2019年12月15日号(国際、政治)

2019.12.17


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2019年12月15日号
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発行日:2019年12月16日(月)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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           2019年12月15日号の目次
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★北朝鮮の絶対的な矛盾
★ヒトラーの正体
★民主主義に軍事力は不要?(3)
★第一列島線の攻防(4)
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
 
あれほど騒いだGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の失効も、韓国の一人芝居で終りです。
韓国は「いつでも破棄できる」と強がっていますが、11月23日に破棄しなかったことで、同協定は1年間の自動延長となっています。
つまり、来年の11月23日までは破棄できないということです。
そんなこと分かっていながら強がりを言わなければならない姿に韓国政治の危うさを感じます。
ただし、自民党から漏れる「パーフェクト・ゲームだ」などの有頂天な発言は愚かです。
安易な妥協は禁物ですが、何が日本の国益になるかを冷静に考えて、今後の日韓交渉を注意深く進めていくべきです。
 
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┃★北朝鮮の絶対的な矛盾                      ┃
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「やはり」と言うべきか、北朝鮮の非核化が幻想に過ぎないことが明らかになってきました。
米朝両国は、ギリギリのところで「交渉打ち切り」とは言わずにいますが、出口はありません。
 
北朝鮮の対米作戦は、もともと絶対的な矛盾を内包していました。
核兵器を持てば、米国を交渉に引きずり込むことができる。
その交渉で米国からの体制の保証と経済援助の二兎を得る。
シンガポールで、金正恩は「成功した」と、ほくそ笑んだはずです。
 
しかし、その核兵器を手放さなければ経済制裁は解除されないという現実に直面しました。
ところが核兵器を手放してしまったら、米国から相手にしてもらえなくなる。
つまり、金正恩は完全な二律背反(絶対的矛盾)状態に陥ってしまっているのです。
 
金正恩の最大の誤算は、トランプ大統領を自分と同じ独裁者だと思ってしまったことにあります。
大統領の一言で経済制裁は解除、悪くとも緩和されると本気で思ったのでしょう。
 
トランプ大統領は奔放な性格ですが、それでも民主主義国家のトップです。
民主主義国家のトップは、国民すなわち議会の声を無視できません。
その米国議会は、党派を超えて北朝鮮の核武装を否定しています。
金正恩は、トランプ大統領を自分と同じ独裁者だと勘違いし、議会を黙らすことができると考えたのでしょう。
交渉が停滞したのも、悪い側近たちにそそのかされているだけなのだと夢を見ていたのでしょう。
 
金正恩と同じ夢を抱いていた人がもうひとりいます。
韓国の文在寅大統領です。
文大統領は、選挙を控えたトランプ大統領が金正恩と劇的に妥協する夢に期待をかけているのでしょう。
しかし、トランプ大統領が、米国議会の反北朝鮮情勢を無視して無謀な「ディール」を強行する公算はゼロです。
金正恩に残された手は、韓国への軍事攻撃かもしれません。
また、米国もそれを待っているのかもしれません。
その鍵は中国が握っていそうです。
 
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┃★ヒトラーの正体                         ┃
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前東京都知事の舛添要一氏が書いた「ヒトラーの正体 (小学館新書)」は、大衆を手玉に取る政治手法という観点だけでなく、商売手法の本として読んでも面白いです。
舛添氏は、都知事としての資質には少々欠けるところがありましたが、文筆家としての才能はたしかにあります。
 
舛添氏自身がこの本のことを語っていますので、その一部を以下に紹介します。
「ヒトラーは、『真実でなくても、自分だけを一方的に褒め、責任は敵に負わせること』が宣伝の主眼だと述べています。まさにトランプ大統領がSNSでフェイクニュースを拡散させる手法です。『パンとサーカス』を求める大衆も真実かどうかは気にせず、面白いものなら受け入れてしまう。『うそは大きければ大きいほどいい』とも、ヒトラーは言っています。日本でも、『NHKをぶっ壊す』や『消費税廃止』としか言っていない政治家に、面白そうだと思って投票した人が相当数いたのではないでしょうか」
 
なるほどと思います。
舛添氏に「政治を軽いものにしてしまった責任は、あんたにもあるだろう」と言いたいのは山々ですが、それは横に置いて、何がヒットラーを生み、育てたかを知ることは意味があります。
 
敗戦に打ちひしがれるドイツを土台にして、いかにしてヒットラーを政治リーダーにするかのシナリオを書いたのは、宣伝相のゲッペルスと言われています。
彼の手法は、今でも世界中の大企業が宣伝や広報戦略に応用しています。
それだけスゴイ手法だといえますが、それだけ大衆は愚かともいえます。
個人個人としては分別ある人も、集団となり強い影響力ある人に煽られると、いとも簡単に暴力的になってしまいます。
私の若い頃の学生運動がそうでした。
今の韓国もそれに近い状況といえます。
 
こうした人々を煽る才能を持つ人間のことをサイコパスといいます。
キリストやブッダのような宗教創始者もサイコパスですが、正のサイコパスです。
正の方向(争いや恨み、妬みの心理を刺激しない方向)に人々を導く心理的影響力の持ち主です。
それに対し、ISの指導者やオームの麻原彰晃のような人間は負のサイコパスです。
人々の心理に潜む邪悪な衝動を引き出す力の持ち主です。
ゲッペルスも後者といえるでしょう。
そのゲッペルスの理論を応用している多くの大企業の事業戦略も、それに近いものがあります(全部とは言いませんが)。
 
舛添氏は「ヒトラーを正しく知らなければ、再びヒトラーのような独裁者が現れたとしても恐れることもできない」と、ヒトラーの本当の恐ろしさを訴えています。
現に、欧州ではナチスの復活を願うような人々が増えてきています。
こうした大衆の輪の中には入らず、個人としてのアイデンティを持って生きたいものです。
 
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┃★民主主義に軍事力は不要?(3)                 ┃
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ロシアのプーチン大統領は独特の政治観を持っているようである。
彼は、かつて「ドイツは主権国家ではない」と発言したことがある。
この発言は、ドイツというよりNATO加盟国に対して向けられたものである。
米国の軍事力に依存しているNATO加盟国は、独自で自国を守る力を持たない国なので「主権国家」とは呼べないという意味である。
だが、同じNATO加盟国でも、英仏は、独自の核戦力を有しているので「主権国家」だという認識のようである。
 
そうなると、プーチン氏が認める「主権国家」は、まず、米、露、中、英、仏、印、パキスタンの核兵器保有国となる。
さらに、スエーデン、スイスなどのように、一切他国に依存しない独自の軍事力を有する国家も認めているようである。
 
「プーチンの勝手な見方」と無視するのは簡単だが、かつて何度もロシアと戦火を交えた日本としては、無視できない要素を含んでいる。
それは北方領土交渉における最大の要素である。
ロシアは、米国の軍事力に頼っている日本を「主権国家」として認めない、ゆえに同格の交渉相手とは認めないと言っているのである。
つまり、現状で北方領土が戻る可能性はほとんど無いということである。
 
では日本はどうすれば良いのか。
日米安保条約を破棄し、プーチンが認めるほどの軍事力を装備する・・では、あまりにも単純発想である。
プーチン理論に振り回されることも、楽観的な平和を願うことも害となる。
あらゆる幻想的な認識を消し去り、厳しい現状認識に立つことである。
当面、北方領土は返ってこない。
当然、ロシアとの間の平和条約締結もない。
国際的には、平和条約がない国家どうしは「準戦争状態」と定義されている。
安倍政権は、そのことをよく認識してロシアとの交渉に臨んで欲しい。
 
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┃★第一列島線の攻防(4)                    ┃
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日中韓が8月に外相会談を行った際、中国の王毅外相は河野太郎外相(当時)との2国間会談で「日本に米国の中距離ミサイルが配備されれば、日中関係に重大な影響を及ぼす」と脅した。
大変に高飛車な態度を隠そうともしなかったという。
王毅外相は、先日の韓国訪問では、もっと露骨に韓国を脅した。
 
実は、そのくらい、中国は米国のMPS =Maritime Pressure Strategy(海洋圧迫戦略)を恐れているのである。
当初、中国は、米軍のASB戦略は構想が粗雑であり、撃破可能と考えていた。
米軍を甘く見ていたのである。
米軍は、大規模な戦略開発を進める際、その途中の構想ごとに「○○戦略」のような名前を付けて、真の狙いをぼかすことが多い。
私は、故武岡先生から、米軍の戦略構築は孫子の研究結果に基づいていると教授されていたので、孫子流に個々の米軍戦略を解析してきた。
具体的には、米軍内で10年単位のスパンで行われてきた一見バラバラに見える議論を孫子理論で組み合わせ、真に目指す戦略の全容を理解するようにしてきた。
それが、今回のMPSの公表ではっきりしてきて、自衛隊との連携のあり方が分かってきた。
 
簡単に言うと、先に発表されていたASB(Air Sea Battle=エアシーバトル戦略)は、読んで字の如く、空軍と海軍という動的戦力の展開作戦を主体とする従来型の戦略である。
しかし、この戦略で第1列島線の内側に米軍を入れないという中国の対艦ミサイル網を突破できるのかという疑問があった。
弓矢の時代の戦争を描いた中国映画でおなじみのシーンがある。
それは、数千本の矢を一斉に打ち込み、敵の頭上に雨のように降らせるシーンである。
近年のCG画像の発達で、恐ろしいまでの臨場感で降ってくる矢雨の迫力はスゴイものである。
現代の中国軍は、あの矢の雨を対艦ミサイルで再現しようとしているのである。
 
イージス艦は、1艦で200の標的を捉え、同時に数十を撃ち落とせるという。
第一列島線防衛のイージス艦は、日米合わせて18隻体制なので、最大3600発のミサイルを補足し、300~400発を撃ち落とせる計算になる。
しかし、一撃をそれで迎撃できるとしても、地上発射の対艦ミサイルを連射されたら、イージス艦の搭載ミサイルは尽きてしまう。
 
そうした懸念がある中、公表されたのがMPS =Maritime Pressure Strategy(海洋圧迫戦略)である。
この戦略の主体は、陸軍と海兵隊である。
それも、地上発射かつ移動型の中距離ミサイル戦力である。
つまり、動的戦力であるASBと静的戦力であるMPSの組合せによる統合戦略が姿を表したということになる。
前号で述べた自衛隊の南西諸島への配備が、本戦略とリンクしているのは当然のことである。
 
中国が、最近、やっきになって米国の中距離ミサイルの配備について日韓両国を脅すのはMPSによって第一列島線の確保が不可能になる恐れが強まったからである。
しかし、米軍ではなく自衛隊が配備するミサイル網に関しては、中国は文句が言えない。
その撤廃を主張したならば、中国のミサイル網も撤廃せよと返されるからである。
日中関係を改善したいという最近の中国の姿勢は、これとリンクしている。
単純な平和を望む意思からではないことを肝に銘じておくべきである。
 
先のローマ教皇のように「軍事力による平和」や抑止論を批判する声は多い。
しかし、国内において警察力が必要なように、世界においても治安力が必要である。
それがない世界の現実を考えれば、軍事力のない平和は実現不可能である。
中国が第一列島線に対する野望を捨てない限り、極東に平和は来ない。
 
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<編集後記>
各地で「皇太子殿下お立ち寄り場所」などという看板を目にすることがあります。
そのたびに「皇太子は、もうなくなったんだよね」と、改めて思います。
旧皇太子殿下は天皇になられたが、秋篠宮殿下は皇太子ではなく「皇嗣(こうし)」なので、皇太子は存在しなくなりました。
秋篠宮殿下が新天皇の養子となり皇太子を名乗る案もあったと言われていますが、当の殿下が拒否なさったとか。
今の上皇が皇太子だった頃から慣れ親しんだ「皇太子」という称号がなくなったという現実が、皇室存続の危うさを感じさせます。
 
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