ウクライナ侵攻が教えていること(その1)

2022.06.01

ロシアによるウクライナ侵攻は「明日は我が身」という冷徹な現実を日本国民に突き付けています。
その思いから、ためらいがありましたが、このシリーズを書くことにしました。
 
まず、以下の3つの原則が浮かんできました。
第一、他国侵略を目論む独裁国家は、平和的融和策や経済制裁では止められない
第二、侵略に立ち向かうには、国民の戦い抜く意思と有効な軍事力の保持が必須
第三、有事に即応できる軍事同盟が必要
 
この原則の中に国連を入れられないことが、今の世界の大きな課題です。
国連は、誰もが知るように、米英仏ソ中の5カ国を常任理事国として1945年10月に発足しました。
常任理事国には、世界の警察官として世界平和を守る義務を負って特権が与えられました。
この5ヶ国だけが安保理での拒否権を持ち、核兵器を持つことができるのは警察官だからです。
核に関して、それ以外の国は丸腰とされたわけですから、5カ国にはそれ以外の国を守る義務を負っているわけです。
しかし、インド、パキスタン、北朝鮮は公然と核武装し、公言はしていませんがイスラエルも核を持っていると言われています。
しかし国連は、北朝鮮だけに制裁を課しただけで、他は知らん顔です。
 
そうこうしているうちに、米国は「世界の警察官を辞める」と言い出しました。
中国は、自分勝手に縄張りを広げるヤクザになってしまったし、英国とフランスは、交番から動かない怠け者警官になってしまいました。
ロシアに至っては、とうとう警察官が押し込み強盗になってしまったというわけです。
グテーレス事務総長がプーチンに会いましたが、てんで相手にされませんでした。
そもそも「事務総長」という役職に、どんな権限があるというんでしょうか。
「ただの事務屋さん?」と揶揄されそうです。
 
その国連重視を志向してきた日本外交は完全に行き詰まったといえます。
ロシア、中国、北朝鮮という核を持つ独裁国家に囲まれ、かつ領海領空侵犯が日常化している現状を考えれば、防衛戦略の練り直しは待った無しです。
 
本メルマガで何度も言及していますが、中国が尖閣に軍事侵攻しないのは、外交軋轢や経済制裁を恐れているからではありません。
在日米軍と自衛隊が一体になった軍事力に勝てないからです。
ロシアが「北海道はロシアのものだ」と脅しても、侵攻する可能性が薄いのも同じ理由です。
 
ただし、自衛隊には大きなアキレス腱があります。
それは、武器弾薬を補充する兵站の脆弱性です。
憲法違反との指摘を恐れ、弾薬や兵器部品の備蓄は心細いのが現実です。
付き合いのある元将官が、そのことを嘆いていました。
「1ヶ月も戦えるかどうか・・」
しかし、ウクライナ侵攻の状況を見れば分かるように、最低1年分は必要です。
こうした状態の分析と打開策を議論しない国会には首をひねるのみです。