戦争と平和(その7):中国の戦争観

2015.07.15

今の中国は、戦争というものをどのように捉えているのであろうか。
今年になって、名前は出なかったが、中国人民解放軍の複数の中堅将校たちが語った言葉がある。

「人民解放軍は1979年の中越戦争以降、戦争を経験していない。『戦争しない軍隊は腐る』とは習近平主席の言葉だが、まさにその通りで、われわれ中堅若手は戦争を求めているのだ」

「3月にミャンマーの爆弾が誤って国境を越え、雲南省に落ちて中国人5人が死亡する事件が起きたが、われわれは上層部に、ミャンマーへの宣戦布告を建議したほどだ。北朝鮮の金正恩政権も、物騒な核ミサイル実験を止めないのであれば、解放軍が介入して政権を転覆させるべきだと具申している」

「もしも習近平主席が対外戦争を躊躇するならば、われわれは『戦争できる指導者』に代わってもらうまでだ」

仲間内の議論となると、このような盛り上がりを見せるのは、どこでも同じである。
最近の自民党の勉強会での発言しかり、反戦集会や反原発集会での発言しかりである。

だから、先の人民解放軍の将校たちの発言も割り引いて考える必要はある。
だが、人民解放軍が日本に対し戦争を仕掛けたい誘惑に惹かれているのは事実である。
彼らが一番戦争を仕掛けたいと願っている相手が日本であることを、日本は軽視できないのである。

いま中国は、経済力を背景に、軍事力の近代化を急ピッチで進めている。
だが、日本と戦争する場合、やっかいなのは日本を拠点とする米軍の存在である。
中国は、極東米軍と中国軍の戦力比を10:1とみなしている。
つまり、中国軍の実力は、第7艦隊を主力とする極東米軍の1/10しかないという認識である。
しかし、中国近海での戦闘となれば、沿岸に配備した地対艦ミサイル網があるため、戦力比は3:1に縮まると見ている。
それでも、まだ差がある。
米軍とは戦えないということである。
しかし、日本との戦力比は互角であり、中国近海では、中国が上回っているとみている。
そのリポートでは、問題の尖閣近海での戦力比を論じていないが、若干日本が優位と見ているようである。
だが、今のピッチで中国の軍拡が進めば、確実に日本を凌駕する日が来ると見ているようである。

そこに浮上したのが、日本の集団的自衛権の行使問題である。
今回の安保法案が通り、集団的自衛権の行使が明確になると、日中での軍事衝突に米軍が参戦する可能性が高くなる。
中国の海洋戦略に大きな狂いが生ずることは確実である。
これが、今の中国の戦争観なのである。