2016年9月15日号(国際、政治)

2016.10.03

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2016年9月15日号
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                発行日:2016年9月15日(木)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2016年9月15日号の目次
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★北朝鮮の暴走の果ては?
★習近平政権の日本敵視行動への対処
☆戦争を起こさせない二つの仕組み(2)
☆経済と政治(6)政治の闇と政治の力
 
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
 
連日、豊洲の盛土の問題が報道を賑わしています。
元都知事が「私もだまされていた」と被害者のようなコメントを出していますが、
民間企業の元トップがこんな発言をしたら失笑ものです。
都民のひとりとして言いたいです。
「みっともねえ~」
 
技術的なことや建設業界については、月末の経済の号で論じたいと思います。
 
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┃★北朝鮮の暴走の果ては?                    ┃
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相次ぐミサイル発射に、今年2回目の核実験と、北朝鮮の暴走はエスカレートする一方。
しかし、国連は「非難声明」と「制裁決議」を繰り返すだけで、何も出来ない有様。
日米にしても、抗議声明と制裁強化の「犬の遠吠え」しか出来ない。
二枚舌の中国は、何もする気なし。
かくして、国際社会は、金正恩の暴走を傍観するだけ。
38度線で対峙している韓国にしても、ようやくこの危険に気付いてきたという鈍感さ。
 
さすがに、韓国マスコミの一部は「日本非難に明け暮れている場合ではない」と、論調が変わってきた。
しかし、国民の意識を反日にだけ向けてきたツケは大きい。
韓国の反日団体は、北朝鮮シンパが多いと言う。
韓国国民はその実態の危険性に気付いているのか、それすら怪しい。
北朝鮮の核攻撃能力がどこまで進化しているのか正確には分からないが、時間の経過とともに韓国の危険が増していることは確実である。
 
この事態に、朴槿恵大統領は、金正恩排除(通称「斬首作戦」)の具体策を指示したとも伝えられる。
核兵器を持たない韓国としては、北朝鮮がミサイルを打つ前に先制攻撃するしか対抗策がない。
移動発射台の殲滅は困難を極め、潜水艦からの発射は防ぐことが出来ない。
ゆえに、最後の手段である斬首作戦しか有効な手がなくなってきていることを意味する。
 
この斬首作戦のカギは米国が握っているが、実際に金正恩の居場所の追跡を含めた共同作戦を練っているとも伝えられる。
場合によっては、金正恩の居場所への直接爆撃すら計画しているようである。
 
その米国の懸念は、中国が参戦した朝鮮戦争の二の舞いになることである。
そのため、水面下で中国への働き掛けをしているようだが、中国にとって受け入れられる展開ではない。
そうなると、中国がどこまで北朝鮮を制御できるかにかかってくる。
しかし、経済崩壊が迫ってきている習近平政権では内部対立が激化し、北問題を考える余裕がなくなってきている。
北朝鮮の暴走と斬首作戦、どちらもゾッとしない結果となりそうな気配である。
 
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┃★習近平政権の日本敵視行動への対処               ┃
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中国とロシアは、9月12日から8日間にわたり、南シナ海で「Joint Sea 2016」と呼ぶ軍事演習を行っている。
一方、米国と韓国は、8月22日から合同軍事演習「乙支フリーダムガーディアン」を行っている最中である。
米軍と韓国軍は、「特定の国を想定していない通常の合同演習」としているが、北朝鮮と中国を想定した軍事演習であることは明白である。
特に中国は、黄海で実施される海上演習に神経を尖らせている。
 
このように、中露の軍事演習は米韓軍事演習に対する対抗の意味合いが強いのであるが、注目すべきは、その演習内容にある。
 
中国の「海軍陸戦隊」がロシア海軍歩兵と組んで行う「水陸両用訓練」であるが、渡洋しての島嶼(とうしょ)への接近・上陸を巡っての攻撃と防御演習などを、実弾を用いて行うということである。
演習場所は南シナ海であるが、同海の周辺諸国は中国に対抗しうる軍事力を持つ国はなく、まして、島嶼での戦闘能力はない。
とすると、今回の島嶼演習での仮想戦場は尖閣諸島と考えるのが妥当である。
 
中国が本気で尖閣奪取に踏み切るかどうかは、現時点では10%以下の確率であろう。
中国にいる知人に言わせると、習近平主席にその意思はあるが、「勝てる」という確信が持てないのだという。
どれほど軍事力を強化しても、やはり日本の軍事力は侮りがたしと思っているようである。
ならば、尖閣奪取の野望を断念させるためには、尖閣を守りぬくという国民合意を高め、実質的な防衛力の整備を怠らないことが重要となる。
 
そして、この先も続く中国の日本敵視行動のエスカレートに冷静に対処していくことである。
具体策としては、海上保安庁の巡視船の増強、自衛隊の実質的な戦力強化などを進めて、尖閣防衛の意志の硬さをアピールするとともに、国際世論を味方につける海外広報を充実させていくべきである。
 
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┃☆戦争を起こさせない二つの仕組み(2)             ┃
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最近亡くなった永六輔氏や大橋巨泉氏などが「戦争は嫌だ、戦争はしちゃいけない」と繰り返し言っていたと、親しかった芸能人たちが追悼番組などで繰り返し発言している。
勿論、戦争反対に異論はないが、亡くなられた両氏を含めた有名人の方々の戦争反対の主張は、どうにも薄っぺらに感じてならない。
宗教が唱えるお題目みたいにしか感じないのである。
歴史を俯瞰してみても、「南無阿弥陀仏」や「アーメン」などのお題目をいくら唱えても、結局、平和なんて来なかったではないかと、意地悪く言ってみたくなる。
 
お題目とは「それ以上、考えるのを止めよう」という「思考停止言葉」なのである。
その思考停止によって戦争の危機が高まることを過去の歴史は教えている。
平和は、もっと必死に考え、必死の努力を続けていかない限り得られないものなのである。
 
前号で、「戦争を回避する方策は2つの戦略に集約されている」とした国際政治学の見解を以下のように列挙した。
1.有効な同盟関係を結ぶ(戦争リスクの軽減効果40%)
2.相対的な軍事力を保持する(同、36%)
3.民主主義の程度を増す(同、33%)
4.経済的依存関係を強める(同、24%)
5.国際的組織への加入(同、24%)
数値はいずれも標準偏差なので、合計100%を超える。
 
今回は、「軍事力の均衡」を重視するリアリズム戦略である第1項と第2項を、日本の採るべき戦術として具体的に考えてみる。
 
1.有効な同盟関係を結ぶ
この具体策は、誰でも思いつく。
現在の日本が結んでいる軍事同盟は、日米安保同盟のみである。
ゆえに、この同盟をより実効的なものへと強化することに尽きる。
 
昨年の安保法案をめぐる国会論議で集団的自衛権が問題になったが、国会の中でも外でも感情的な意見ばかりで実質的な議論は全く聞かれなかった。
 
最初に、これまでの日本の解釈は、世界ではかなり特殊な考えであったことを理解する必要がある。
軍事同盟とは、双方が「一緒に戦う」ことを内外に示すことで、互いの防衛力を補完し合い、そのことで敵対国の攻撃の意図を挫く同盟である。
 
野党は「戦争法案だ」と国民を煽(あお)ったが、上記の主旨を理解すれば、戦争のリスクを下げる戦術だと分かるはずである。
「米国の戦争に巻き込まれる」とする反対意見も多かったが、それは近代以前の考え方である。
いや、近代以前でも、自国への害が大きいと判断し、同盟国の参戦要請を断った例などいくらでもある。
もちろん、その場合は同盟が崩れる危険も大きいが、それも国益判断である。
 
また、「集団的自衛権で戦争ができる国になる」という意見は滑稽でしかない。
およそ、独立国家であれば、集団的自衛権の有無に関わらず「戦争ができて当たり前」なのだから。
これは憲法9条の有無とは無関係な国家の基本的権利である。
 
このような日本の奇妙な解釈によって日米同盟の実効性に支障が出ていたのは明らかである。
集団的自衛権の解釈変更でようやく実効的な同盟になったといえる。
 
断っておくが、上記の意見は、私見でもなく、安倍政権を支持する意見でもない。
国際政治学上の普遍の解釈である。
 
 
2.相対的な軍事力を保持する
日本が戦争するかもしれない相手は、冷戦時代はソ連であったが、今は中国である。
そして、日本から戦争を仕掛けることがない現状では、中国の動向がカギである。
その中国の軍拡が止まらない以上、日本もある程度の防衛強化を続けざるを得ない。
もし、日中の軍事バランスが決定的に崩れた場合、中国の侵攻が現実味を帯びてくる。
ゆえに、その意図を止めるだけの軍事力が必要となる。
しかし、大幅な軍拡は、経済を圧迫する恐れが強く難しいという現実がある。
ゆえに、この戦術には大きな制約がある。
ゆえに、同盟の進化を優先する政策が必須となるのである。
 
次号では、3項~5項の「経済的要素、国際的組織および各国の政治体制」を重視するリベラリズム戦略を解説する。
 
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┃☆経済と政治(6)政治の闇と政治の力              ┃
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冒頭で述べた豊洲への築地市場移転問題だが、政治が経済の上に来てしまった端的な例である。
築地市場の老朽化による諸問題はたしかに放置できない問題である。
しかし、その解決方法は、あくまでも安全性と経済的効果で論じられるべきであった。
その結論に対して、感情的な反発や利権問題がからんで来るのも必定であるから、それを排除するのが政治の役割である。
しかし、豊洲移転は経済性を無視した政治的思惑で決まってしまった。
 
今になって、移転を決めた当時の都知事、石原慎太郎氏が「私もだまされた」と主張しているが、築地市場の豊洲移転は、都議会自民党と石原慎太郎知事が一緒になって推進してきた目玉プロジェクトである。
化学薬品で汚染されたガス工場の跡地を買い上げてもらうという”漁夫の利”を得た東京ガスを含めて、巨額の利権がからんでいたことは疑うべくもない。
石原氏は、都民に語りたいならば、自己弁護の妙な釈明ではなく、ご自分が知り得た政治の闇を語るべきである。
でなければ、都民は聞く耳を持たないであろう。
 
都議会自民党の幹部らが、地下空洞について、都職員の独断だとし、彼らの虚偽説明を責め立てているが、その言い分を鵜呑みにする都民はほとんどいないであろう。
長い間、都政の重要政策は、ドンと言われる内田氏率いる都議会自民党の意向で進められてきた。
石原氏の後を継いだ猪瀬氏も舛添氏も、それを後追いしてきた。
だからこそ、都から出された法案はほぼ100%議会で承認されるという”異常状態”が続いてきたのである。
 
ところが、小池百合子都知事の誕生という“青天の霹靂”が起きたわけである。
小池知事誕生以来、内田氏率いる都議会自民党は不気味に沈黙を守ってきたが、何もしていなかったわけではない。
移転推進派の業者と一緒に、「小池知事の移転無期限延期は暴挙だ。業者への補償はどうするのか」と知事を追い込む作戦を練っていたわけである。
ところが、今回の盛り土の問題発覚で、世論は『小池知事はよくやった!』と拍手喝采である。
袋小路に追い込まれた都議会自民党は、どうやら「今回の件は、まったく知らされていなかった」と批判の矛先が自分たちに向かうことを回避しつつ、適当な時期を見計らって「移転が完全にストップすれば、業者や自治体への影響は甚大」とし、なんとか移転を実施させようと必死になっている。
 
だが、共産党だけでなく都議会公明党までがこの問題を徹底追求する構えを見せたことは大きい。
公明党に対し、都議会自民党からは「裏切り者」との恨み節も聞かれるが、もはや与党体制はずたずたである。
小池知事は、この問題を来年の都議会選挙まで引っ張るつもりであろう。
都民の怒りを都政と都議会にぶつけていき、来年の選挙につなげていければ自分の展望が開けると読んでいるであろう。
政治の持つ力を正当に使うことが出来るかどうか、小池氏のお手並みを拝見したいと思う。
 
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<編集後記>
民進党の党首選挙、さっぱり盛り上がらないまま蓮舫氏が当選しました。
3人の候補の主張などはほとんど話題にもならず、話題はもっぱら蓮舫氏の二重国籍ばかりというひどさ。
蓮舫氏のこれまでの言動の派手さが、この問題で、一転して弱点に転じている。
 
村田蓮舫(むらたれんほう)という本名を名乗らずに「首相になりたい」と言っていることにも、批判が出ています。
野党第一党の党首としては違和感がありますから、考えたほうが良いと思いますが、果たして・・。
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