2017年10月31日号(経済、経営)

2017.11.17


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2017年10月31日号
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発行日:2017年10月31日(火)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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           2017年10月31日号の目次
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★大企業の相次ぐ不正(その1)
◇アジア経済戦争
◇日本経済は新次元の入り口にある(その4)
☆短期的変動に備える経営へ(10)
これからの商売(6):夢想生中継
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こんにちは、安中眞介です。
今号は経済、経営の話題をお送りします。

実感に乏しいとはいえ、指標的には日本経済は好景気です。
企業収益も、内部留保の積み上がりが示すように好調です。
しかし、企業には、貯め込んだ利益を再投資に使う気持ちもアイディアも乏しい状態です。
未来が見えず、従業員への再分配にも慎重です。
それらが一番の危機かもしれません。
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┃★大企業の相次ぐ不正(その1)                  ┃
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神戸製鋼所や日産自動車の不正など、日本を代表する大企業の不正が相次いで発覚しています。
日本だけでなく、近年はフォルクスワーゲンなどの欧米大企業の不正も発覚しています。
その原因について、識者やコメンテーターがあれこれ述べています。
不遜を承知で言わせてもらえば、どれも当たっていますが、どれも問題の本質から外れているような気がしています。
私は、かつて大企業の職場で働いていましたが、その時代から不正は日常的に行われていました。
しかし、それをすべて「企業が悪い」とか「社員が悪い」と片付けられない深い要因があります。
まず、法であれ社内規則であれ、それを完全に遵守することは不可能という現実があります。
これは社会全般に対しても言えることです。
例えば、車を運転している方で、過去に一度も違反をしていないと言われる方は皆無に近いのではないでしょうか。
実際に反則切符を切られなくても、日常的に速度違反は犯していると思います。
また、警察も悪質でない限り、違反を黙認しています。
それは社会を円滑に動かすためには法の執行をある程度緩める必要があるという経験則からです。
問題は、その「ある程度」の“程度”にあるのです。
速度違反については、一般道路だったら20kmオーバーまで、高速道なら30kmオーバーまでは捕まらないというような程度があります。
(上記は私の感触なので、責任は持ちませんよ)
このように、たいていのことは、法律の規準を超えたところに「見えない」規準があるのです。
しかも、それは取り締まる側の裁量で決まる規準であり、取り締まられる側は推測するしかないわけです。
神戸製鋼所や日産自動車の不正は、検査結果の偽装や無資格者による検査が日常化していたという不正です。
やはり「ある程度」が“少々”のうちは業務を円滑に進める「潤滑油」的な認識だったと思いますが、次第に「違反をしている」という意識が薄れ、やがて「あらたな暗黙規準」化してしまった例だと思います。
では、なぜそこまで行ってしまったのでしょうか。
それは次号で述べます。
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┃◇アジア経済戦争                         ┃
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尖閣諸島で日中が直接対立したのは2010年でしたから、もう7年前になります。
あの時、中国各地で起きた日系企業への襲撃事件は、日本企業の中国熱に冷水を浴びせかけました。
それ以降、日中関係は改善せず、日本企業の対中投資はピーク時の134億ドルから2015年には88億ドルに低下し、下がり続けています。
その反面、東南アジアへの投資は拡大を続け、2015年には190億ドルと対中投資を大きく上回る結果となっています。
いわゆる「チャイナ・プラスワン」と呼ばれる、生産拠点を中国だけでなく東南アジアのいろいろな国に分散投資するという企業戦略の結果です。
さらに日本政府も、東南アジア諸国へのインフラ投資をバックアップする政策に転換しています。
この政策は、中国の一帯一路と競合する形となっているので、政治問題化する難しさをはらんでいます。
その懸念払拭のためか、安倍首相は、一帯一路へ協力する意思はあると発言しましたが、完全なリップサービスですし、それに乗る日本企業はないと思われます。
2期目を迎える習近平政権は、軍事強国への道をひた走ることを宣言しました。
そうした強大な軍事力を背景に、アジアからヨーロッパまでつながる経済圏を「一帯一路」と呼び、「中国の夢」と喧伝していますが、果たしてそれが健全な経済となり得るでしょうか。
習近平主席の考えにあるのは、世界史上最大の版図を誇った元帝国の再来との話もあります。
そこには政経分離の原則などは微塵(みじん)もなく、政治・軍事・経済の一体化による世界制覇の夢があるだけです。
世界的に中国の野望を抑えられるのは米国だけでしょうが、アジアにおける日本の役割は大きいと思います。
しかし、軍事力で中国に対抗することには限度があるので、軍事と分離した経済政策を進めていくことが日本の採るべき道です。
ところで、日本と同じように中国への投資を東南アジア向けに切り替えてきているのが台湾です。
蔡英文政権は、発足後、中国依存の経済を東南アジアへ多角化する「新南向政策」を本格的に推進しています。
その結果、台湾企業の投資先に占める中国の割合は、2010年の84%から2015年には51%にまで急激に低下しています。
一方で、東南アジアへの投資は、2倍以上に増えています。
政治と切り離した台湾との経済協調は、日本が採るべきこれからの戦略の一つかもしれません。
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┃◇日本経済は新次元の入り口にある(その4)            ┃
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先の選挙で、アベノミクスに対抗する意識か、希望の党が「ユリノミクス」などという言葉を使いました。しかし、選挙の敗北で一気に消えてしまいました。
真偽はわかりませんが、ご本人の発案だとしたら、小池代表の経済感覚は「この程度?」ですね。
日本経済は、なんとか平衡状態を保つのが精一杯のように見えますが、旧来の経済から新次元の経済に入る入り口で立ちすくんでいる状態です。
一定の効果はありましたが、アベノミクスでは新次元の扉は開けません。
この政策は、時間稼ぎの政策だからです。
それでも5年続きましたから、たしかに時間稼ぎの効果はあり、企業は体力を取り戻してきました。
しかし、時間切れが迫っています。
本気で新次元の経済への移行を始める時が来ていますが、主役は政府ではなく企業です。
政府の役割は、脇役として勇気ある企業をバックアップする政策を打つことにあります。
「ユリノミクス」などと中身のないことを言っている時点で希望の党は失格でした。
今の弱小政党ばかりの野党には、そうした政策を作る能力がありません。
与党に託すしかないのですが、安倍首相には自分の代だけで作ろうと考えないことを望みます。
新次元の経済に入るためには、これから3代の首相が必要です。
その礎を作ることをご自分の使命として欲しいものです。
この新次元の経済の入り口を開ける道具は、誰もが分かっている通り、インターネットです。
だが、ネット社会は、パンドラの箱を開けるように、人間の醜い欲望を一気に解き放つ怖さがあります。
しかも、リアルな世界と違い、バーチャル世界には強い警察組織がありません。
法規制が追いつかないまま新手の犯罪が次々に発生し、モラルの崩壊が続くでしょう。
最近、雨後の筍のように伸びる企業の多くは、ネット関連の振興企業ばかりです。
いずれも20代、30代の若い経営者が多く、勢いがあります。
若いということはモラル感覚が未成熟でもあるので、それが成功の一因にもなっています。
ネット・ビジネスの世界でモラルだの社会正義だのと考えていたら遅れを取るからです。
アイディアが湧いたら、良い悪いなどと考えないで、即実行なのです。
ダメならすぐ止めて次のターゲットに向かう。
この繰り返しこそが成功の要因となっています。
少しでも常識や正義感が勝ってしまう経営者は敗者となってしまいます。
ネット・ビジネスの世界はリアル・ビジネスと違って、1社しか勝ち残れない世界です。
だから、後塵を拝したら負けです。
「この商売は社会に害をもたらすかも・・」なんて考えるだけで負けです。
ゆえに、社会経験を積んだ中高年の経営者では、こうした若い経営者に太刀打ちが出来ないのです。
しかし、「それで社会が良くなるのか」と問われたら、「確実に悪くなる」と答えます。
そこに中高年の経営者の活路があると思いませんか。
私もそうした一人ですから、次号から、そうした「真面目な新次元のビジネス」の話をしたいと思います。
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┃☆短期的変動に備える経営へ(10)                ┃
┃ これからの商売(6):夢想生中継                ┃
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今回の表題を見て、すぐに分かった方は、相当なネット通ですね。
「夢想生中継」とは、2016年9月に立ち上げた中国のプラットフォームのことです。
プラットフォーム商売といえば、すぐに「ユーチューブ」を思い浮かべる方も多いと思います。
ツイッターやフェースブックも、広い意味ではこの範疇に入るかと思います。
つまり、主催者は白紙の「お絵かき帳」だけを用意して、あとは視聴者が自分勝手に書き込むというものです。
その上で、その書き込みや画像を誰でも見ることが出来て、良いとか悪いとか、なんでも言えるという仕組みです。
読者のみなさんは、ツイッターやフェースブックが中国では事実上禁止されていることはご存知のことと思います。
政権への批判を恐れて、当局が厳しく検問しているわけです。
そのことが、中国独自のプラットフォーム商売がどんどん出てくる土壌になっています。
「夢想生中継」もその一つなのですが、大きな特徴は2つです。
一つは「生中継」ということです。
録画してあとからネットに載せるのではなく、「いま、この瞬間」を送るサイトだということです。
もうひとつは、視聴者が気に入った生中継の送り手(パフォーマーといいます)にバーチャルプレゼントを送るという仕組みです。
このバーチャルプレゼントは、あくまでもバーチャルであって実際のモノではありません。
ゲームの世界の「武器コンテンツ」のようなもので、単なるアイコンに過ぎないのです。
ですが、ネットの世界では、このプレゼントを他の人にあげたり売ったりできるという仕組みになっています。
こうしたバーチャルプレゼントのデザインや動きは複数存在するマネジメント会社が作り、掲載される仕組みになっています。
視聴者は、代金を払ってプレゼントを選択し、気に入ったパフォーマーに送るということです。
支払われた代金の1/3をプラットフォーム会社が取得し、2/3がパフォーマーとマネジメント会社に分配されます。
一見して「バカバカしい」と思うかもしれませんが、この会社、倍々どころか6倍増で売上を伸ばしているとか。
しかし、当然のごとく、怪しい動画のオンパレードになっています。
生中継ゆえ、事前の検閲なく動画はアップされてしまいます。
プラットフォーム会社は24時間体制で監視を続け、わいせつ画像などは5秒で止めていると豪語していますが、実態は危ないものとなっています。
このサイトで“カネが稼げる”ということで、投稿内容がどんどん過激になってくるのは必然の成り行きです。
それも”わいせつ”画像が大半を占めるということも当然でしょう。
ついには「赤ちゃんづくり生中継」と称する画像がアップされました。
この時は5秒では止まらず、視聴者の通報で慌てて停止されましたが、すでにあちこちキャプチャーされ拡散されてしまったということです。
動画の内容はご想像にお任せするしかありませんが、この他にも、飲酒運転の生中継なども配信されていて、危ないサイトNo.1になりつつあるようです。
中国当局も取締りに乗り出したようですが、ネット社会の闇は中国全土にどんどん広まっていく様相を呈しています。
さて、こうした商売を「これからの商売」として勧めるわけにはいきませんが、「これからの商売」の要素を幾つも含んでいることは否定できません。
思えば、ビデオデッキが爆発的に普及した影の立役者は「アダルトビデオ」でした。
軍事産業とピンク産業がテクノロジーを進化させてきたことは事実です。
ともに道義的には問題がありますが、「反道徳がビジネスになること」を否定できません。
商売とは悩ましいものです。
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<編集後記>
私のような団塊の世代は「化石世代」なのでしょうが、50年もコンピュータと付き合ってきた人生なので、今のネット社会はよく理解できます。
ご存知の通り、コンピュータはただの箱であり、意思をもっているかのように見えるAIも含めてすべてはプログラムが決めています。
そのプログラムを設計しているのはSEという人間なのですが、SEの設計を超える自動進化をプログラムに与えることは可能であり、現にシステムの進化は神の領域に入りつつあります。
ターミネータの世界が来そうですね。
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