逆ギレして退場してしまったのです。
中国の外交官が品性に欠け、傲慢であることが世界に示された一件でした。
議長のワカ大統領は、「杜氏は非常に無礼で大騒ぎを引き起こし、一当局者という立場でありながら、かなりの時間にわたって首脳会議を中断させた。おそらく大国から来たといって、われわれをいじめたかったのだろう」と皮肉を込めて指摘しました。
 
このように、度量に欠ける中国の一帯一路は、中世時代の中国が周辺国に強いた朝貢冊封関係に他ならないことが暴露されてきているのです。
最初は、平和的で相互利益をもたらすと喧伝されていた一帯一路共栄圏ですが、いまや「参加国の資源が狙い」「土地買収で地元を浸食」「現地人を人間扱いしない」「カネと大量移民による乗っ取り」「縁故主義で腐敗している政府の買収」「暴利をむさぼる外交」など、当事国の国民の評判はガタガタです。
一帯一路で甘い汁が吸える現地の特権階級を除き、現地住民の人心は中国から離れています。
習近平主席の「中華民族の偉大な復興」は、第1段階の平和的進出において、すでに破綻しているのです。
 
この状態に業を煮やした習近平主席は、「国内問題だ」として、人民解放軍に台湾への軍事侵攻を指示したという情報も入ってきています。
おそらく、台湾侵攻の緒戦において人民解放軍は大勝利を収めるでしょう。
しかし、台湾軍は徹底抗戦を続けるでしょうし、台湾人民の人心は決して中国になびかないでしょう。
そうしている間に、米国や周辺国(豪州、インドなど)が結束し、軍事支援に踏み切る可能性が高くなります。
こうした事態になった時、日本も支援の輪の中に入る覚悟が必要です。
その結果、「中華民族の偉大な復興」そのものは崩壊となり、習近平主席の失脚で幕を閉じます。
 
しかし、こうしたことが起きても、朝鮮半島の二カ国は中国に従うでしょう。