これからの近未来経済(2):EV(電気自動車)時代が到来?

2021.01.15


主要先進国が先を争って2050年温室効果ガス“実質”排出量ゼロを宣言しています。
英国やEUだけでなく、日本の菅首相や米国のバイデン次期米大統領、そして中国の習近平主席までも全く同じ温室効果ガスゼロを宣言しています。
かつ、2030~2035年にはガソリン車の販売を禁止することまで横並びです。
「どうせ、その頃には自分は引退しているから・・」というような思惑まで透けてみえる光景です。
 
という皮肉は、ここまでにしておいて、技術的な面を述べます。
温室効果ガス排出ゼロを実現するための方法としては、電池駆動や水素の利用、さらにはCO2(二酸化炭素)を補足・貯留するカーボンサイクル、人工光合成などがありますが、経済的にどれも実用領域には達していません。
EV(電気自動車)は、CO2を排出しない発電で電気を作らないことには本末転倒となります。
原子力発電が最も良いのですが、今の世論では難しいですね。
太陽光などの自然再生エネルギーを普及させよという声は高いですが、不安定さやエネルギー効率の悪さ、新たな廃棄物問題といった課題をクリアーするのは、それこそ2050年までには無理と思われます。
ゆえに、各国とも、ガソリン車禁止以降もハイブリット車は5年ぐらい延ばすことにしています。
 
欧州や中国ではEV車が急激に増えていますが、補助金漬けで、フランスなどは購入代金の半額を補助するなど大盤振る舞いです。
かつ、フランスの電力の75%は原子力発電です。
とても日本の参考にはならないわけです。
 
電気代の問題もあります。
EV車の電気代は、燃費の良いハイブリット車より高くなります。
もし電気の大半を再生可能エネルギーで賄うとすると、その差は広がる一方です。
経済的には、とても合わない数字です。
 
韓国などでは、EV車の火災が頻発しています。
現在主流のリチウムイオン電池には微妙な温度調整が必要ですが、この調整が狂うと電池内部に異物が混じ、これとショートした火花が電解液に着火するというリスクがあります。
火災の大半はこうして起きます。
私も、かつて、現場で使用していた電池駆動の高所作業車の電池が爆発するという経験をしました。
部下の監督が負傷するなど、大変でした。
それ以来、電池駆動の車両を信用しなくなりました。
もちろん、日本のEV車の安全性は信頼できるのでしょうが、その安全費用の上乗せ分はバカにならない金額になっています。
 
日本は、EV後進国と思われていますが、焦る必要はありません。
HV(ハイブリット)からガソリンエンジンを外して電池を大型化すればEVになるし、PHV(プラグインハイブリット)なら、もっと簡単です。
日本のメーカーが焦っていないのは、いつでも投入可能だからです。
最大の課題は電池で、次世代の「全固体電池」が出来るまで焦らないという姿勢です。
全固体電池とは、超簡単に言うと、リチウムイオン電池の電解液を固体材料に変えたものです。
これで、発火リスクや性能の低下などを解消でき、かつ航続距離も長くなるという優れものです。
政府は、この電池の実用化への技術開発を後押ししていて、補助金支給などを予算化しています。
今後は、世界各国でこの次世代電池の開発競争が激化しますが、日本が先端を走っていることは間違いありません。
 
世界最大の自動車メーカーのトヨタは「後出しジャンケン」と言われる、かなりエゲツない戦略・戦術が得意です。
ある分野でトップに立ったライバル社を徹底的に研究し、すべての面でライバル車を上回る車を一気に市場に投入するという戦略です。
トヨタに限らず日本メーカーは、電池問題だけではなく、そのインフラ整備、費用対効果などに目途が立った段階で、一気に市場に打って出る準備をしています。
それを国が強力にバックアップするという二人三脚がカギとなるでしょう。