日本の未来を明るくするには(10)

2014.11.30

10%への再増税延期に対し、早速、ムーディーズは日本国債の格付けを1ランク落とした。
それでも「長期的には安定」と妙な注釈を付けた。
この処置に対し、為替相場も国債価格も反応が乏しかった。
日本経済は、従来の定義で判断できる経済ではなくなってきているということであろうか。

今回の再増税見送り発表の前、各紙は企業に対する賛否アンケートの結果を発表していた。
予想されたことではあるが、大企業は賛成、中小企業は反対が多くを占めた。
例えば、11/16日の朝日新聞、「主要企業100社への景気アンケート」では、60社が「法律に書かれている通り、来年10月に再増税すべき」と答えた。
その理由だが、43社が「財政再建」、9社が「社会保障費などの確保」と、圧倒的に財政再建への懸念が大きいことが分かる。
大手は、海外売上比が高いことと消費税の還付額が大きいこともあって、増税の痛みはほとんど受けない。
それより財政再建への黄色信号が気になるのである。

一方、11月14日に発表した帝国データバンクの「消費税再増税に関する企業の意識調査」によると、再増税延期や中止を求める否定的な回答が7割近くに上った。
食品関連の小売業では約半数が現行税率8%の維持を求めているなど、消費者により近い業界の抵抗感がとても強いのも当然の結果といえる。

安部首相は、再増税は1年半延期するが、再延期は無いと言い切っている。
その間に経済の立て直しをするとの意思表示は歓迎するが、具体的な方策は未だ示していない。

アベノミクスの第三の矢とは「規制緩和」だと本メルマガでも繰り返し述べているが、このところ、逆の規制強化が目立っている。
これは、標的になっている官僚の抵抗の表れと見ることも出来る。
規制が大幅に緩和されれば、それに伴い監督官庁の権限は大幅に縮小される。
その権限に群がる族議員たちと組んでの官僚の抵抗は激しい。
公約違反と非難されている国会議員定数の削減も、これら族議員たちの抵抗によって進まない面が強い。

思わぬ誤算で失敗に終わった女性閣僚の登用も、真の狙いは、官僚と族議員たちとの分断だったはずである。
女性議員のほうが官僚との結び付きが弱いからである。
だが、官僚は闇の情報も独占している。
この登用を逆に利用して官邸を追い込んだ。

安倍政権の政敵は野党ではない。
官僚と組んでいる族議員たちとその後ろにいる、かつての派閥のボスたちである。
つまり、敵は身内なのである。

今回の解散の真の目的は、自民党内の敵の動きを封じるためである。
選挙で「国民の支持を受けた」とのお墨付きを得、女性閣僚登用の失点を回復し、官僚と族議員たちの抵抗を排除して、アベノミクス第三の矢(規制の大幅緩和)を推進する。
首相の真意がそこにあるのであれば、私は首相を支持したいと思う。
そうでなければ、「棄権」となるかもしれない。
この選挙戦の情報を注意深く追っていき、最終判断をしたいと思う。