抑止力という名の軍事力(3)

2020.08.03


前号で「イージス・アシュアの軍事的効果は疑問」と書いたすぐ後に河野防衛大臣が計画の停止を発表しました。
私が事前に知っていたわけではありませんが、同様の論理に達したものと思われます。
ミサイル兵器の発達の速度を考えると、イージス・アシュアが、かつての戦艦大和の運命を辿ってしまう恐れが大きいということです。
 
ただ、イージス艦の増強案については批判的な記事も出ています。
イージス艦を常時海上に置いておくわけにはいかず、いつ飛来するかも分からない弾道ミサイル防衛には不向きということです。
それも道理で、どうしても、受け身の防衛は不利です。
そう考えると、現在の自衛隊の力では弾道ミサイルは防ぎきれないという現実に至り、敵基地攻撃論という過激な案が浮上してきます。
議論はおおいに結構ですが、現実的かというと、これも不可でしょう。
 
ここで改めて日本を取り巻く現実を認識する必要があります。
日本にとっての真の脅威は北朝鮮ではなく中国だという現実をです。
米国のシンクタンクなどから、中国による尖閣諸島の奪取シナリオなどが度々出てきますが、これは日本というより米国政府に対する警告の様相が濃いものです。
つまり、尖閣奪取計画に対して日米安保条約を発動することを中国に告げよという警告です。
同時に、日本に対しても防衛力をもっと強化せよという提言でもあります。
 
私は、中国政府は、まだ尖閣を武力奪取する自信が付いていないと見ています。
ただし、人民解放軍の強硬派は、そうではありません。
彼らは、尖閣奪取以上に、日本と戦争して勝ちたがっています。
そうした非常に危険な勢力が中国軍の中で徐々に存在感を増しています。
 
前号で書いたように、日本の歴代政権は、憲法9条を上手に利用して効率のよい防衛力を整備してきました。
しかし、電子誘導兵器の飛躍的な発達によって、防衛に対する考えを根本から変えなくてはならない時代になりました。
言うまでもなく、人間が主役の戦争からミサイルが主役の戦争になってきているのです。
「第一列島線の攻防」のシリーズで述べたように、日本は南西諸島にミサイル防衛網を整備するとともに、イージス艦や潜水艦の増強、F35の早期配備などを前倒しで進め、艦艇には高速巡航ミサイルを、戦闘機には極超音速ミサイルの搭載を急ぐべきです。
かつ、憲法改正を行うことが、中国の侵略意図を思いとどまらせる最大の抑止力になります。
もちろん、野党や平和団体などは「戦争になる」と反対するでしょうが、そうした姿勢が中国に尖閣奪取を決意させることにつながるのです。
 
習近平主席の国賓来日がほぼ消えた現在、中国は日本に対し容赦しない態度に出てくるでしょう。
現政権が続く限り、戦争の危険は続くと考えるべきです。
しかし、決して中国の挑発に乗らないことも大事です。
次回は、そのことについて述べたいと思います。