2023年6月15日号(国際、政治)

2023.06.20

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2023年6月15日号
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発行日:2023年6月16日(金)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2023年6月15日号の目次
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 ◇G7サミットの評価
★中国の狙い
★財務官僚に取り込まれる岸田首相
 
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
筆者の事情で配信が1日遅れましたこと、お詫びいたします。
 
広島G7サミットからまだ1ヶ月経っていないのに、もう昔のことのように思えてしまいます。
そのくらい世界の動きは速さを増しているわけです。
サミットを閉幕してしばらくの間は、評価する声、批判する声が聞かれましたが、6月に入ってからはパッタリ聞こえてこなくなりました。
そこで、今号は、この話題の蒸し返しから始めます。
 
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┃◇G7サミットの評価                   ┃
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ウクライナ侵攻の最中ということもあり、今回のサミットは、例年の「イベント」的な雰囲気とは違い、改めてG7の意義や目的が問われた会議となりました。
最大の議題は、如何にしてウクライナ侵攻を終結させるべくG7各国が結束するかでした。
サミット直前にフランスのマクロン大統領が中国を訪問、習近平主席におべっか(?)を使ったことで懸念が生じましたが、さすがにG7ではマクロン大統領が和を乱すことはなかったようです。
(その後で、また問題発言をしましたが・・)
 
しかし予想されたことですが、G7では「ウクライナへの軍事的支援をさらに強化する」という以外の策はなく、侵攻終結への道のりは描けませんでした。
手詰まり感が漂う結果になったことは、止むを得なかったというしかありません。
ただ、インドなど主要な国際会議の議長国を参加させたことは成果ですし、なによりウクライナのゼレンスキー大統領の直接参加は、世界を驚かせました。
また、各国首脳が揃って原爆資料館を訪れたこと、その後、ゼレンスキー大統領も訪れ、涙を必死に堪えていたとの報道もありました。
カナダのトルドー首相は、翌日も単独で訪れたとのことで、首脳たちにも強い衝撃を与えたようです。
 
ただ、こうした成果をどう次に繋げていけるかを考えると、現実の厳しさがよりあらわになります。
ロシアや中国という核兵器を保有する独裁大国が存在する以上、世界平和は来ないと腹をくくるしかないと思うのです。
 
西側が直接介入をためらっているのは、ロシアが核兵器を使うと脅しているからです。
皮肉なことですが、核兵器の存在が戦争拡大の抑止力になっている現状を思い知らされます。
G7サミットで核兵器廃絶への道が示されなかったことから、被爆者などからは「サミットは失敗だった」との批判が寄せられています。
しかし、酷な言い方ですが、そのような非難は逆効果ではないでしょうか。
核保有の現状を無視し、理想論だけ振りかざしサミットを批判しても共感は得られないと思うのです。
核戦争回避の思いは、世界すべての国民に共通の思いだと考えます。
被爆者ゆえの歯がゆい思いは理解できますが、人類の未来に関わる大問題です。
そして、野望を抱く核大国が存在している以上、一歩ずつ進むしか道はありません。
「G7サミットは失敗だった」というような過激な言動は解決への道を困難にするだけです。
 
まずは「非核保有国に対する核攻撃の絶対禁止」から初めて、核兵器による脅しに対する制裁、さらに保有数の削減という地道な道を進んでいくしかないのです。
そうした意味からいえば、今回のサミットはその第一歩として成功といえるのではないでしょうか。
そして、この先の長い道のりを考えれば、ウクライナへの核攻撃をちらつかせ、隣国ベラルーシへの核配備を進めるプーチンの意図を挫くことが、次の一歩だと思うのです。
 
プーチンが核使用をためらっているのは、欧米からの核兵器による報復です。
皮肉なことですが、核廃絶の第一段階には、こうした核抑止力がまだまだ必要なのが現実です。
 
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┃★中国の狙い                       ┃
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中国の習近平主席は、ウクライナ侵攻をどのように考えているのでしょうか。
確かなことは、この侵攻をどううまく利用しようかと考えていることです。
 
中国が一番上げたい成果は、中国主導でウクライナ問題を解決することです。
これが成功すれば、世界における中国の評価が瀑上がりすることは間違いないからです。
しかし、この成功は、ロシアの民主化が遠のくことであり、ロシアの侵攻に一定の成果をあげさせることを意味します。
 
中国は、ウクライナ国民の平和を取り戻す願望などには全く関心がありません。
習近平主席は、「国民は国家の統制のもとで大人しく生きるべきであり、政治に関心を持つべきではない」とする皇帝政治の復活を夢見ています。
プーチンの「大ロシアの復活」、トランプの「偉大な米国の復活」と同列の思想です。
ゆえに、「政治統治の正当性などは“くだらない”問題であり、民主政治など愚策に過ぎない」とする自らの考えが国際社会で認知を得ることに、ウクライナ侵攻を利用しようと考えています。
実際、世界各地で、そのような政治的工作を行っているわけです。
 
また、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に代わり、中国寄りから日米寄りにスタンスを変えた韓国に対しては、居丈高な姿勢で脅しを掛けています。
それに乗って政権奪取を目論む野党の「共に民主党」は、卑屈なほどに中国にすり寄っています。
しかし、SNS世代の若者は、世界中の情報に触れることができるため、かつてのような一方的なプロパガンダに踊らされることはなく、野党の目論見は外れそうです。
国民全体の意思は来年(2024年)の総選挙で明らかになるでしょうが、現在ではなんとも判断ができません。
日本としてはそれまで交流は深めながら静観するしかありません。
 
こうした中国による隣国脅しと弱体化工作は激しくなる一方です。
当然、日本は最大の標的になっています。
習近平主席が、わざわざ沖縄を「琉球」と言い換えてネット配信したこともその一環です。
沖縄県の玉城デニー知事が訪中するという機会を狙っての発言であることもミエミエです。
玉城知事を、沖縄を独立させ中国に取り込むという戦略にとって格好の人物と見ているのでしょう。
そのことを沖縄県民はよく考えて欲しいと思います。
 
昨年あたりから、中露による日本周辺での合同軍事演習が増えています。
空も海も、回数だけでなく規模もどんどん拡大してきています。
また、中国の海底調査船が何度も日本領海を侵犯して我が物顔で海底を調査しています。
明らかなる侵攻準備とみてよいでしょう。
そろそろ実力で阻止しないと手遅れになる事態といえます。
こうした一連の挑発が、台湾侵攻は当然として、あわよくば沖縄奪取すら狙っての戦略であることは明らかです。
実際行動を起こさないまでも、日本にそうしたプレッシャーを掛け不安を募る効果を狙っています。
それに対して岸田政権は何も抵抗できないと甘く見ているのでしょう。
岸田首相の器が問われる事態となっています。
さて、当の首相はどう考えているのやら・・
 
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┃★財務官僚に取り込まれる岸田首相             ┃
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岸田首相が今国会での解散を否定したことで、安心して(?)内閣不信任案を出せる立憲民主党。
もちろん、否決されることが前提のカッコ付けの提出です。
ということで、国会はしばらくお休み。
 
そうした無風(腑抜け?)状態の国会とは違い、先月の日銀の会合では大きな波乱が起きました。
今月15、16日の2回目の会合の結果はまだ分かりませんが、気にはなります。
このことは、次(6/30)の経済号で解説したいと思います。
 
政治を考える上で重要な軸があります。
その軸とは予算配分であり、その決定が政治主導で行われるか財務主導で行われるかで政治は変わります。
戦前は、内務省が中心的な権限を持ち、両方のバランサーの役割を果たしてきました。
しかし、敗戦の結果、GHQ(General Headquarters=連合国軍最高司令官総司令部)により内務省は廃止されました。
GHQは、軍部が内務省と結託して、あの戦争を引き起こしたと考えたのです。
その結果、内閣は政策決定の統治機構を失いました。
当時は、政策決定はGHQが行うので必要なかったともいえます。
 
サンフランシスコ講和条約により、日本は1952年に主権を回復しますが、1945年の敗戦からの7年間は目まぐるしく政権が交代しました。
(この間の経緯は、いずれ本メルマガで解説しようかと考えています)
 
その中にあって、内閣統治の司令塔であった内務省は復活せず、代わりに主導権を握ったのが、財務の元締めである大蔵省です。
敗戦で財政破綻状態にあった日本は、復興資金を米国から借りるしか手段がありませんでした。
このような時は、借りたお金をしっかりと管理し返済を実行するという信用が何より大切ですから大蔵省主導で良かったといえます。
なにしろ、敗戦時(1945年8月)の政府債務は約2000億円(うち国債残高1408億円)にのぼっていました。
GDP比でいうと200%を超えていました。
「今と同じではないか」と言われるかもしれませんね。
しかし、膨大な資金を投じた軍艦や飛行機の大半は消え、生産設備は空襲で瓦礫の山と化した中で、GDPの多くは無いと同様になっていましたから、計算不能状態が真実の姿です。
当時の大蔵省の記録を見ましたが、解説不能なほどの「無い知恵を振り絞り」状態が伺えます。
客観的にみて「よくやった」と言うしかありません。
もっとも、戦後に起きた記録的な超インフレで国債や銀行預金等が紙切れ状態になったことも幸いしました。
経済とは、こんなものなのだな、と思うと同時に、日本人は逆境に強いDNAがあるのかとも思いました。
 
このように、大蔵省の功績はあったのですが、強大になりすぎたとして、2001年に現在の財務省と金融庁に分割されました。
森内閣の自公保(自民党、公明党、保守党)連立政権の時です。
22年前のことですから、読者の皆様も「もう忘れた」でしょうね。
この時、首相の権限強化の目的で、首相直属の機関として内閣府が生まれました。
が、戦前の内務省のようにはいかず、どうも存在感の薄い官庁となってしまっています。
 
そうなると、財務省が、かつての大蔵省のような権限を持ち始めます。
その後の首相は、民間から自らのブレーンを集め、首相補佐官のような米国型の政治を志向してきたことで、財務省の権限は抑えられてきました。
その典型が安倍元首相で、かなり優秀なブレーンが集まっていたと思います。
しかし、息子を首相補佐官にしてしまうほどブレーンを集められない岸田首相は、今や財務官僚に取り込まれた形になっています。
ストックオプションに対する20%課税を所得税と同額にすることを皮切りに、退職金に対する課税も一般所得扱いにするなどの増税案が目白押しです。
当然、消費税の15%、さらに20%増税なども盛り込まれています。
野党の弱さを考えると、与党内の反対勢力に頼るしかないのが悲しいですね。
 
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<編集後記>
ウクライナ軍の影に、英国のSAS(Special Air Service=陸軍特殊空挺部隊)と米国のシールズ(Navy SEALs=海軍特殊戦コマンド)の存在があると言われています。
特殊部隊ゆえ、確実な情報に乏しいのですが、次回、ウクライナの反撃作戦を解説したいと思っていますので、その時に解説を加えたいと思います。
冷静な解説を心がけていますが、正直、ウクライナの勝利で終わることを願っています。
 
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