小さな会社の大きな手(4):経営幹部のスカウト

2015.07.04

前号の「軍争篇」の話、少々消化不良だったと思います。
どこかで、改めて解説を追加したいと思います。
今号は、視点を変えて、経営幹部の問題です。
 
6月16日の日経新聞に、「CEO、経営力より創造力」と題する記事が掲載されました。
その記事は、米国の有力ベンチャーキャピタルの創業者であるベン・ホロウィッツ氏へのインビューで構成されていました。
彼は、シリコンバレー等で次々と誕生している米国のベンチャー企業について、
「今はアマゾン・ドット・コムのクラウドサービス『AWS』と数人のエンジニアとノートPCがあれば起業できる。CEOに求められるのは経営の経験や巧みさよりイノベーションを生み出す創造力だ」と指摘しています。
 
彼の投資先には、ツイッターやスカイプなど、一般の人々でも知っている先進企業名がずらっと並んでいます。
そんなホロウィッツ氏は、企業経営について、「専門の経営者を求めない」ことを主張しています。
最初は「?」と思いましたが、読み進むうちに頷(うなず)けてきました。
 
ベンチャー企業の創業者は、最初は何もかも自分でやっていたはずです。
しかし、成功して会社の規模が大きくなると、たいてい、経営マネジメントに課題を抱え込みます。
そして、経営マネジメントの経験がある人をスカウトして招き入れます。
大成功したベンチャー企業であれば、IBMなどの大きな会社の経営幹部を引き抜いてきます。
日本でも、ソフトバンクなどが、そうしたヘッドハンター的人事を繰り返しています。
 
しかし、ホロウィッツ氏は、それが良くないと言うのです。
そのような人物をスカウトしても、その人間では「イノベーションを起こせない」ため、結局は企業の停滞を招くというのです。
 
そこで、米国の有名なベンチャー企業のことを考えてみました。
そして、ホロウィッツ氏の言うとおりであることが分かりました。
 
マイクロソフト、アップル、フェースブックなど、大成功を収めたベンチャー企業は、組織が大きくなると、例外なしにIBMなどの大手の経営幹部を引き抜いて、創業者の片腕的存在にしています。
さすがに、名のある大手企業で、比較的若いうちから幹部として認められてきた人物は優れた人材です。
企業の利益体質は向上し、営業成績も上がるケースが多く見られます。
しかし、全くと言ってよいほど「イノベーションを起こせていない」のです。
そして、現状維持としか思えない経営になってしまっています。
そうです。「停滞」なのです。
 
ビル・ゲイツが引退した後のマイクロソフト、ジョッブス亡き後のアップルなどは、典型的な例です。
勿論、両社とも今でも大企業で、経営は盤石の強さを保っていると言えるでしょう。
でも、創業期の輝きは感じられず、アッと驚くような新製品の発表もなくなりました。
大企業で経営ノウハウを身に付けた現在の経営トップは、マネジメントに長けていても、イノベーションは起こせないのです。
 
その中にあって、アマゾン・ドット・コムは未だにイノベーションを起こし続ける企業です。
同社を率いるジェフ・ベゾス氏がイノベーションを起こせる経営者だからです。
 
そのアマゾンの次の一手には驚かされますが、業種は違えども、我々中小企業の参考になる考え方です。
次号で、その一手を解説し、我々中小企業でも起こせるイノベーションを考えたいと思います。