戦争を起こさせない二つの仕組み(1)

2016.09.02

中国の外交姿勢が強硬一辺倒になり、外交上の言葉が、まるで北朝鮮かと思うくらいに、非常に汚くなっている。
尖閣諸島沖の挑発行動も限度を越えていて、戦争の前兆のように感じられるほど危険な水準になっている。
日本は、偶発を装った軍事衝突もあり得ると覚悟して、効果的な対処方法を練っておく必要がある。
 
しかし、日本から「戦争だ!」と騒ぐことは得策ではない。
日常や経営の問題でも同じだが、頭に血が上っているときほど、一歩引いて大きな視点で問題を見ることが重要である。
まして国家間の問題である。
実際の戦争を引き起こさずに、いかにして中国の野望を封じ込めていくか、日本には忍耐としたたかな戦略構築力が問われているということである。
 
国際政治学の世界では、戦争を回避する方策は以下の2つの戦略に集約されている。
ひとつは「軍事力の均衡」を重視するリアリズム戦略である。
そして、もうひとつは「経済的要素や、国際的組織および各国の政治体制」を重視するリベラリズム戦略である。
もちろん、どちらか一方の戦略を採る選択問題ではなく、2つの戦略をどう組み合わせるかのミックス問題である。
 
そのための採るべき戦術として、国際政治学では以下の5つを挙げている。
1.有効な同盟関係を結ぶ
2.相対的な軍事力を保持する
3.民主主義の程度を増す
4.経済的依存関係を強める
5.国際的組織への加入
 
1と2がリアリズム戦略、3~5がリベラリズム戦略と言えるであろう。
 
ところで、某分析機関が、この5つを数値分析している。
その計算根拠は不明だが、感覚的には「なるほど」と思う数字である。
戦争のリスクを減少させる効果の割合は、
1.有効な同盟関係を結ぶことで40%
2.相対的な軍事力が一定割合(標準偏差分、以下同じ)増すことで36%
3.民主主義の程度が一定割合増すことで33%
4.経済的依存関係が一定割合増すことで24%
5.国際的組織への加入が一定割合増すことで24%
 
次号で、この5つの戦術において、日本が採るべき具体策を論じたいと思う。