韓国の中国へのすり寄りは得か、損か (1)

2014.10.21

日本への対抗心から韓国が中国にすり寄っている。
この問題を、感情論ではなく、中韓両国にとっての損得で考えてみたい。

中韓両国の経済は、共通の大きな構造問題を抱えている。
それは、富の分配の仕組みが著しく歪んでいることである。

資本主義であれ共産主義であれ、国家の富は国民が作り出す。
これは普遍の論理である。
問題はこの富の分配方法にある。
一番単純な方法が「共産主義」である。
全国民に一律に分配する方式だからである。
これに対し、資本主義は、資本家と労働者で富を分配し、さらに労働者もその役割や貢献度に応じて分配額は異なっていく。
かなり、分配額に差がつくのは当然である。

中国は共産主義を採用している国家である。
ならば、理想どおりにはいかないとしても、分配額に大きな差はつかないはずである。
しかし、現実は真逆である。
資本主義を採用している日本の10倍以上の格差がついているのである。
中国の共産主義が建前に過ぎず、実態は、共産党幹部やそれにつながる「赤い貴族」が富を独占する「独裁主義国家」であることを示している。

中国は、このように著しい不平等国家なのだが、高度成長を続けることで、分配するパイそのものが拡大し、この実態が国民に隠されてきた。
ところが、近年、経済成長が鈍化してきたことで、パイの拡大が止まった。
そうなって初めて、共産党幹部など一部の層とそれ以外の一般庶民が受け取る分配額に大きな格差があることが見えてきた。
しかも、情報・通信の発達で、そのことを多くの国民が目で見ることができるようになった。
国民の間から不満が出て、民主化に対する要求が高まるのは当然である。

一方、韓国は、ごく一部の財閥系の大手輸出企業を優遇し、強化することで、経済全体のパイを増やしてきた。
リーマン・ショック以降のウォン安は、輸出に頼る韓国にとって大きな追い風になり、富のパイ全体が膨らんだ。
しかし、アベノミクスによる円安・ウォン高で、サムスンや現代などの財閥系輸出企業の製品群の競争力が低下。
結果、韓国の経済成長は鈍化し、国民が受け取るパイ全体が頭打ちとなった。
そうなると、財閥系企業と一般の中小企業、また、財閥系企業で働く人と一般の中小企業で働く人との格差がより明確になった。
多くの国民から不満が出るのは、当然である。

このように、中韓両国は、政治形態が違うのに、富の分配が極端に偏っている、似たもの国家なのである。
この両国が接近するとはどういうことなのか、続きは次号で。