今後の建設需要(2):建設産業の改革

2019.10.18

前月号の予告で「地方行政の弱さの解決策を論じる」としましたが、その前に建設産業の弱さを論じることにしました。
 
働き方改革や情報化施工の波が産業の最後尾を走っている建設産業にも及び始めました。
そうした記事が業界紙に連日掲載されていますが、実態はどうなのでしょうか。
記事になるのは大手や中堅企業の取り組みばかりで、地方、それも中小企業の記事は皆無と言ってもよい状況です。
現場の土日閉所にしても、業界紙を読む分には「進んでいる」という印象を受けますが、付き合いのある会社に聞くと、歯切れの悪い返答ばかりが返ってきます。
私自身の現場経験は、もう古い時代の話となり参考にならないかと思いますが、仕事柄、今でも現場に接する機会は結構あります。
それを見る限り、現場の状況がそれほど激変したとは感じられません。
大手や中堅のモデル現場では対外的な広報を意識して土日閉所を掲げていますが、追い込み時期にはそれも崩れているという本音を聞くこともあります。
実際、自分たちが発注者の立場で施工した案件でも、引き渡し1ヶ月前からは土日閉所どころか、土日全部が作業日となってしまいました。
発注者としても、完成の遅れを容認するわけにはいかず、「休日なし」を黙認せざるを得ませんでした。
 
人間作業の比率が圧倒的に高く、それなのに不確定要素を潰しきれない業界慣習が最大の障害となっています。
全てが一過性の生産となってしまう建設産業の宿命ともいえますが、ここを是正していかない限り、土日閉所は絵に描いた餅に過ぎないとなってしまうでしょう。
 
ITによる情報化施工は、人間作業の比率を下げる切り札として期待されていますが、その道程は険しく、手すら付けられない中小企業が大半ではないかと思われます。
重層下請け構造が最大のネックと言えますが、ここに手を付けるということは業界の再編・縮小を意味することから、業界も行政も及び腰です。
 
私は、働き方改革や情報化施工を批判したいわけではなく、推進すべきという考えです。
しかし、表層で語られている土日休みとかBIMとかの「美しい話」が、根の深いところにある根本的な「暗い話」を置き去りにしていることを危惧しているのです。
華々しい話題をぶち上げて世論を喚起することも必要ですが、地道に根源的な問題を取り上げ、是正していく活動はもっと大事です。
そうした活動の一端が「地方行政の弱さの解決」に繋がっていきます。
改めて、次号で、そのことを論じたいと思います。