日本における設計業務の闇(2)

2014.03.03

前号で、日本では設計業務が施工の中に埋没し、その価値を下げた話をした。
現代では、多少は改善されてきているが、その歩みはカメのように“のろい”。
かって、ハウスメーカーの営業員の中には、「ウチは設計料はタダです」と顧客勧誘していた者もいた。
今でもいるという話は耳にする。
彼らが悪いというより、そう言わせる風土が日本には色濃く残っている。

何度も述べたが、私が経営する会社のスタートは設計事務所であった。
しかし、覚悟していたとはいえ、思い出すのも辛いくらい悲惨な毎日であった。
「お前たちの力量がなかったんだろう」と言われれば、その通りである。
しかし、それでも、時給に換算するとコンビニのバイト店員にも及ばない報酬では、やはり悲惨と言うしかない。
ただし、愚痴を言うつもりはない。
この低い報酬こそが、世間が建築設計に対して認めていた価値だったのである。
だから、それを補う意味で、多くの設計事務所が、施工者に「ただ」で設計させてきたのである。
施工落札に便宜を図ることをエサにしてである。
そんなことは、建設会社に勤務していた当時から分かりきっていた。
一方の当事者だったのだから。

それでも、我々は、全てを自力で設計してきた。
そして、設計の道で生きていくことを断念し、別の事業へ転換した。
しかし、設計業務の価値向上を諦めたわけではない。
別の道から改革を成し遂げようと思ったのである。
下流でいくら叫んでも、必死の努力をしても無力であることを悟ったのである。
新たな道とは、上流に遡ることであった。
この話は次号に続きます。