2019年7月31日号(経済、経営)

2019.08.02

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2019年7月31日号
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発行日:2019年7月31日(水)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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           2019年7月31日号の目次
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☆日本経済の強さ
◇日韓問題を横目で見ると
★日産自動車の低迷
◇現代貨幣理論は成り立つといえるのか(番外編)
 
http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
日韓の対立は泥沼化の様相ですが、マスコミが言うほどの経済的影響は、まだ出ていません。
たしかに韓国からの観光客は減った印象があります。
ホテルや観光ビジネスの方からはお叱りを受けるでしょうが、正直、このくらいで良いと感じます。
日本は観光立国ではなく技術立国の国です。
そこから離れたビジネスがバブル化する経済は、この国の形をいびつにするように思います。
30年前にイヤというほど味わったはずですが、その記憶も薄れゆく今、今後の経済発展の中身を考えてみるのも良いのではないでしょうか。
 
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┃☆日本経済の強さ                         ┃
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1位:米国21.48兆ドル、2位:中国14.17兆ドル、3位:日本5.22兆ドル、4位:独4.12兆ドル、5位:印2.96兆ドルと書けば、何の順位かは分かりますね。
そうです。
IMF(国際通貨基金)によるGDP(国内総生産)の2019年度予想値です。
米中日の3カ国で世界全体の半分近くを占めていますから、日本は世界経済の中枢の一角を担っていることがよく分かります。
その日本に喧嘩を仕掛けている韓国のGDPは1.70兆ドルで11位です。
しかも韓国は、米国からも中国からも距離を置かれています。
経済オンチの政権を選ぶ愚は、10年前の日本と同じです。
経済あっての政治であることに、国民が気が付かなければ、悲惨な結果が待っているだけです。
 
あまり話題にはなりませんが、日本経済の強さは、以下の数字が物語っています。
2015年末の統計なので少し古い数字ですが、日本の対外資産は948兆円という巨額です。
今や1000兆円の大台に乗っています。
それに対し対外負債は609兆円ですから、対外純資産額は339兆円になります。
つまり、日本は世界一の「金貸し国」なのです。
2位のドイツが261兆円、3位の中国が206兆円ですから、ダントツのトップです。
しかも、中国は今後、大きく減ることが予想されます。
それは、海外から高い金利で借りたカネを低い金利で開発途上国に貸し付けているからです。
しかも、今後は、中国からの借金を返済できなくなる国の急増が予想されます。
そうなると、中国の対外純資産は“あっ”という間に赤字に転落してしまうでしょう。
日本との関係を必死になって修復しようと焦るのは、当然のことなのです。
 
さらに、日本は、対外資産の中でも「外貨準備高」が148兆円と飛び抜けて多いのが特徴です。
このことは、いざとなったら、為替介入するための資金を贅沢に保有していることを意味します。
反対に、体外純資産額がマイナス886兆円と、とんでもない借金漬けの米国が為替介入するには、ドルを大量に発行するしかありません。
あの大統領ならやりかねませんが、インフレを引き起こし、世界経済は大混乱します。
さすがに出来ないでしょう。
ゆえに、日本との関係を損なうわけにはいかないのです。
トランプ大統領の奔放な発言とは裏腹に、米国の幹部が日本に猫なで声な理由は当然ですね。
 
これは、アベノミクスの隠れた功績といえるでしょう。
消費増税などで財政赤字の上昇を抑制した上に、海外への積極的な投資に伴う巨額な利子や配当収入等により経常黒字が常態化しています。
ただし、この投資を支えているのは、企業や家計のマインド委縮による大幅な貯蓄額ですから、手放しで安倍首相の成果というわけにはいきません。
 
今後は、積み上がった資金を海外だけでなく国内投資に向かわせる政策が重要となります。
その意味で、韓国の半導体ビジネスを凋落させる今回の輸出優遇処置の撤廃は理にかなっています。
次世代の半導体は、一桁どころか二桁以上の精度が要求されます。
この製造に欠かせない高高純度のフッ化水素などの素材は、海外よりも、まず国内への投資に使うべきなのです。
トランプ大統領が、今の政策を続ければ、米国経済はインフレに向かうリスクが高まります。
その中で、さらなる技術強国となるチャンスが日本に訪れます。
韓国問題などを大げさに捉えず、世界を見て日本の存在感を高めていくことが政治の要諦です。
 
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┃◇日韓問題を横目で見ると                     ┃
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日韓の貿易戦争(戦争というには少々大げさですが)は、まだ緒戦の状態ですが、韓国の騒ぎようは異常です。
しかし、注意すべきは韓国内の動向より国際的な反応です。
米国の大手テクノロジーニュースである“TechCrunch”は、サブタイトルに「第二次世界大戦の残虐行為がいかにして5Gスマートフォンを遅延させるか」という文言を付けたように、徴用工問題への制裁という韓国寄りの記事を掲載しました。
 
ただし、こうした米国の反応は韓国寄りというよりは、今回の処置によりサムスンやSKハイニックスの韓国二社が過半を占める半導体の供給が滞り、米国企業が影響を受けることを懸念してのことです。
31日、「米国高官が日韓に冷却期間を置くように言った」との記事が出ましたが、やはり同じ主旨からであることは確実です。
 
では、日本はこうした米国の意向を尊重して輸出処置の見直しを止めるべきなのでしょうか。
私は、それは間違いだと思います。
今の日韓関係の悪化は、譲歩ばかりしてきた日本に対し韓国の文政権が呆れるような態度を取り続けた結果、日本国民が「もういい。韓国とは距離を置こうよ」という、怒りより呆れの気持ちが後押しになっています。
故に、米国の顔を立て話し合いのテーブルには付いても、今の処置の撤回は、日本政府としては難しいと思われます。
 
それとは別に、注目するのは、アップルなどの完成品企業の動きです。
こうしたグローバル企業は、米中関係に続いて日韓関係が怪しくなったことで、全面的なサプライチェーンの組み替えにより調達先の多様化に踏み出しています。
元々はソニーが開発した「有機ELディスプレイ」などは、技術を韓国に取られ、今や世界市場では韓国企業の独占状態です。
結果として、価格が高止まりしています。
それに嫌気が指しているアップルは、中国や日本メーカーに資本を入れ、調達の多様化を図っています。
今回の日韓問題が起こる前から、世界のITサプライチェーン再編の動きは始まっていたのです。
 
また、ディスプレイの主役が液晶から有機ELに変わったように、主役は現在の蒸着式有機ELから印刷式に、さらにマイクロLEDへと移行する時期に入っていきます。
こうした技術の根幹は日本が握っているため、韓国メーカーも必死なのです。
しかし、今回のことで、日本メーカーは韓国への投資や技術移転を控えていくでしょう。
今の韓国政府は、自国経済に計り知れない傷を負わせてしまったことになります。
 
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┃★日産自動車の低迷                        ┃
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日産自動車の営業利益が急減しています。
日産は、緊急対策として、全世界で1万2500人の人員削減を行うと発表しました。
ただ、この策はほとんど効果無しになると思われます。
日産の目指す自動車理念が市場とずれているからです。
 
このメルマガで何度も言及しましたが、20代の頃、私は熱烈な日産ファンでした。
スカイライン2000GT、通称「スカG」を新車が出るたびに買い替え、バカにならない金額を投入してきました。
そんな私でしたが、30代半ばで日産から離れました。
建設現場から本社勤務に戻ったのを機に、新車に乗り換えようと日産のディーラーに出向きました。
ちょうど、スカGがフルモデルチェンジをした時だったので、他の車には目が行きませんでした。
新車に試乗した後、営業の方に聞きました。
「ところで、いま契約したら、納車はいつ頃になりますか?」
彼はこう言いました。
「わかりません。半年待っても無理かもしれません」
「エッ」と思った私に追い打ちをかける言葉が続きました。
「なにしろ、人気ですからね・・」
彼の顔には「申し訳ない」という気持ちは微塵もなく、自信たっぷり「待つのが当然だろう」という不遜の表情すら浮かんでいました。
 
その瞬間、あれほど好きで、買い替え続けたスカGへの思いは完全に消えてしまったのです。
この心境の激変には、私自身びっくりしました。
もちろん、私の心理に欠陥があるのかもしれませんが、私のようなユーザーが他にもいたことは確実です。
その時の私の心理は、「もう、ここには二度と来ない」となり、次には「もう日産車は買わない」となってしまったのです。
 
私は、日産のディーラーを出たその足で、近くのトヨタのディーラーに入りました。
もちろん、初めてのお店です。
そこで、スカGの対抗車種に目が止まり、納期を聞きました。
生産台数が極端に少ない車種だったので、日産の営業員と同じような答えかなと思いもしました。
案の定、「うちの手持ちには在庫がなく、メーカーに問い合わせることになります」との返事。
しかし、その後の対応が違っていました。
「うちだけではなく、他のディーラーの在庫状況も問い合わせます。日本中探してでも、お客様のお望みのお車をお届けします。最長で2ヶ月お時間をいただけませんか。その間に必ずお届けします」
 
結果はもうおわかりだと思います。
私は、その場で決断し、1ヶ月ぐらいで「ありました」という返事が届きました。
その後も、今に至るまで、そのディーラーから車を買い続けています。
日産の影は、私の中から完全に消えてしまいました。
 
かつて、私も乗っていたスカイラインの最高車種であるGTRは、今や「スカイライン」という名前も外し、600馬力という化物と化し、価格は1000万円を超えています。
これが日産の答えであるならば、もはや接点はありません。
私のような、かつての日産ファンは、相当にいると思います。
この会社、いったいどこへ行くのでしょうか。
 
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┃◇現代貨幣理論は成り立つといえるのか(番外編)       ┃
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「MMT理論と日本の事情」の続きです。
ほとんどニュースにはなりませんでしたが、4月の参院決算委員会で自民党の西田昌司議員が「日本はすでにMMTに基づいた政策をやっている」と指摘しました。
これに対し、安倍首相は「政府はGDPに対する債務残高を安定的に引き下げることを目指しているわけで、ゆえにMMT理論を実行しているわけではない」と反対の答弁をしました。
麻生財務大臣や日銀の黒田総裁も「MMT理論のように財政赤字や債務残高を考慮しない考えは受け入れられない」と否定しました。
 
しかし、現実は、アベノミクスにより国債残高も財政赤字も増え続けています。
さらに日銀は、株価を安定させる目的でETF(Exchange Traded funds=上場投資信託)による買い入れを続けています。
日経新聞によると、日銀は上場企業23社において筆頭株主となり、上場企業の半数において10位以内の大株主になっているとあります。
これでは、まるで国営企業です。
この状態で国債が暴落したら、官民合わせて日本経済は沈没してしまう危険性があります。
政府の答弁とはうらはらに、日本経済の実態はMMT理論が成立することにかかっていると言えます。
 
財務省は、5年も前だというのに、新紙幣への発行を発表しました。
財務省OBは、新紙幣への切り替えに合わせて財務省は「1%の金融資産課税」を企んでいるのではないかと言っています。
そして、それは国債暴落への備えであると疑っています。
江戸幕府は、何度か行った新貨幣鋳造で差額を生み出し、財政危機をしのいできました。
歴史は繰り返すのでしょうか。
 
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<編集後記>
高校野球の岩手県予選で大船渡高校の佐々木投手が話題になっています。
それも彼自身のことより、彼を決勝戦で投げさせずに破れた監督の決断がです。
TVで、いつもの張本氏がこう批判しました。
「スポーツ選手は楽させちゃダメ」と・・
それに対し、海の向こうからダルビッシュ投手が「このコーナー消して」と張本氏の発言を批判しました。
 
張本氏の発言は、むしろ炎上を狙っての自分自慢でしょう。
プロ選手として大成した自分や、かつての王や長島がそうだったと言いたいのでしょう。
だから、若者が一斉に反発したのだと思います。
 
それより、張本発言の裏の意味分かっていながら発言したダルビッシュ投手の心理のほうに興味があります。
 
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