2020年6月30日号(経済、経営)

2020.07.02


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2020年6月30日号
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発行日:2020年6月30日(火)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2020年6月30日号の目次
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◇これまでの経済、これからの経済(11):アフターコロナという経済地図
◇中国の思惑通りにはいかない(その3)
☆商品開発のおもしろさ(1)
★今後の建設需要(7)
 
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
新型コロナウィルスによる景気低迷が、今後の雇用状況に大きな影響を及ぼすのは当然です。
労働市場が日本よりはるかに自由な米国では、その自由さが仇となり、失業率が急上昇しています。
焦ったトランプ米政権は、一部就労ビザの発給を停止する方針を打ち出しました。
流入する移民を抑えることで国内雇用を守ろうという思惑です。
政権の高官は、この処置で52万5000人分相当の雇用に空きが出ることを強調しています。
このような極端な策が飛び出すことからも分かるように、コロナウィルスがもたらした変革(?)は、これから本格化すると思われます。
今号は、この話題から入ります。
 
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┃◇これまでの経済、これからの経済(11):アフターコロナという経済地図┃
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新型コロナウィルスは、人々の意識を劇的に変えてしまった可能性があります。
当然、多くの企業はその影響をもろに受ける身でありながら、有効な対処法が見つからない状況に置かれています。
「とにかく直近の対策を」と資金確保に着手することは大事ですが、今の事態を新たなチャンスに変えるぐらいのしたたかな経営戦略が必要です。
それには、今回の災禍を拡大させてしまった、これまでの経済のあり方の分析から始める必要があります。
 
多くの識者が指摘していますが、新型コロナウィルスが世界中に一気に広まってしまった根本の要因は経済のグローバリズムにあります。
世界中の消費者がより安価な商品を望み、世界中の企業がより多くの利潤を上げることを望んだ結果、最も安価で製造できる場所と方法を求めて、企業活動は一気にグローバル化しました。
こうした企業側のニーズに応える形で、情報革命が進み、大量輸送手段が世界中に張り巡らされ、大量の人間が世界中を飛び回る時代になりました。
こうしたグローバリズムは、貧富の格差を極大化させ、巨額の富を得るものを多く出現させました。
そうなると、こうした富裕層の財産を集め、ごく短期間に爆発的に増やす投資家が出現します。
投資市場は過熱し、企業株主はより高い利益を企業に求め続けます。
さらに、先進国は、こうした動きを後押しすべく公的資金を金融市場に大量に供給します。
中国のような「遅れた先進国」は、カネの無い開発途上国に目を付け、先進国から大量に手に入れた外貨(大半は債務)で開発途上国を借金漬けにして、外交面を含めて子分にしていきました。
 
かくして、体制の違いはあれど、経済面での国境線は消え、国家単独での役割も消えたと思うくらい、グローバル化が進んだわけです。
安く製造できるのならば、独裁国家であろうと人権侵害国家であろうと構わない。利益を上げることのみが正義だという考えに世界中が染まっていったわけです。
国際政治すら「商売だ!」と言い切るトランプ米国大統領は、その典型です。
 
こうした資本主義のグローバル化が頂点に達した、そのタイミングで新型コロナウィルスの感染拡大が起きたわけです。
考えてみるまでもなく、これだけ大量に人が動く時代でなかったら、感染がここまで一気に拡大することはなかったでしょう。
経済のグローバル化による人の大量移動は必然の結果ですから、コロナウィルスの感染拡大も必然の結果なのです。
この結果、一変して世界は急激な逆回転を始めたわけです。
世界各国は国境を封鎖し、国内においても人の動きを極限まで制限する。
医療器具や医薬品の囲い込み、生活必需品の買い溜め等、人々の心を恐怖が支配します。
 
ただ、ロックダウンのような強制的な制限は1ヶ月少々が限界で、各国とも徐々に制限を緩和し出していますが、当然ながら2次感染が発生し、拡大を続けています。
新型コロナウィルスに効くワクチンが開発され、広く一般に行き渡るには、先進国でも1年以上かかると予想されています。
その間に数回の感染が広がると、専門家は予想しています。
しかも、そうしたワクチンは高価になることが予想され、世界中に行き渡るには数年かかるとも言われています。
さらに、人々の心のなかに生じた恐怖心は、そう簡単には消えず、これまでの経済活動には一定のブレーキがかかったままになる可能性があります。
 
こうした経済を「アフターコロナ」と呼ぶようですが、次回から、こうした経済を自社の追い風に変える経営について論じてみようと思います。
弊社自身が追い風にできるかどうかは別として、出来る限り客観的に論じていきます。
 
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┃◇中国の思惑通りにはいかない(その3)              ┃
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中国が香港に国家保安法を適用することに対し、欧米は批判の度合いを深めています。
たしかに香港の民主主義は風前の灯となることが予想されますが、日本としては慎重な見極めが必要で、まだ動くべきではありません。
政治的な論評は、7月15日号で述べるとして、今号では、この処置が中国の金融に多大な影響が出るだろうということを論じます。
 
前号で、中国が発表している外貨準備高の数字はかなり怪しく、しかも90%は米国債というアキレス腱を抱えていることを述べました。
外貨準備高はピークだった2015年6月から4年半で7000億ドルも減少し、さらに減り続けています。
この減少の主因は資本逃避であり、そのメインルートは香港市場です。
香港に対する国家保安法の適用は、政治的には民主勢力を弾圧するためですが、経済的な事情もそれに劣らず大きいことがうかがえます。
つまり、習近平政権は、香港市場を北京の監視・統制下に置き、カネの脱出口をふさいでしまおうと考えたのです。
そうしないと、中国経済は金詰りで崩壊すると判断したのでしょう。
 
当然、欧米の反発は予想したでしょうが、トランプ政権の主導で欧米が結束して対中制裁を行うことはないと判断したと思われます。
また、親中派の影響が強い安倍政権は同調しないと、日本を侮っている(?)ことも伺えます。
尖閣諸島への領海侵犯の頻度を上げていることは、軍事的な野心とは別に「米国に同調するな」という脅しの意味も大きいと思われます。
こうした中国得意の「離間の計」をどう切り返すか、日本外交の能力が試されているのです。
 
日本国民の多くは、軍事政策と経済政策は一体のものという根本が理解できていません。
国際政治の世界では「金持ちケンカせず」ではなく、その反対で「金持ちはケンカ好き」なのです。
金持ちになった中国との付き合いは、貧乏だった時代の中国との付き合いとは180度変える必要があるのです。
軍事と経済を合体させた硬軟両面の付き合いこそが、独裁国家との付き合い方なのです。
 
次回は、中国独特の「社会主義市場経済」なるものを解説します。
 
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┃☆商品開発のおもしろさ(1)                   ┃
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私は、小さい頃から道具や模型を作ることが大好きでした。
陸軍の技術将校だった父の血筋かもしれません。
小学生の頃、自分の手で作ったロケットを河原で打ち上げたことがあります。
白煙を引きながら天高く上がっていった手製のロケットの姿は、今でも目に焼き付いています。
 
貧しかった家計では、玩具は自分で作るしかありませんでした。
でも当時は規制も緩く、危険な材料も手に入れることができました。
当時、子どもたちの間で「2B弾」と呼ばれていた花火(というより爆竹?)が流行っていました。
これを知っている方は団塊の世代以上の方でしょうね。
2B弾はマッチを擦るように花火の先を擦って点火して投げ付けると、派手な音を立てて爆発します。
さすがに学校からは「危険だ」と禁止されていましたが、悪ガキ共の必需品でした。
野球のボールを返してくれない家の庭に投げ込むなど、ロクな使い方ではありませんでしたが・・
 
この2B弾には、本物の火薬である「黒色火薬」が使われていました。
(当然、今では販売禁止になっています)
もちろん、その量はごく僅かでしたが、集めれば立派にロケットの燃料になりました。
私は、何本もの2B弾を慎重にバラして黒色火薬を取り出し、燃料に加工していきました。
こうしたことをしていた子は他にもいましたが、燃料を作る過程で爆発し、指を飛ばしてしまう事故も起きていました。
当然、親にも内緒で、一人でこっそり作っていました。
 
ロケットの本体は強度とバランスが大事です。
それまで、アルコールなどを使って、小さなロケットや飛行機を飛ばしたりしていましたので、そうした経験がものを言いました。
さらに、商売をしていた実家には、いろいろな道具がありました。
それらを使ってロケットの筐体を作り上げました。
 
仲の良かった友人2人を誘って、大きな川の河原で打ち上げました。
どのくらいまで上がったかは定かではありませんが、目視では追えないくらい高く上がっていきました。
現代ではとんでもないことですが、貧しい時代の輝ける思い出です。
 
このロケットを契機に、自分では作れっこない高性能兵器に強い興味が湧き、本を読み漁りました。
その過程で、戦争のことにも強い関心を持ち、古今東西の戦史本も片っ端から読みました。
勿論、戦争は良くないことですが、そうした観念論ではなく、純粋に科学的、技術的興味から読んでいたのです。
数年前、ゼロ戦の設計者、堀越二郎を主人公にしたアニメを、あの宮崎駿が作成し賛否をまきおこしました。
きっと、宮崎駿の心にあったのは、少年時代の私と同じ思いだったと思うのです。
平和を願いながら、人の命を奪う目的で作られた戦闘機や軍艦を美しいと思う、相矛盾する気持ちが行き交ったはずだと思います。
 
兵器は過酷な戦場から、最高性能が要求される商品です。
ゆえに見栄えを意識していないはずなのに、究極の機能を追求した完成形は「美しい」のです。
 
善悪を抜きにして考えると、我々の開発する商品とまったく同じ要素なのだと思うのです。
市場が違うだけなのです。
次回から、商品開発についての事例を紹介しながら、市場から必要とされる要素を考えていきたいと思います。
 
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┃★今後の建設需要(7)                      ┃
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少し休止していた本シリーズですが、経済環境の激変がもたらす建設市場への影響を考え、再開することにしました。
 
新型コロナウィルス禍による建設プロジェクトの停止は予想されたほどではありませんでしたが、長期契約を結ぶ建設工事の特質からは当然のことといえます。
問題は今後の需要ですが、地方から暗雲が立ち上り始める可能性は高いです。
東京都のように財政に比較的余裕のある自治体は、国の施策とは別に、独自のコロナウィルス対策で急場をしのぎましたが、公共事業の執行を一時停止した自治体も出てきています。
今後、第2次、第3次の感染拡大が来ると予想される中で、コロナ対策を優先する予算配分のあおりを公共事業が被ることが考えられます。
 
しかし、その一方で、自然災害の深刻化も懸念され、各自治体は予算組みに苦悩しています。
国も天文学的な金額に膨らんだコロナ補助金の回収に増税を検討せざるを得ず、地方交付金を増額する余裕はないと思われます。
今年度の公共事業は、補正予算と合わせ総額で10兆円を確保しましたが、地方の中小建設会社にとり国の直轄工事は、JV以外での参画が難しい案件です。
中小会社が主戦場とする地方自治体発注工事の予算配分がどうなるかは、不透明な状態です。
 
民間工事に目を向けると、新型コロナウィルスの影響はまだ少ないようですが、建設市場の遅延性によるもので、今後も大丈夫といえる状況ではありません。
経済の回復が速やかに進めば民間発注者の意欲が落ちることはないと思われますが、長引くようであれば、投資マインドの抑制が出てくるでしょう。
怖いのは、そうしたマインドが連鎖反応を呼び不況が深刻化することです。
不況は心理的な面から拡大することは、過去の事例から嫌というほど学んでいます。
さすがに政府も学んでいて、日銀による大量の資金供給や企業に対する補助金等の政策も充実してきています。
批判はあれど、これらの政策の効果は確実にあり、広く国民は恩恵を受けています。
 
しかし、建設業界は、こうした政策に乗るだけで、社会インフラ整備という産業が負っている使命感という面では考えが浅かったといえます。
「そんなことはない」と反論される向きもあるかと思いますが、自分たちの感じ方が重要なのではなく、国民・市民の感じ方のほうが重要なのです。
建設会社に勤務していた時代を思い返してみると、社会的意義に対する思いが強かったとは言い切れない自分がいます。
次号から、そうした社会や個人、および発注企業側の観点に立った建設市場の近未来を解説していきたいと思っています。
 
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<編集後記>
世界的に有名なカナダのサーカス団が破産という記事が出ました。
日本でも、音楽などのイベント関連業界は、どうしようもない事態に追い込まれています。
展示会の設営業者など、その裾野は結構広いので、連鎖的な倒産も心配されます。
こうした市場は「不要不急」なニーズと扱われるので、行政の支援策も後回しになります。
しかし、音楽やサーカスなどの産業は、才能と地道な修練の積み重ねによる人材産業です。
オンラインによるイベント再開の動きも出ていますが、こうした産業はリアルであることに最大の価値がある産業です。
リアルな再開の道を開くしか活路はないのです。
別の形での策が望まれます。
 
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