中小企業の経営(2):自分がいなくなった後の経営

2014.10.31

経営者が自らを戒めなくてはならない意識は、「見栄」「奢り」「傲慢」「焦り」「恐怖」です。
経営がうまくいかないと思ったら、自分の胸に手を当ててみることです。
自分がこの通りの心理になっていることに気付くはずです。
 
さて、前号の中里スプリングの中里良一社長のお話はいかがでしたか。
私は「社員の数はずっと28人」が、とても印象に残りました。
「規模を大きくすれば肉厚が薄くなる」も、その通りと共感できます。

そもそも、中小企業の生存確率は驚くほど低いのです。
統計データによれば、50年生存できる確率は3%ということです。
今日までの経済下での数字ですから、今後はもっと厳しい数字になるでしょう。
私は、今の中小企業が、これから50年後に生存できる確率は1%程度と思っています。

この問題の最も厳しい点は、今の経営トップの大半は、50年後には「いない」という点にあります。
果たして、どれだけの経営者が「自分がいなくなった後の会社」の存続に責任を感じているでしょうか。
また、たとえ責任を感じていても、具体的な策を持ち、実行されているでしょうか。

経営者もある程度の年齢になると、
メインの金融機関から「後継はどなたを考えておられますか?」と聞かれると思います。
その候補者を決めておられる方でも、自分なき会社を運営する方策まで考えておられる方は少数と思います。
せいぜい、「自分の経営を引き継いでくれれば・・」程度ではないでしょうか。

しかし、今後の日本経済は、そんな甘い考えが通用する世界ではなくなります。
大企業をのぞいたら、生き残れるのは小さくて個性のある会社だけです。
現在の経営者は、その個性の原資を見出し、あるいは新たに創り、磨いて、次の経営者が駆使できるようにして渡す必要があるのです。
 
そして、「人による統治」ではなく「法による統治」への切り替えを目指すべきです。
ここでいう「法」には公的な法令も含まれますが、それよりも「経営の仕組みやルール」を指します。
それを、後継指名した者に作らせ、自分はバックアップに回ることです。
そして、その仕組が出来て、確実に回り出したら、スパッと身を引くべきです。

また、「法による統治」には、誰もが理解できる企業理念が必要です。
しかし、「社会に貢献」とか「お客様の利益・・」のたぐいの標語的理念ではダメです。
中里良一社長の掲げる「社員の数はずっと28人」のようなものが良いです。

ただし誤解しないで欲しいのは、「28人」という数字が大事なのではありません。
次の経営者が「10人」にしても、「50人」にしても良いのです。
掲げる数字の意味を納得できるように説明できることが大事なのです。