企業における社長の力(6)

2019.01.16

今回は、自分のサラリーマン時代の話をします。
「競争前の競争に勝とう」は、異業種からの中途入社というハンデを背負った自分が、社内の激烈な競争に勝てないと思ったことが原点です。
 
まずは「とにかく資格取得を」と考え、建築の資格を取得しましたが、それだけでは、建築士があまたいる会社では、永久に下っ端の現場監督止まりです。
その頃、学び始めたのが孫子の兵法で、有名な「百戦して百勝するは善の善ならず、戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり」という言葉の意味を考えました。
そして、自分流にアレンジした戦略が「競争前の競争に勝つ」だったのです。
 
具体的には、建築の資格だけでなく設備関係の資格も取得し、「立体的な技術力」をアピールする。
これだけで社内の競争相手は相当に減りました。
さらに、興味があった原子物理学の知識を学び、原子力の現場を志願し、こうした施設の経験を積むことを組み合わせてきました。
かつ、現場での経験を基にしたコストダウン手法を積み重ねていき、誰もがいやがる「赤字必死の現場」に手を上げたところで、念願の現場所長になることができました。
この時点で、社内に競争相手はいなくなったのです。
 
しかし、コストダウンだけで勝負していくのは限度がありました。
お客様の事情や社内ルールの壁など、越えることのできない障壁が立ちはだかりました。
それでも、自ら営業の場面にも出て行きお客様を説得し、社内では首を賭けて岩盤のようなルールに挑戦していきました。
そうした奮闘を重ねていくうちに「お客様のキーマン」を味方に付けることが「競争前の競争に勝つ」ことの肝(きも)であることが実感として分かってきました。
考えてみれば当然のことなのですが、仕事を進めていくと、どうしても「顧客vs請負」の関係になっていってしまうのです。
そこで、目の前の仕事とは別に、お客様が困っていることを聞き、その解決に手を貸すことにしました。
この時、異業種にいる知人、官僚や大学にいる友人たちとの付き合いが大いに役立ちました。
彼らと技術力の高い専門会社の力を借りることで、いくつもの難局を突破することができました。
 
こうした経験から、創業した後も、「競争前の競争に勝とう」を掲げて不毛な争いを避ける経営をしてきました。
しかし、創業しての経営は、そう甘くはありませんでした。
大きな落とし穴に何度もはまり、苦闘する羽目に陥りました。
次回は、この話をネタに、社長の力を論じてみます。