中国の景気減速が止まらない(3)

2019.03.04

昨年の10月のことだが、中国のポータルサイト「網易」に、一瞬だけ興味深い記事が載った。
「2018年上半期で、504万社が倒産し、失業者数が200万人増えた」という内容であった。
だが、数時間後にはこの記事は削除されていた。当局の指示によるものとウワサされている。
 
それでも情報を完全にシャットすることは難しいらしく、米国との争いの渦中にある「華為(ファーウェイ)」やアリババが大幅な人員削減を計画という報道が次から次へと出てくる。
中国政府は、それでも「GDPは堅調に推移」との姿勢を崩していないが、求人数などは20%以上の減を示している。特にIT関連の採用数は50%以上の減という状況らしい。
 
習近平主席は、1期目の経済成長で自信を深めたが、投資と借金(共産国では、どっちも同じとなる)による成長モデルであることから、「新常態」なる新語でビジネスモデルの転換を図ってきた。
その目玉が「海外市場を我が手に」と目論んだ一帯一路なのだが、この成功を過信した地方政府が、さらなる投資アクセルを踏み込んだ。
 
しかし、一帯一路が伸び悩む中、勇み足となった地方政府のインフラ投資は財務体質の悪化を招き、銀行は、企業や地方政府にカネを貸せる状況ではなくなった。
借金返済に窮した企業や個人事業主は、ノンバンク(というより闇金に近い)のシャドーバンクから金を借りる。
そうした債権は、すぐに別のシャドーバンクに転売され、高利回りの「理財商品」に化ける。
損失を抱えた一般投資家は、そうした高利回りをうたう商品に手を出す。
 
共産主義経済は「いざとなったら、お上がなんとかしれくれる」という「暗黙保証経済」である。
一党独裁の「封建政権」がそのバックにある。
幕府が支配した江戸時代の経済を考えれば理解できるであろう、
多くの大名や武士たちは、現代中国と同様の「暗黙保証経済」を信仰したのである。
 
もちろん、中国政府の経済官僚はエリート揃いである。
政府の金融監督の外で膨張したシャドーバンクの金融のバルブを締め、「元本保証慣行」の禁止や簿外債務の財務諸表への取り込みなどの荒療治を施し出した。
一党独裁国家ならではの強引な政策だが、近年、分厚く成長した「ニューエコノミー」と言われる中間層(急増している日本への観光客はこの層である)の下支えもあって、こうした「金融のデレバレッジ」はうまくいくかに見えた。
 
しかし、そこに大誤算が生じた。
トランプ大統領から仕掛けられた米中貿易戦争である。
前述の金融引き締めの荒療治と重なったことで、まったく先が読めない展開となった。
もちろん、トランプ政権は、そこを見越して貿易戦争を仕掛けたのである。
 
このまま行けば、中国経済は日本の二の舞どころではない状態へと沈むであろう。
習近平主席は、米国の軍門に降るしかない状況に追い込まれているのである。
次の手はあるのか?
 
失敗に終わった米朝会談だが、金正恩が習近平主席から言われた「先に非核化を受け入れろ」の忠告を無視した結果という声がある。
だとすると、次の習・金会談が重要となる。
習近平主席は金正恩に対し「オレの忠告を聞かないからだ」と、強く叱責するのではないか。
それに恐れをなした金正恩が「すべての非核化を受け入れる」とでも言えば、中国の存在感は一気に上がり、米中貿易戦争の打開が見えてくる可能性がある。
さあ、どうなるやら。