2021年9月15日号(国際、政治)

2021.09.16


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2021年9月15日号
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発行日:2021年9月15日(水)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2021年9月15日号の目次
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◇総裁選に、国民の一人として思うこと
★アフガニスタン情勢に思うこと
◇抑止力という名の軍事力(17)
◇原発の再稼働(その3)
 
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今号は国際問題、政治問題をお送りします。
 
菅首相の不出馬を一番残念がっているのは、立憲民主党でしょう。
総裁選の効果でマスコミも国民の関心も自民党に向いてしまっています。
政治は最大のワイドショーだなと思う次第です。
今号は、この話題から入ります。
 
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┃◇総裁選に、国民の一人として思うこと               ┃
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今回のドタバタ気味の自民党総裁選は、日本政治の劣化を浮き彫りにしています。
一見、盛り上がっているように見えますが、マスコミ報道が先行しているワイドショーです。
地味な岸田さんだけでは盛り上がりに欠けるところでしたが、跳ねっ返りの河野さんが立ったところで、俄然盛り上がってきました。
「刺身のツマ」と言っては失礼ですが、女性ながらタカ派の高市さんも参戦したことで、決選投票まで行きそうな雰囲気になり、自民党にとっては願ったり叶ったりです。
こうして、第二幕まで余韻を残しての衆院選となれば、マスコミの話題も引き付けられます。
 
一方の野党は、話題に乏しい上に、国民を唸らせるだけの政策を打ち出すことができません。
野党4党が、市民団体の仲介という「?」と思うやり方で政策合意しましたが、うち2党は泡沫政党で、事実上は立憲民主党と共産党の選挙協力に他なりません。
この突然の合意発表は、「そもそも、この市民団体とは何者?」の疑問を国民に持たせてしまい、逆効果でしかありません。
案の定、「安保法制を廃案にする」とか「消費税減税」とかのカビの生えた項目を羅列しただけの合意内容です。
 
政治家は軽く見ているようですが、日本国民はそれほど愚かではありません。
与党への支持は、「消極的支持」を通り越して「しょうがない支持」です。
それで与党が勝ってしまうくらい「共産党と組む立憲民主」に対する拒否反応が大きいのです。
それが読めずに、単純計算で「共産党と組めば勝てる選挙区が80はある」と考える立憲民主党のお粗末さが浮き彫りになっています。
枝野党首をはじめとした顔ぶれに新鮮味はなく、未だに鳩山さんや管さんの身勝手な発言を止められない反省無しの無定見ぶりです。
 
戦後の日本は、敗戦の負の意識から抜け出せずに、人を評価するより非難する傾向が強いように思われます。
支持率が急落した菅首相ですが、さしたる失政はなく、未曾有のコロナ禍の中で頑張ったほうだと思います。
世界的にみても、ロックダウンなどの強硬策をせずに、この程度の感染で抑えられている国はないと思います。
ならば、自民党は、堂々とそのことを発信し、菅首相を担いで衆院選に臨むべきだったのでしょうが、個々の議員の「自分の議席ファースト」の声に負けたわけです。
菅首相を担げば大敗するでしょうが、連立などの手で、かろうじて政権は維持できるでしょう。
そこからの再生を始める道を採るべきだったのです。
 
今回は、野党のひどさに助けられて、与党は政権を維持するでしょう。
しかし、与党の劣化が収まるとは思えませんし、野党の劣化はそれ以上です。
強気一辺倒の中国による尖閣侵入や台湾海峡の危機は、激しさを増す一方となるでしょう。
現実論として、新首相になる人には、こうした外交・防衛問題への対処と経済再生への明確なビジョンを示して欲しいものです。
もし、失望しか感じなかったら、総選挙での棄権も選択肢だと思う憂鬱さです。
 
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┃★アフガニスタン情勢に思うこと                  ┃
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アフガニスタンで民衆の生活支援に尽力し、不当な銃弾に倒れた故中村医師を讃えた壁画をタリバンは白く塗りつぶしてしまいました。
タリバン上層部は、この事態を把握していなかったと言っていますが、ウソではないと思います。
塗りつぶしは高揚した現場の指揮官や兵士の独断だと思いますし、壁画が中村医師だとの認識すらなかった可能性があります。
 
米国は、20年間の時間とカネ、そして2500名の兵士の命を掛けた成果を簡単に手放してしまいました。
バイデン大統領の支持率が下がったのもうなずける結末です。
 
読者のみなさまはご存知でしょうが、タリバンとはイスラム神学校の学生という意味で、乱暴な比較ですが、学生運動家たちが政権を採ったみたいなものと言えるでしょうか。
こう言うと、すぐに韓国の現政権を思い浮かべるかと思います。
韓国政府の支離滅裂な政策も、学生運動家あがりによって政権の幹部が占められていることに原因の一端があります。
 
私も団塊の世代ですから、あの学生運動が激化した中で大学時代を過ごしました。
過激な運動家になった友人は何人もいます。
もし、彼らが政権を取っていたらと考えると、良くて今の韓国、悪ければタリバンかと思ってしまいます。
 
彼らの思想は純粋な正義感で占められていました。
正義とは怖い言葉です。
自分たちは絶対的に正しく、逆らうものは絶対悪としてしまう言葉です。
学生運動の最盛期、過激派の学生たちが、一人の教授のカバンを取り上げ、その中に入っていたドリンク剤を掲げ、「みろ、こいつは、こんな物を飲んで女子学生に言い寄ろうとしている」と我々に叫んだ光景を忘れることができません。
同時に、「それは単なる言いがかりだ」と教授をかばえなかった自分を今でも恥じています。
かばったりしたら、私も餌食にされたことが分かっていたからです。
正義という言葉は、真に“嫌い”です。
 
彼らにとって、日本という国は、正義の名の下に、あの時の教授のように吊るし上げなければ気が済まない存在なのでしょうか。
 
アフガニスタンから話題が逸れましたが、タリバンに過大な期待はできないでしょう。
国際社会の中で生きる上での人権尊重を理解しない限り、国家としての承認はすべきではありません。
カギを握っているのは中国といえますが、あまり期待できそうにありません。
日本として何ができるのか、次の政権の課題のひとつです。
 
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┃◇抑止力という名の軍事力(17)                 ┃
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近年の自然災害の頻発によって、国民が自衛隊に期待する役割の第1位は「災害派遣」であり(79.2%)、「国の安全保証」は第2位の60.9%にとどまっています。
実際、自衛隊はさまざまな災害派遣に駆り出され、その献身ぶりは評価されています。
しかし、自衛隊の出動は、最後の最終手段であるべきです。
その自衛隊が早い段階から投入されている現状は健全とはいえません。
警察、消防、建設産業、そして医療機関で構成される災害援助組織を普段から整備、訓練しておくべきです。
 
もちろん、いつでも自衛隊を投入する準備は必要ですが、自衛隊は究極の危機である戦争に備える組織であることを忘れてはいけないわけです。
しかし、実際に自衛隊が出動する防衛事態は、政府も国民も、そして当の自衛隊すらも、まだ経験していない有事です。
尖閣危機が、ゆっくりではあるが確実に進行している現在、戦争が現実になることを想定した戦略構築、そして実戦訓練こそが、戦争を防ぐ抑止力なのです。
 
日本にとって、台湾有事は尖閣有事とセットで考えるべき課題といえます。
中国による「日本を核攻撃するぞ」という脅しが、その重要性を物語っています。
中国が恐れているのは、日米連携での介入です。
ゆえに、日本をこの連携から離脱させようと揺さぶりを掛けてきたわけです。
もちろん、この脅しには、なんの効果もなく、中国嫌いの日本国民を増やす逆効果しかありません。
となると、中国の次の手は尖閣への実力行使となるかもしれません。
日本が備えておくべきは、海警の領海侵犯だけでなく、中国海軍の軍艦あるいは軍用機による領海・領空侵犯に対する対処です。
この侵犯が起きれば、もはや実戦戦闘状態に入ったと認識すべきです。
 
日本は「戦争か平和か」などという観念論を排して、実戦となる前に、そのとき何が起きるかのシミュレーションを行い、有事の戦略を立て、訓練しておく必要があります。
このときの第一撃の出動は、米軍頼みではなく自衛隊単独で行う必要があります。
そのシミュレーションを基に、第二撃として米軍との共同戦闘を組み立てるべきです。
 
現在、米国バイデン政権は国防省内に中国タスクフォース・チームを設置し、対中戦略を練り直しているところです。
日本は、その作業に参加し、最悪事態への日米同盟戦略をすり合わせる必要があります。
来月発足する新政権には、コロナ禍対策および経済再建対策と並行して、防衛戦略の抜本的再構築を3本目の柱として打ち出すことを期待します。
自民党員でない以上、総裁選の選挙権はありませんが、その直後の衆院選には、当然選挙権があります。
誰が新総裁になろうと、上記の3本の政策に対する姿勢によって投票を考えようと思います。
野党にも、この視点での政策提言を期待したいのですが、報道を見ている限り、まったく期待が持てません。
 
戦争は自然災害やウィルス禍と異なり、自然に発生するものではなく、また自然に収まっていくものでもありません。
関係国の意図と行動が相互に絡み合い、対応次第で事態が収拾することもあれば拡大することもあります。
不安定な世界で日本の主権と国民を守るため、自衛隊にどのような任務を付与し、その結果としての犠牲をどこまで受け入れるのか、高度な政治判断と国としての覚悟が要求されるのです。
中国も北朝鮮も、憲法9条など、まるで念頭にはなく、日本の防衛体制と覚悟のみを見ているのです。
 
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┃◇原発の再稼働(その3)                     ┃
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一般の方は、放射能と放射線の違いも理解できていない方も多いと思います。
読者のみなさまには「釈迦に説法」ですが、小学生レベルの解説を少々させていただきます。
 
太陽から来る光には、目に見える可視光線の他に熱線である赤外線や殺菌効果のある紫外線のように見えない光線があります。
そのすべては、太陽の中で起きている核融合反応によって放射される光線です。
その意味では、太陽光のすべてが放射線といえます。
そして、太陽そのものが「放射性物質」というわけです。
この放射線を放射する能力のことを「放射能」といいます。
 
放射性物質は、放射を行うことで原子が崩壊あるいは融合していき、それが尽きたときが寿命です。
我々の太陽も、50億年くらいで、燃料である重水素が尽きて、やがて冷たい「死んだ星」になります。
 
軽水炉と呼ばれるいまの原子力発電所は、太陽とは違って重たい元素であるウランやプルトニウムが核分裂する際に失われるごく微量の質量がエネルギーに変わることを利用しています。
それだけなら問題は少ないのですが、核分裂反応の後に残る放射性廃棄物が問題なわけです。
 
いま、韓国や中国が騒いでいる福島第一原発の事故によって発生している汚染水は、こうした放射性廃棄物ではなく、壊れた原子炉の冷却に使われている水や湧き水が廃棄物に触れたことで放射性を帯びてしまった水です。
もちろん、その水には微量の廃棄物が含まれていますが、大半は特殊処理によって取り除かれています。
しかし、トリチウムと呼ばれる三重水素だけは、他のどんな物質とも反応しないため、完全な除去ができないのです。
ゆえに日本は「汚染処理水」と呼んでいますが、中韓両国は悪意を込めて「汚染水」と呼ぶのです。
もちろん、彼らは、上記のことを分かったうえで、日本を貶める目的で、その表現を使っているわけです。
私は、原発や放射線施設で、トリチウムを手に取ったりしていましたが、なんの障害も起きません。
さすがに飲んだりはしていませんが、飲めと言われたら飲めるでしょうね。
 
そう言えるのは、福島原発で仕事をしていた時期、はるかに危険な事態になんども遭遇していたからです。
これまで何度も言及したように、我々は、原発の核心部である圧力容器内で発生する放射性廃棄物の動向調査を行っていました。
危険な放射性廃棄物が格納容器の外へ漏れていないかの調査研究です。
 
毎日、原発内のあらゆる箇所からサンプルを集め、特種な分析器に掛け、含まれる核種とその量を確認するという作業を行っていました。
少人数のチーム員で、4基ある原発の隅々や空気中から24時間、サンプルを採取し、分析するわけですから、連日、夜中まで原発内に居続けるという過酷(というより、法的には違法)な仕事でした。
 
そんなある日、とんでもない分析結果が検出されました。
回収したサンプルから、最も危険な核種のひとつである「ストロンチウム90」が検出されたのです。
しかも、その場所は建屋内でしたが、格納容器の外でした。
ストロンチウム90は、体内に摂取されると骨髄に取り付く核種です。
骨髄は血液を作る場所ですから、白血病を起こす要因となります。
この検出結果が本当となったら原発が停止になりかねない事態です。
20代が中心のこのチームでは判断がつかず、東電側の責任者に報告しました。
その結果は単純なことではないので、次回に解説することとします。
 
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<編集後記>
北朝鮮の巡航ミサイルが物議を醸しています。
射程1500kmは「本当かな」と思いますし、命中精度については不明といったほうが良いでしょう。
ただし、バックに中国やロシアがついての開発ならば可能といえます。
巡航ミサイルの正確な飛行には人工衛星からの正確な情報が必要です。
自前の衛星を持たない北朝鮮は、中露に頼るしかありません。
日本を脅す意味で、中露両国にとって北朝鮮は都合の良い国です。
新首相には、こうした脅しに負けない胆力と戦略思考を備えることを期待します。
 
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