人を育てる(2):有能な人材を育てる

2014.06.30

前号では、大手損保会社で人材育成を担当してきた友人と私のやり取りを紹介しました。
その最後の部分を含めて続きをお送りします。

私:ということは、創業者は、10年以内にこの3%の人材を確保することが会社の生存につながるのではないかな。

彼:まあ、確かに、そういうことは言えるな。

私:しかも、君の話から、彼らを見抜くポイントは分かった。
  彼らが失敗したときの対処を見ればいいんだよな?

彼:そうだよ。

私:では、中小企業は、彼らをどうやって育てていったらいいのかな?

彼:まさに君がさっき言ったことだよ。
  早いうちに失敗させればよい。
  そこから学ぶ者だけを育てていくことだよ。

私:しかし、その失敗は企業に損害を与える。
  大企業と違って中小においては、その損害はバカにならないよ。

彼:その損害とのバランスを考えることも経営だろう。
 
私:そうは言うけどね・・
  かつて、私は大事なプロジェクトのリーダーを30才そこそこの者に任せ、あやうく会社を潰すところだった。
  あのような危険はそうそう犯せないよ。

彼:その者は、その後どうした?

私:もちろん、リーダーから外して別の仕事をスタッフとしてやらせたが、
  すっかり意気消沈して使い物にならず、結局辞めてしまったよ。

彼:ははっ、いや、笑って申し訳ないが、それは、そもそも「人材では無かった」ということだよね。
  酷なことを言えば、君の人選ミスだよ。

私:・・・
(さすがにムッと来て、言葉が出なかった)

彼:気を悪くしたかな?
 では、その人間を登用する前に「小さな失敗でもさせて、その対処を見ること」をしたかね。
 
私:いや、していない。

彼:どうして?

私:大企業の出身なので信用した・・。
  そうだよな、そこが間違っていたんだよな。
  さらに、根本の教育を怠っていたんだと思う。

彼:その根本の教育とは?
 
私:「我が社は大企業ではない。中小の零細企業なんだ。だから、君の大企業病から治療をする」
  こうした教育だよ。

彼:分かっているじゃないか。
  君が創業時代に一番苦しんだのは、大企業病からの脱却だったと、前に話してくれたじゃないか。
  まさに、君の最大の弱点がそこにあるんだよ。

私:僕の最大の弱点?

彼:そうだよ。君は“優しすぎる”んだよ。
  自分の負った苦労を社員に味わせたくはない、と考えてしまうんだよ。
  それが社員にとってはアダとなってしまうのにね。
  それを「残酷な優しさ」と言うんだよ。

私:痛いところを突くね。

彼:大半の中小企業トップは、社員教育を理解していないんだよ。
  自分を絶対視し、自分の考えや体験を絶対視してしまう。
  しかし、社員それぞれには、それぞれの人格、考え方がある。
  そこを見ずに、絶対視した自分をモデルにしろと暗に強制してしまう。
  それを、強引な言い方をする人もいるし、優しい言い方をする人もいるさ。
  でも、みんな同じさ。
  経営トップには「自己肯定」が必要だが、それは自分の胸の内に収めて、外に出すものではない。
  教育の場面では、その種の「自己肯定」を捨て、相手の胸の中に入って考えなくてはダメなんだよ。
  君は、その自己改革もせずに社員を教育しようとして失敗したんだよ。

彼の話は、グサグサと私の胸に突き刺さった。全てが彼の言うとおりだったからである。
さて、この話は次号も続きます。