企業における社長の力(8)

2019.03.04

弊社は、創業時のブルー・オーシャン戦略が功を奏し、建設業のシステム化において独自の市場を確立することが出来ました。
さらに、建設会社時代の経験を武器にした「現場に即したコンサル事業」を立ち上げ、順調に業績を伸ばしていきました。
 
しかし、創業10年を迎える頃から、自分が急峻な山の稜線を歩いているという感覚が鈍くなっていたのです。
いつしか、深い霧に巻かれるか夜の登山のようになっていったのです。
 
新規に起こしたコンサル事業は好調で、システム事業にも好影響を与えていました。
しかし、自分の手が回らなくなり、増えてきた社員のことも意識の外になっていきました。
 
創業者に共通に見られる傾向ですが、新規の事業への関心が高くなる反面、既存事業への関心は低くなっていきます。
私も同様でした。
「それではいかん」と思いつつも、既存事業は幹部にお任せ状態になっていきました。
当然、既存事業の収益は落ちていき、ついには赤字状態に転落するという事態になりました。
経営者として座視するわけにはいかない事態ですが、私は、経営の山の稜線から足を踏み外しました。
 
好調だった新規事業の利益を既存事業の赤字の穴埋めに使うという愚策を行ってしまったのです。
そこにあったのは、そうして支えているうちに幹部たちが奮起して盛り返してくれるだろうという「根拠のない」期待でした。
 
他社のコンサルをしていた自分が、自社のコンサルなら、どう言ったか。
それは明白でした。
「既存事業を縮小し、幹部たちの首を切るか幹部の体制を一新せよ」です。
しかし、私はそうした「自分の声」に逆らってしまい、淡い期待にすがりました。
 
結果は、もちろん明白です。
3年間、既存事業の赤字を補填しましたが、事態は悪化する一方。
ついに補填も底をつき、会社全体が大赤字に転落し、倒産の危機に直面しました。
まさに稜線から転落し、奈落の谷底へと落ちていったのです。
 
続きは次回に。