戦争と平和(その11):在日米軍の存在

2015.09.16

読者の方々は、前章を読んで、台湾が中国に奪取されるかも・・と思ったかもしれない。
台湾奪取は、「中国の夢」の序章ゆえに、可能性はある。
しかし、中国にとって非常に厄介な存在がある。
そう。横須賀を母港とする米第7艦隊の存在である。
主力の原子力空母ジョージ・ワシントンを中心とする空母打撃群の力は想像を絶するレベルで、中国軍がそのレベルに達することは、今世紀前半ではとても無理と思われる。

つまり、米国が台湾防衛政策を堅持する限り、近未来を含めて中国が台湾を武力侵攻することは無謀と言える。
要するに、習近平政権が常識思考を備えていれば、米中戦争は起きないということである。

ところで、第七艦隊の戦力を調べていて、気づいたことがある。
空母ジョージ・ワシントンの戦力である。
約70機もの艦載機を搭載できる10万トン超の大型空母だが、主力は戦闘攻撃機F/A-18E/Fの48機である。
その他の艦載機を含めて、搭載しているのは、ほぼ全てが攻撃用の機種である。
では、空母本体の防空はどうするのか。
もちろん、イージス艦などの対空戦闘能力を備えた護衛艦隊に防護されているが、制空権の確保も必須である。
それは、日本の航空自衛隊のF-15が担うことになっている。
だから、ジョージ・ワシントンは迎撃戦闘機を積んでいないのである。
日本列島という不沈空母上に200機のF-15が配備されているという図式である。

コンピュータ・メーカーでSEをしていた昔、潜水艦システムの開発を担当していた。
そこで知った事実にショックを受けたことがある。
海上自衛隊の潜水艦の一番の任務は、第7艦隊の空母を守る最外縁の防衛だという事実である。
結局、空の防衛でも同じことだったわけである。

でも、それは当たり前のことと言える。
軍事同盟である日米安保条約を結んでいる両国である。
実質的には、昔から集団的自衛権は確立していたと考えるのが自然である。
米国の保守派が主張する「日本は安保条約にただ乗りしている」わけではないのである。

そのことを知れば、安保法案をめぐる騒動がバカバカしく思えてくる。
国民は、もっと冷徹な目で、感情抜きで事実のみを見ていくべきである。
日米の集団的自衛権の存在が、中国に台湾侵攻を思いとどまらせ、戦争を防いでいるという事実をである。