企業にとっての借入金(3)

2023.08.21

どんな企業でも、商品開発が成功して売上への貢献ができれば、当然、経営の安定度は上がります。
しかし、商品開発の成功率は低く、通常の運転資金とは別の資金が必要となります。
そのため、意思はあっても開発に挑む中小企業は少数派です。
米国のように失敗しても何度でも挑戦できる土壌がある国と違い、日本では、どうしても危険な冒険になってしまいます。
資本市場が投機の場から成長できず、未成熟なままであることが大きな要因です。
 
弊社の現在の主力商品である「建設業向けの基幹業務システム」も、何度かの開発挑戦と失敗を乗り越えた末の唯一の成功です。
当然、それまでに失敗した開発に投じた資金の回収はできませんし、新たな開発資金の調達との二重負担となってきました。
受託開発の利益を蓄積してきた資金は1年もせずに消え、借入金で継続した商品開発も、完成ができないまま、資金が底を尽きました。
 
それでも、開発を諦めれば会社は終わるので、さらなる資金調達に奔走しました。
取引していた銀行からは「もう無理です」と言われたので、新興バンクやノンバンクとの交渉に臨みました。
金利はかなり高くなりましたが、ある程度の調達はできました。
しかし、それでも完成は遅れました。
仕様が明確な受託開発と違い、商品開発は試行錯誤の連続になります。
時間も資金も計画は狂いっぱなしです。
 
ついには、闇金にも行きました。
そこは、コミックや映画で“おなじみ”の「闇金のウシジマくん」の世界でした。
当時の自分の気持ちは相当に追い込まれていましたが、彼らの言動を観察するだけの余裕は残っていました。
いかなる場合でも、追い込まれた時に必要なのは、この「観察する余裕」です。
無理にでも心理の片隅に余裕を作るのです。
具体的には、相手の表情や言動を観察することが出来ているかどうかで、自分の心理の中に余裕があるかどうかを判断するのです。
この観察が出来ていないと感じたら、交渉を打ち切ることが肝心です。
何軒かの店では、こうして店を出ました。
その時は、「ふん、他にもあるさ」とうそぶくことで自分を保っていました。
 
そうして得た経験から言えることがあります。
まず、彼らは「嘘ばかり言います」
例えば、「債務者のデータを管理する裏のデータバンクがあり、自分たちはアクセスできる」とか言って、どこかに電話を掛けたり、衝立の向こうのパソコンでアクセスしたりします。
でも、そんなデータバンクは無いし、アクションもポーズだけです。
ただし、仲間の同業者たちとはある程度の情報交換はしていますから、全部ウソということでもありません。
それでも、自分の胸に手を当てて冷静に考えてみれば、彼らの嘘は見抜けます。
 
彼らは、必ず引っ掛けの問いを仕掛けてきます。
例えば「他に隠している借入があるね」とかの誘導尋問です。
それに対し、あったとしても、「無い」と言い切ることが交渉のミソです。
 
それと、チラシや広告に書いてある金利は、ぜんぶウソです。
それはそうです。
「といち(10日で利子1割)」なんていう違法をチラシには書けませんから。
 
借金をする時の鉄則があります。
「自社の粗利%以上の金利で借りたら、返せなくなる」という原則です。
でも、「赤字で借金するんだから、粗利うんぬんなんて言ってられないだろ」と言われそうですね。
それはそうなんですが、売上ゼロでもない限り、短期で赤字から黒字にする方法は必ずあります。
枝葉のことを切り捨て、会社を極限までスリムにする策を考えれば、黒字にできるはずです。
もし、見つからなかったら・・
その時は会社を整理するしかありません。スッパリと諦めましょう。
 
ということで、この話、次回も続けます。