日本流の中国との付き合い方を(その3)

2019.02.01

ファーウェイは、カナダで逮捕された副会長の父親の任正非(レン・ツェンフェイ)CEO(最高経営責任者)が1987年に創業した会社である。
任正非氏は、わずか30年で社員数18万人の巨大企業を築き上げたわけだが、西側諸国の成功者たちと同列に見るわけにはいかない。
任氏が人民解放軍の出身ということは広く知られているが、今も軍との関係は密接である。
つまり、中国政府の影の企業といってよい存在である。
習近平主席が進めている、世界一の製造強国を目指す産業政策「中国製造2025」の核心企業のひとつということからも分かるであろう。
 
近年の中国軍の近代化は日本や欧米では考えられない速さで進行している。
中国が2040年に米国を追い落とすと豪語するのも本当に実現しそうな勢いである。
「中国製造2025」と中国軍の近代化が一体のものであり、欧米や日本の先端技術の盗用がそこで行われているとしたら、それも当然の話である。
 
ゆえに、トランプ政権が「ファーウェイつぶし」を本格化させ、欧米や日本が追随に動けば、「中国製造2025」の実現は難しくなる。
中国共産党の機関紙である人民日報系の環球時報は、英語版の社説で以下のような猛反発を示した。
「米国は(次世代通信規格)5Gでのファーウェイの前進を阻止できないため、卑劣な手段に訴えている」。
社説の中身を読むと、中国が相当に焦っていることがよく分かる。
政権内部には「中国製造2025の宣言は早すぎた」とする声も強くなっていると聞く。
「高くなりすぎた鼻は折れる」は時代を超えた教訓である。
 
トランプ大統領自身は、対中巨額赤字の削減や大型商談などによる目先の株価浮揚や支持率向上ばかりに関心がいっているが、国防総省や商務省の考えは違う。
トランプ大統領とは比べ物にならないくらいの危機感を持って、ハイテク分野で米国を猛追する中国を徹底的に封印する動きを先鋭化させている。
米国の戦略国際問題研究所の研究者は「ハイテク覇権争いに『一時休戦』はない」と言い切っている。
この問題が単なる貿易戦争では終わらないことを示す言葉である。
 
では、こうした中国と日本はどう付き合っていくべきか。
次号では、中国の内部での動きと日本との関係について述べたいと思う。