建設雑感:賃金引き上げと歩切り (1)

2013.10.31

最近、本メルマガに建設関係の記事が少なくなったとのご意見を頂戴した。
昨年は、記事の量が増えて読みにくくなったとのご指摘を受け、月2回に分割したのであるが、扱うジャンルが増えたこともあり、たしかに、建設関係の記事が少なくなった。
ということで、今号から、不定期になるが、「建設雑感」なる本章をお届けすることにした。

最初は、賃金引き上げ問題に関する話題を。
国交省は今年3月に公共工事の設計労務単価を15%引き上げた。
その後も、建設業団体に労務費を引き上げる要請をしたり、日経連や商工会議所に「賃金や法定福利費を見込んだ発注を」訴えたりした。

引き上げ理由の建前は、現場作業員の賃金を上げて「よりよい業界へ」とのことである。
だから、「オレの給料が15%上がる」と単純に期待した人もいたと思う。
しかし、中建連のアンケートで「下請けへの発注単価を上げた」と答えたゼネコンは23%であった。
しかも、いくら上げたまでは答えていない。
実態は、こんなアンケートでは分からないのである。
それで生
の声を少々。

ゼネコンから言わせれば、「下請けへの発注価格は上がっているし、職人確保が大変だ。単価どうのこうのという状況やない」のである。
材料の高騰や職人不足から来るコスト増などの吸収で精一杯という言い分である。
では、下請け会社は儲かっているのであろうか。
ある社長は、「安い給料じゃ職人が集まらんからな。とっくの昔に賃金は上がっとるよ」と言う。
だから、会社は儲けがないと言いたいのである。
でも、職人に言わせれば、「自分の子供にはやらせたくない職業」と言う。
きつい割には、不安定で賃金も低いというわけである。
はてさて、労務単価の15%上昇はどこに消えたのであろうか。

答えは「誰にもわからん・・」のである。
そもそも「設計労務単価」の決め方が不透明である。
国交省は、労務賃金の実勢調査をベースにしていると言うが、今の調査内容、方法で実勢を把握できるとは思えない。
基礎データからしてあてにならない。

受注側にいたっては、もっとひどい。
労務賃金を基にして正確に外注コストを計算し、それを発注に反映させているゼネコンなんていますか。
いても、ごくわずかしか存在していない。

しかも、地方の発注機関のかなりで「歩切り」が横行しているという。
全中連のアンケートによれば、市町村発注では51%に及ぶ。
これでは労務単価の15%上げなど吹っ飛んでしまう。

この問題は次号でも引き続き取り上げたいと思う。