これからの近未来経済(4):現代の錬金術SPACの問題点

2021.03.16


SBG(ソフトバンクグループ)のようなVC(ベンチャーキャピタル)型の投資運用会社は、未公開企業に投資して上場させることで巨額の利益を狙っています。
しかし、当然ハイリスクなビジネスであり、実際に巨額な損失を被ることもあります。
そうした投資会社にとり、SPAC(スパック)はリスク軽減の手として願ったり叶ったりの仕組みです。
早速、SBGが飛びついたことからもそれが分かると思います。
日経新聞は、3月20日の記事に「『空箱上場』米で400社」と掲載しました。
この『空箱上場』とはSPACのことです。
 
このSPACに対し、詐欺まがいの“うさんくささ”を感じる方は多いと思います。
乱暴に言うと、投資家に対し「相手先は未定ですが、有望な会社を買収します。私を信用して無条件でお金を預けてください」というものですから当然です。
投資家は、投資運用会社に「白紙の小切手」を渡すようなものです。
実際、SPAC(スパック)は、「Black check company(白紙小切手会社)」とも呼ばれます。
読者のみなさま、あなただったらお金を預けますか?
 
そうした不透明さが分かっていても、米国では急激な株高を背景にSPAC投資は活況を呈しています。
いまの株高が弾ける前に、従来型では上場が難しい未公開企業を上場させようと、大手のVCや私募ファンドがやっきになっているのです。
しかし、対象となる企業は、実績が乏しく、まともな事業計画書もなく赤字続きの会社、といった透明性に欠ける会社が大半です。
投資家は、投資運用会社を信用するしかないのが実情です。
 
一応、投資家保護のため、エスクロー(信託口座)や償還(払い戻し)の権利が設けられていますので、投資家は株を返還すれば資金の払い戻しを受けることはできます。
また、買収や上場が成立しなかった場合も資金は払い戻されることになっています。
しかし、いかなる場合も、投資運用会社は得た手数料を返還する義務はありません。
その分は、残った投資家が持つ株価値の下落となる仕組みです。
 
だが、それでは大口の機関投資家が黙っていないだろうと思うでしょうね。
そこには、以下のような仕組み(抜け道?)が用意されています。
大口の機関投資家には一般投資家より有利な条件で追加ワラントが与えられるのです。
機関投資家は、上場成功のような有利な状況になったとき、そのワラントを行使して割安で株を追加購入できるのです。
しかし、上場後にそうしたワラントが行使されると発行株数が増えて既存株主の株が値下がりします。
それを見越して、機関投資家は、追加購入と同時に全部の株を売って利益を確定します。
何も知らない一般投資家は、自分の株を売るどころか、値が上がったと錯覚し、値上がり後の株を追加購入します。
その結果は、当然、悲惨です。
 
実際、スタンフォード大学など複数の大学の調査では、一般投資家の資産価値は66.7%に目減りしていたという結果が出ています。
それに対し、手数料収入が入る投資運用会社は、決して損はしないという仕組みです。
 
SPACは、あまりもリスクが大きいとして、日本では解禁されていません。
しかし、米国の携帯投資アプリのロビンフッドなどにアクセスすれば、日本からも簡単に買えてしまいます。
ロビンフッドは「手数料ゼロ」をうたい、人気アプリになっていますが、どこかに落とし穴を設けて、一般投資家が落ちるのを待っている「蟻地獄ビジネス」だと思います。
こうしたアプリを利用する会社は、一株1ドル未満の「ボロ株」をSPACによって化粧させ、まんまと公開企業にしてしまうという怪しい会社が多いようです。
もちろん、実態がバレれば、一気に株価下落を招き、投資家は大損します。
実際に、そうした事例が増えていると聞きます。
IPO(新規上場)が過去最大を記録する今の米国市場には、こうしたリスクが潜んでいるのです。
日本は、SPACを認めてはいけないと思う次第です。