商品開発のおもしろさ(8)

2021.02.15


コロナ禍で、テレワークなどの「ビジネスの非接触化」が進展したように報道されていますが、中小企業を中心に、徐々に元に戻りつつあるようです。
それはそうでしょうね。
ビジネスの非接触化は、働くひとり一人が自己確立して仕事が出来ていることが前提です。
そんな働き方が出来ている人が、果たしてどのくらいいるでしょうか。
ネットに繋がったパソコンさえあればOKというのは、さすがにムリと思いますが・・
そのような調査結果を見たことがないのですが、そもそも、調査データはあるのでしょうか。
 
その一方で、人間をまったく使わない完全自動化の世界は静かに広がってきています。
例えば、半導体製造は、工程のすべてが人間の目には見えない世界になっていることで、早くから完全自動化の世界になっています。
半導体の商品設計すら99%自動化された世界です。
こうなると、人間は不要なので、商品開発の“おもしろさ”など皆無の世界となります。
 
なので、毎度の“昔話”をします。
自分の話で恐縮ですが、一つの事例としてお聞きください。
少年時代から20代の頃まで、秋葉原に通い、自分で作成した設計図をチェックしながら必要な部品を安く手に入れ、模型だけでなく、ラジオからパソコンまで自作してきました。
どんなものを作ろうかの企画(?)から設計図作成、部品集め、組み立てまで、どれも時間を忘れる楽しい“しごと”でした。
夕飯も食べずに徹夜で設計図描きや組み立てをした日々は、この年になっても、懐かしい思い出です。
 
大学時代には、友人たちと手分けしてスクラップ屋から解体した車の部品を買い集め、実際に動く自動車を組み立てました。
もちろん公道は走れないので大学構内を走らせましたが、大学からはこっぴどく怒られました。
 
米国から手に入れた金属製の精巧なモデルガンを分解して、設計図を作成し、大学の工作機械を使って各部品を製作し、実際の拳銃を作ったこともあります。
もちろん犯罪になるので、組み立ては休みの日に密かに行っていました。
弾丸も数発製作し、友人たちと山の中で発射実験もしました。
10mぐらいの距離でフライパンをぶち抜きましたから、十分に殺傷能力があるものでした。
友達とは「これで“やまぐちぐみ”に就職できるな」なんて、とんでもない笑い話をしていました。
 
ただ、弾丸を撃ち尽くした後で調べたら、拳銃の筐体にヒビが入っていました。
「もう一発撃ったら、指がなくなっていたかも・・」と怖くなりました。
試作品から商品のレベルに引き上げる難しさを痛感した思い出でもあります。
 
このように、開発の面白さに没頭し過ぎると、善悪の垣根を飛び越えてしまうのが、技術者や科学者の常だと思います。
原爆を開発したオッペンハイマー博士らのマンハッタン計画に参加した科学者たちも、同様の心理だったのではないでしょうか。
広島・長崎の惨状を知った博士が「とんでもないものを作ってしまった」と言った話が伝わっています。
 
上記の例から分かるように、商品開発には、面白さだけでなく「社会に対する責任がある」ことを同時に考えるべきなのです。
しかし、昨今のAIなどの言葉の乱発には、そうした思いは感じられません。
それどころか、「人間はAI以下だ」と、人間を卑下するメッセージを感じるくらいです。
「これでいいのかな?」と思う今日この頃です。