原油価格の下落をチャンスとせよ (2)

2015.02.28

ガソリン価格は一時の底値から10%ほど上昇してきていますが、原油価格自体は相変わらず低価格で推移しています。
前号では政府の日本経済への対処法を述べましたが、今号は約束どおり、中小企業の対応策を述べます。

原油に直接関わる仕事をしている企業は少数ですが、影響は多方面に及びます。
マスコミが言うように、「原油価格の下落にはプラス効果とマイナス効果がある・・」は当然です。
ならば、プラス面に沿った戦略と、マイナス面に沿った戦略を組み合わせればよいのです。
まさに「ヨット型経営」の効果を最大限に発揮できるチャンスといえます。
プラス面の風を受ける帆を目一杯に張る一方で、マイナス面の風を受ける帆は微妙な角度を付けて風を流し、ともに推進力にするのです。

例えば、「今まで控えていた投資を行おう」は、プラス面の帆を目一杯張る戦略です。
資金調達等の投資環境は、確実に良くなっています。
新たな商品開発、事業拡大、インフラ整備、コンピュータシステムの一新などへの投資を行う環境は整っています。
勇気を出して、一歩踏み出す時期と言えます。

一方、マイナス面の影響にはどんなものがあるでしょうか。
直接的影響が大きいのはエネルギー面です。
再生可能エネルギーは、既存のエネルギー価格が上昇してこそ採算に寄与しますが、原油価格の下落は明らかに逆風です。
大義名分にこだわらなければ、取組みを中止すべきです。

原油価格の下落は、物流単価を下げる効果があります。
ゆえに、在庫を減らし、物流を増やすべきです。
物流の回数が増えて、非効率になったとしても、在庫を増やすよりはプラスになります。

まだまだ考えられます。
これらの策の組み合わせで、最大の効果を上げるシミュレーションを行うべきです。

しかし、以下の課題を考えなくてはなりません。
原油の消費量を増やすことは、地球温暖化にはマイナスです。
ですから、「原油価格の下落をチャンスとせよ」という本コーナーの主張は、環境派の人々からは非難を浴びることになります。
環境への配慮を優先するか、企業収益を優先するかは、個々の企業の経営判断です。
大企業は、「環境配慮を優先」と言うでしょう。
企業収益以上に企業イメージが大切だからです。
しかし、中小零細企業が「環境配慮を優先」と言っても、だれも関心を払わず、プラス効果はほとんど無いでしょう。
しかも、大企業のような財務基盤を持たない中小零細企業は、収益悪化で簡単に倒産してしまいます。
このような中で、どのような経営判断をすべきか。
悩ましい問題ですが、答は一つしかありません。