商品開発のおもしろさ(1)

2020.07.29

私は、小さい頃から道具や模型を作ることが大好きでした。
陸軍の技術将校だった父の血筋かもしれません。
小学生の頃、自分の手で作ったロケットを河原で打ち上げたことがあります。
白煙を引きながら天高く上がっていった手製のロケットの姿は、今でも目に焼き付いています。
 
貧しかった家計では、玩具は自分で作るしかありませんでした。
でも当時は規制も緩く、危険な材料も手に入れることができました。
当時、子どもたちの間で「2B弾」と呼ばれていた花火(というより爆竹?)が流行っていました。
これを知っている方は団塊の世代以上の方でしょうね。
2B弾はマッチを擦るように花火の先を擦って点火して投げ付けると、派手な音を立てて爆発します。
さすがに学校からは「危険だ」と禁止されていましたが、悪ガキ共の必需品でした。
野球のボールを返してくれない家の庭に投げ込むなど、ロクな使い方ではありませんでしたが・・
 
この2B弾には、本物の火薬である「黒色火薬」が使われていました。
(当然、今では販売禁止になっています)
もちろん、その量はごく僅かでしたが、集めれば立派にロケットの燃料になりました。
私は、何本もの2B弾を慎重にバラして黒色火薬を取り出し、燃料に加工していきました。
こうしたことをしていた子は他にもいましたが、燃料を作る過程で爆発し、指を飛ばしてしまう事故も起きていました。
当然、親にも内緒で、一人でこっそり作っていました。
 
ロケットの本体は強度とバランスが大事です。
それまで、アルコールなどを使って、小さなロケットや飛行機を飛ばしたりしていましたので、そうした経験がものを言いました。
さらに、商売をしていた実家には、いろいろな道具がありました。
それらを使ってロケットの筐体を作り上げました。
 
仲の良かった友人2人を誘って、大きな川の河原で打ち上げました。
どのくらいまで上がったかは定かではありませんが、目視では追えないくらい高く上がっていきました。
現代ではとんでもないことですが、貧しい時代の輝ける思い出です。
 
このロケットを契機に、自分では作れっこない高性能兵器に強い興味が湧き、本を読み漁りました。
その過程で、戦争のことにも強い関心を持ち、古今東西の戦史本も片っ端から読みました。
勿論、戦争は良くないことですが、そうした観念論ではなく、純粋に科学的、技術的興味から読んでいたのです。
数年前、ゼロ戦の設計者、堀越二郎を主人公にしたアニメを、あの宮崎駿が作成し賛否をまきおこしました。
きっと、宮崎駿の心にあったのは、少年時代の私と同じ思いだったと思うのです。
平和を願いながら、人の命を奪う目的で作られた戦闘機や軍艦を美しいと思う、相矛盾する気持ちが行き交ったはずだと思います。
 
兵器は過酷な戦場から、最高性能が要求される商品です。
ゆえに見栄えを意識していないはずなのに、究極の機能を追求した完成形は「美しい」のです。
 
善悪を抜きにして考えると、我々の開発する商品とまったく同じ要素なのだと思うのです。
市場が違うだけなのです。
次回から、商品開発についての事例を紹介しながら、市場から必要とされる要素を考えていきたいと思います。