小さな会社の大きな手(11):戦略投資の失敗(その2)

2016.03.17

弊社の戦略投資の失敗の話を続けます。
このような話は、自分の恥をさらすことで正直つらいのですが、失敗を見つめ直すことは大事なことです。
なので、「自分のため」と思って書いています。

さて、最初の商品である「CADソフト」の開発投資に失敗した弊社は、いったん商品開発を断念しました。
ただ、商品開発そのものを諦めたわけではありません。
前号で書いた次のフレーズを思い起こしてください。

「商品としての製品を世に出すのは、圧倒的に優れた『何か』が無ければダメ。性能か、価格か、速さか・・の『何か』が必要」とのフレーズです。
その『何か』が見つかるまで、もっと財力をつけようと思ったのです。

まず、パッケージソフトウェアを汎用商品として開発するのに、どのくらいの投資資金が必要かを調べました。
その結果、1本のパッケージ商品を開発するには、およそ1億円は必要との答えが出ました。
それから考えると、最初の商品の開発費用は明らかに不足でした。
はっきりとコスト計算をしていませんでしたが、たぶん2000万円ぐらいだったと思います。
というより、そのくらいの資金しか調達できなかったのです。

ここで大事なことがあります。
すでに市場を捉え、ある程度の経験とユーザー、さらにサポート体制を持っている企業の場合は、新規投資に掛ける費用は少なくて済みます。
また、ソフトの機能がある程度のレベルでも販売できます。
しかし、販売するための組織や仕組み、サポートツールや体制、ノウハウなどを持っていない新規企業は、その全てを事前に作ることは難しいのです。
さりとて、圧倒的に優れた機能を持つソフトを開発することは、1億円でも足らないくらいです。
そうしたことも分からず、2000万円程度の開発費で、圧倒的に優れた『何か』を生み出すことなど出来るはずもなかったのです。

それで、しばらくは、建設業関係の受託ソフトの受注に力を注ぎました。
幸い、建設企業の実務を熟知し、かつ、ソフト開発の技術を高いレベルで有していたことで、受注は好調に推移しました。
こうして、1年で5000万円の利益を積み上げ、再度、パッケージソフトの開発に挑むことにしました。

しかし、CADソフトは、失敗のトラウマもあり、商品化は諦めました。
では、どの分野の商品を開発するかですが、答えは「市場が決める」でした。
受託開発の依頼で最も多かったのは、基幹業務ソフトでした。
つまり、建設業の原価管理、財務管理です。
当時、パソコンベースで動く同種のパッケージソフト商品は、すでに販売されていました。
しかし、全て「スタンドアローン」、つまり1台のパソコン上で単独で動くソフトです。
何しろ25年前の話です。
社内LAN環境で動くパッケージソフトは、当時オフコンと呼ばれていた、かなり高額のコンピュータ用しかありませんでした。
離れたところにある支店を回線で結んで動くソフトとなると、汎用という大型コンピュータが必要になる時代でした。

そんな時代でしたが、弊社は、パソコンベースで動くネットワーク対応の基幹業務ソフトの開発を目論んだのです。
しかも、広域回線網を使い、支店をも統括管理できるパッケージソフトです。
これが、弊社が見つけた「圧倒的に優れた『何か』」だったのです。

成功する自信はありました。
しかし、大きな落とし穴が待っていたのです。
その話は次号で・・