価格競争に勝てる『建設生産システム』(2)公共工事発注における経済技術

2013.02.28

前回、「生産システムで価格競争に勝つ」要素を2つ述べました。
(1)「社会情勢の変化」
産業革命時における農村から都市への大量の農民流入を例として挙げました。

(2)「劇的な技術革新」
産業革命時における「蒸気力の発見」は、その顕著な例です。

この2つが同時に起きて、しかも噛み合わないと「革命」は起きません。
これは、世界全体、地域、国家、企業、全てに共通する原理です。
この2つの要素があれば、(暴力、非暴力を問わず)革命は始動しますが、噛み合わせが不完全であると、革命も不完全に終わってしまいます。
共産主義による革命がみな失敗したのは、この噛み合わせの不全さにあります。

2月26日、中小企業庁は主な地方自治体に対し、以下の要請を通知しました。
「補正予算執行に当たって、中小企業の受注機会増大に努めることを求める」
今回は、この通知を俎上(そじょう)に載せますが、通知の是非を論じたいわけではありません。
上記2つの要素の噛み合わせという観点から、この通知が中小企業に革命をもたらすものかどうかを検証してみようというのです。

「答は分かっている」ですか。
まあ、そう言わずに検証にお付き合いください。

「社会情勢の変化」という側面から見ると、安倍政権の打ち出したアベノミクスが短期的には経済を刺激し、デフレ脱却への転換ができるかもしれません。
「変化しつつある」というところでしょうか。
ややズレているものの、情勢の変化を捉えるという観点からは、本要請には一定の評価をあげたいです。

次に、この中小企業庁の要請が「劇的な技術革新」に当たるかどうかの検証をしてみましょう。
官僚の「政策技術」という技術面から考えて、本通達が革新的かどうかを評価します。
文面は過去に散々使われてきたフレーズと同じなので、目新しさはゼロです。
ゆえに「革新的」という評価は無理ですし、まして「劇的」とはお世辞にも言えませんね。

しつこいようですが、上記の評価は、中小企業庁の通達に対する評価ではありません。
政策技術として論理が通っているかどうかの検証です。

この要請文の裏に、三国志の諸葛孔明ばりの秘策でも隠されているのであれば合格点なのですが、どうでしょうか。
それでは、第一の要素「社会情勢の変化=アベノミクス」と噛み合わせれば革命的効果が出る秘策を考えてみましょう。
全般的にみて、景気上昇の気運で、中小建設企業の受注高は増える傾向にあります。
しかし、ほとんどの会社が、「でも、利益が出ないんですよ」と嘆きます。

と言うことは、「利益が出るような秘策」が「劇的な技術革新」ということです。
その秘策と「市場の変化」との組合せで発注行政が動いたら、それこそ公共工事革命が起きます。
この「利益が出るような秘策」の中で一番単純な策は、予定価格の上限拘束性の撤廃です。
間違いなくダンピングはほとんどなくなり、誰が受注してもある程度の利益が残せるでしょう。

はっきりと言います。
今必要な公共工事改革とは「三方良し」ではありません。
上記の組合せ施策の実行です。

でも、財務省が絶対反対ですし、国交省や中小企業庁にその反対を押し切る力はありません。
麻生財務大臣は、積極財政論者と聞きます。
麻生さん、なんとかなりませんかね・・

ここまでの解説で、「社会情勢の変化」と「劇的な技術革新」との噛み合わせについては理解されましたか?
次に、「劇的な技術革新」の中身についての議論をしましょうか。
おっと紙面が尽きたようで、続きは次回ということで。