世界経済はどうなるの?(5):英国のEU離脱

2016.07.19

英国のEU離脱で株式や為替相場は揺れていますが、実体経済への影響はまだ何も出ていません。
今のところは、投資家心理が揺れて、マスコミが騒いでいるだけです。
 
実体経済への影響はこれから少しずつ出てくると思いますが、全てが悪材料というわけではありません。
日本としては冷静に情勢を見て、先走りしないことが肝要です。
ここは「後出しジャンケン」でいくことです。
 
英国にとっては、国際金融センターとしてのロンドンの価値が下落することが最大の懸念材料です。
ロンドン市が単独でもEUに残留すると息巻いているのは、この懸念からです。
すでに、外国銀行は、EU内に拠点を移すか、新たな拠点を作る動きを始めています。
この座をフランスのパリが狙っています。
オランド大統領の英国非難のトーンが上がっているのを見れば、明白です。
当初、穏健な発言が多かったドイツのメルケル首相の言動が強硬になってきているのも、同じ果実を狙っているからです。
 
EUとの交渉では、離脱派の甘い目論見は全く通用しないことは確実です。
これまで、英国はEU内でかなり特権的な権利を得てきました。
例えば、通貨をユーロに移行せず、ポンドのままとかの権利です。
「それなのに、何をわがままな・・」という思いがEU側に強いのは当然です。
EUとしては連鎖を防ぐ意味から、強硬姿勢を崩さないでしょう。
 
現在、EUは53の国・地域との自由貿易協定(FTA)を結んでいますが、英国は、この果実を全て喪失するわけです。
これらの協定を一から独自に結び直すには、気の遠くなる時間と労力が掛かります。
しかも、当然、足元を見られますから、今より悪い条件を飲まざるを得なくなります。
「お先真っ暗」と言ってもよいでしょう。
 
世界経済への影響は、これからの英国とEUとの交渉結果次第となりますが、その道筋が見えたあたりから、結果はどうあれ、世界経済は落ち着きを取り戻すでしょう。
いったん株式などの債券を現金化したファンドも、現金を持っているだけでは損失が出るだけです。
いずれ投資に回さなければなりませんので、結局、元に戻るのも時間の問題と思われます。
為替相場におけるユーロは、しばらくは低迷するでしょうが、もともと世界最大の経常黒字と実質金利の高さという強みを持つ通貨です。
一方でポンドの下落は続き、長い目で見れば、相対的にユーロは今以上に強くなる可能性があります。
 
直後に行われたスペインの総選挙でEU批判派が伸び悩んだように、離脱のドミノ現象は起きないと予測します。
離脱から起きる混乱や経済的損失を考えて、各国国民が冷静さを取り戻すと思うからです。
性質は違いますが、民主党政権のお粗末さに懲りた日本の有権者のその後の選択を見れば、EUでも同じようなことが起きるように思います。