日本経済は新次元の入り口にある(その2)

2017.08.18

内閣支持率が落ちたことで一部に「アベノミクスの破綻」という声が聞かれますが、政治的な失策イコール「経済策の失敗」とするのはおかしいと思うのです。
とはいえ、アベノミクスの足元がふらついていることも事実です。
 
前号で日本の経済見通しを解説し、プラス要素は「外国からの観光客の増加とITの進展」、マイナス要素は、「消費税の増税と中国経済の破綻」と述べました。
しかし、それらが「決定的な要素」ではなく、日本が「新次元の入り口」をくぐるためには、別の要素があると述べました。
今号では、その要素について論じていきます。
 
来年の総裁選を意識してか、自民党の石破氏がアベノミクス批判を加速させています。
石破氏の主張を一言で言うと、「アベノミクスの金融緩和を続ければ、いつかハイパーインフレとなる」というものです。
しかし、この批判は当たっていません。
世界では1200兆ドルという空前のマネーが投機先を探して動いています。
想像することが困難な額ですが、しかし、先進国ではどこもハイパーインフレは起きていません。
日本でも日銀黒田総裁の「異次元の金融緩和」が5年目に入っていますが、ハイパーインフレはおろか、2%のインフレ目標すら達成できていません。
ゆえに、石破氏の批判は、この点では的が外れています。
 
石破氏は、さらに「プライマリーバランスの2020年度の黒字化目標」にもこだわっています。
これが達成できないと国債の暴落を招くとして、消費税増税の必要性を訴えています。
たしかに、プライマリーバランスの黒字化は目標として大事ですが、2020年度にこだわる必要はなく、まずは、国債発行が天井知らずに上がることを防止する策を講じることです。
 
消費税の10%増税は2019年10月に延期されましたが、それまで約2年です。
その間に衆議院の解散・総選挙があるのは確実です。
景気の動向や政治情勢によっては、与党は増税の再々延期を掲げて戦う可能性があります。
いずれにしても、増税で景気が上がることはないため、石破氏の主張は無理があります。
 
断っておきますが、私は石破氏の批判をしたいわけではありません。
氏の主張は、いずれも「古い経済理論」から抜け出せていないため「新次元の扉」を開けられないということです。
この問題は、もう少し続けます。