建設市場の不調の増加

2014.10.31

公共工事の不調だけでなく、民間工事でも不調が増えている。
これについて、日建連の中村満義会長は、巷で言われている「人手不足が原因」との見方を否定した。
中村会長の発言をそのまま載せる。
「(受注金額で)必要な賃金支払いが確保できるかの判断次第。決して人手不足によるものではない」

中村会長には甚だ失礼ながら、このご発言の意味を理解することができなかった。
何度も読み返して、ようやく以下のように解釈した。
「受注金額が低くて、そこから職人に支払える賃金を計算すると、やってくれる下請けがいない。人はいるんだが・・」
もっと端的に言うと、「人はいるが、請負金額が安すぎて受注が出来ない」と仰りたいようである。

この話を知り合いの製造業の経営者に話したら、苦笑してこう言われた。
「建設業はお気楽な稼業だね。そこを何とかして職人に支払える賃金の原資を創りだすのが経営ではないのか」

さらに、こう付け加えた。
「お客様にも事情がある。こちらの望む金額で仕事をもらえるのは、そこしか出来ない技術を持っている会社だけだよ。うちのような会社は、合理化や生産性の向上を必死で継続して、なんとかお客様の事情に合わせているんだよ」

本メルマガで何度も述べているが、私は「適正」なる言葉が嫌いである。
何が「適正」であるかは、それぞれの立場やその時の事情で変わる。
誰もが分かる具体的な策のない言葉は「お題目」に過ぎない。
しかし、建設産業においては、経営者や業界紙、はたまた国交省までが「適正」の言葉を乱発する。
まさに「お気楽」な産業なのである。

民間発注者は事業収益を超える発注はできない。
一方、受注する建設会社にも事情がある。
「出来ないものは出来ない」のである。
結果として「不調」は当然に起こることである。

大事なことは「不調」を防ぐことではない。
「不調」後にどうやって「同調」に変えていくかの方法であり、知恵の出し合いなのである。
業界は、「思考を反転」させて考えてはいかがとアドバイスしたい。