小さな会社の大きな手(16):企業買収という投資

2016.08.18

ソフトバンクの孫社長が3.3兆円という大型買収を発表しました。
考えた末の戦略投資かもしれませんが、外部からは投資ではなく“博打”にしか見えません。
3.3兆円という買収額は、買収するARM社の株価(7月19日のロンドン証券市場の同社株終値)に対し「43%のプレミアム付き」ということです。
英国のEU離脱でポンドが下落したとはいえ、時価総額に1兆円を足した金額になります。
 
それで、ソフトバンクのキャッシュフローを調べてみました。
2015年度は、営業キャッシュフローは9401億円で投資キャッシュフローは1兆6516億円でした。
つまり、総合ではマイナス7115億円という巨額な赤字です。
2011年度まではプラスでしたが、2012年度にマイナス611億円の赤字になり、2013年度には、マイナス1兆665億円と赤字が膨れ上がりました。
そうです。この年に米国の携帯電話事業者のスプリント社の買収に2兆円を投じたからです。
その後、買収したスプリント社はずっと赤字続きでソフトバンクの収益に全く貢献できていません。
この先の収益見通しも暗く、この買収は「失敗」と言わざるを得ないと思います。
この失敗の穴埋めを狙ってARM社を買収したのではないかとする声もあります。
となると、本当の“賭け”です。
 
規模が何桁も違って比較にもなりませんが、弊社も、これまで5~6回、他社の株を取得して傘下に置いたことがあります。
しかし、恥ずかしい話ですが、全部失敗しました。
失敗の理由は様々ですが、企業買収は自分には全く向かない投資分野だということは分かりました。
 
多くの経営者からの尊敬を集める、日本電産創業者の永守重信社長は、「これまで50社ぐらい買収したが1社も失敗していない」と豪語されています。
私などは、「すごいな!」というしかない経営能力です。
その永守社長は、ソフトバンクの社外取締役もされていますが、今回の3.3兆円の買収についての記者からの質問に対し、「自分だったら、3300億円でも買わないな」とケムに巻いておられました。
冗談半分なご発言だと思いますが、永守社長の買収哲学の一端を垣間見た思いです。
経営強化のための「投資買収」は積極的に行うが「博打投資」はしないということだと、私は受け止めました。
投資買収で1勝も出来なかった負け組経営者としては、妙に納得出来た言葉です。
 
でも、その半面、「どこかで1勝ぐらいはしたいな」という思いはあります。
今までの負けの借りを返すというのではなく、「成功する企業買収」というものがどのようなことなのかを経験したいのです。
 
弊社は「企業コンサル」を事業の一つとして行っていますが、「実践型コンサル」を売りにしているため、建設企業にしか行っていません。
つまり、「経験していないことはコンサルできない」としているのです。
ということは、コンサル先の企業から「企業買収したいのだが・・」と相談されても、応えることが出来ないということになります。
失敗を経験として「止めたら・・」とは言えますが、「こうすれば成功する」が言えないのです。
どこかで、再度挑戦して「今度は成功させるぞ」と密かに目論んでいます。
社内には秘密の話ですが・・