急激な円安が示していること(その2)

2022.06.16

日銀の黒田総裁が「利上げもあり得る」と発言したとの報道がありました。
真偽のほどは分かりませんが、日銀が、円安をこれ以上放置できないと考えている可能性はあります。
その影響からか、一時130円台に乗ったドル円相場が127円台になっています。
 
最近の円安で、円の購買力は50年前の水準にまで落ちています。
つい10年ほど前は「1ドル=80円」台でしたから円の価値は40%ほど低下したことになります。
海外旅行の費用が1.6倍になったと考えると理解しやすいかもしれません。
「そろそろ海外旅行に行こう」と思っていた方は、びびってしまいますね。
ネット通販の世界では、私もアマゾンでの買い物は控えています。
アマゾンはドル建て決済ですから、明細データを見て「高っ!」と引いてしまいました。
 
安倍元首相や黒田日銀総裁は、いわゆる「リフレ派」と呼ばれる積極財政派です。
「リフレ派」は、日本経済の低迷要因は「デフレ」にあると考えました。
それで、円を大量に刷ってインフレに誘導すればデフレから脱却でき、日本経済は回復すると考えたのです。
しかし、円を大量に刷れば、円の価値が下がり、ドル円相場が「円安ドル高」になるのは当然です。
ゆえに、「アベノミクス」以降、日本円は大幅な円安となりました。
つまり、「アベノミクスは、単なる円安政策だった」といえるかもしれません。
 
現在、その思惑どおりに、企業は値上げラッシュに雪崩を打ちはじめ、物価上昇は2%の目標を達成し、さらなる上昇局面に入っています。
これは、安倍元首相や黒田日銀総裁などの「リフレ派」の勝利といえるのでしょうか。
それとも、冒頭に挙げた黒田日銀総裁の「利上げもあり得る」の発言は、迷いが出てきているのでしょうか。
今後、日銀が採る政策に注目していますが、大きく分けて、次の2つの選択肢があります。
1つ目は、今の政策の継続です。
つまり、「指値オペ」を継続的に行うことで10年国債の利回りを抑えて、このまま円安進行を容認するという政策です。
たしかに、この円安で大企業は大幅な利益向上ですから、「このまま行こう」と考えることもありかもしれません。
2つ目は、金利を上げ10年国債の利回りの上昇を容認し、この円安傾向を抑えるという政策です。
ただ、それによりゼロ状態だった国債の利払いが増え、予算を圧迫するという負の側面が大きくなります。
 
ポイントは、円安による輸入物価上昇により景気が後退する「スタグフレーション」となるリスクを、日銀がどのように考えるかにあります。
こうした中、10兆ドル(1300兆円)あまりのマネーを運用する米国の資産運用会社であるブラックロック のラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)が注目すべき発言を行いました。
ブラックロックは、西側諸国の中央銀行の裏にいる存在で、世界経済に大きな影響力を持っています。
その話は次号で。