戦争と平和(その14):中国と台湾

2015.12.15

南シナ海や尖閣諸島のニュースが極端に減っていますが、中国が活動を停止しているわけではありません。
活動が常態化してしまっているため、マスコミが書くことに飽きてしまったというのが正しい見方でしょう。
前号で解説した「戦略辺疆(へんきょう)」の思想、そして「国境は国力に応じて変化するもの」という考え方は何一つ変わっていません。
日本は警戒を緩める訳にはいかないのです。

その習近平政権にとっての目下の最大の関心事は、年明けの2016年1月16日に行われる台湾の総統選挙です。
世論調査では、民主進歩党(民進党)の蔡英文氏が48.6%の支持で、与党・国民党の朱立倫氏の支持率21.4%を大きく凌駕しています。
蔡英文氏が女性初の総統に就任することは確実ですが、その言動に中国が相当に神経を尖らせています。

蔡氏の支持者には若者が多いのですが、その若者の間では、「自分は中国人ではない。台湾人だ」とする意見が急速に増えています。
そして、「一つの中国論」を支持する割合は、わずか3%ぐらいしかいないというのです。
「台湾は中国ではない。一つの独立国家なのだ」という意識の高まりです。
このことに、中国政府が相当に神経を尖らせていることは誰もがわかることです。

では、選挙後、誕生すると思われる民進党政権に対し、中国はどのような手を打ってくるでしょうか。
公式には、対話の促進などの穏やかな策を採ってくるでしょうが、軍事的圧力を強化するものと思われます。
新政権が「台湾の独立」に言及するような事態になれば、台湾海峡に向けてミサイルを打ち込むぐらいのことはしかねない状態です。

もちろん、台湾には中国に抗するだけの軍事力はありません。
その場合、カギを握るのは米国第7艦隊ということになります。
米国は、決して台湾を中国に渡すことはしないでしょうから、中国も実力行使はできないということになります。
ですが、恫喝はするでしょう。
その程度が問題になります。

そして、日本はどうすべきなのかということが問題ですね。
安保法案が通ったことで、米中軍事衝突となれば、日本は米国に加担することになります。
しかし、純粋に軍事戦略を考えた場合、実戦への参加はあり得ません。
基地提供と後方支援が限界です。
実際にそうならないとしても、中国に対しては、その可能性を示し、だから軍事的挑発を思いとどまらせる外交戦略は必要だと思います。
この可能性があるから、中国にとっては、日本の安保法案は目の上のたんこぶなのです。

戦争は回避すべきですが、戦争の可能性を無視し、備えを怠ることは間違いです。
平和を唱える方々には、そのことを考えていただきたいと思うのです。