企業経営者は質素であるべき?(5)

2013.06.30

前号で、「共産主義とは、経済技術の一種だ」と言い、「資本主義」との違いを解説しました。

ところで、中小企業経営者に結構多いのが、「経営は心だ」という考え方です。
企業を取り巻く環境が人間で成り立っている以上それを否定はしませんが、あえて言わせてもらえば、「経営は心だ」と「経営は人間心理のコントロール技術だ」ということは同義です。
ところが、こんなことを言おうものなら、多くの方から「何を言うか!」とお叱りや非難の嵐です。
だから、ここでしか言いません。
しかし、「それでも地球は回る」とガリレオのようにつぶやきたいです。

前号の続きになりますが、日本共産党は微妙な言い回しを使います。
「大企業の経営者は悪だが、中小企業、それも零細企業の経営者は善だ」とする言い方です。

共産党員の友人もいますので、彼らと話す機会もあります。
私は、彼らに言います。
「それは違うよ。企業に利益をもたらす経営者が善で、損失をもたらす経営者が悪なんだ。企業の大小なんか関係ないよ」
そうしたら、彼らの一人が言いました。
「日産のカルロスゴーン社長は、一人で10億円の報酬を得ている。彼は悪ではないのか」
私は、
「それを判断するのは、日産の株主総会だよ。君らでも私でもない。10億円の報酬を得て、日産に利益をもたらしているのならゴーン社長は善、そうではなく、その報酬が日産の利益を減じているのならば悪だ。その判断は株主に委ねられている。それが資本主義だ」と言いました。
彼らは、「だから、資本主義は悪だ」というので、
私が、「それでは、君らが善だという中小零細企業の社長だって悪になるよ。勿論、私もだよ」と言うと、黙ってしまいました。
「資本主義国の中で共産主義を掲げるのは難しいことだな」と思った次第です。

そろそろ結論めいたことを言いましょう。
「企業経営者は質素であるべきか?」という問いに対する答えは、
「企業利益を損なわない範囲であれば、経営者は大いに消費すべき。質素は経済の縮小、ひいては自企業の業績を悪化させるから、すべきではない」となります。

反面、利益が出ていない企業の経営者に対しては、
「利益を回復させること以外にカネを使うな。回復させる原動力になるならカネは使え」と言います。