原油価格の下落をチャンスとせよ (1)

2015.01.30

昨年末から続く原油価格の下落は、年内一杯は続きそうです。
仕掛け人である米国に戦略変更のきざしがないからです。
米国は、明らかにプーチン大統領率いるロシアの力を削ぐため、露骨な経済戦争を仕掛けています。
自国のオイルシェールにとっても打撃となる価格下落へ踏み切った米国の戦略をプーチン大統領は読み切れなかったようです。
世界に対しては勿論、ロシア内部におけるプーチン大統領の影響力は大きく削がれました。

そのロシアと手を組む戦略を取った中国は複雑です。
原油の大量輸入国である中国にとって価格下落は望ましいですが、政治的には打撃です。
米国の力が上がり、ロシアが沈む世界は、習近平政権にとっては悪夢です。
対米戦略、対日戦略の修正を余儀なくされる事態です。
今後の中国の出方に注目していきます。

日本にとっては大きなチャンス到来といえます。
一部評論家は「手放しでは喜べない」と相変わらずのピンぼけ発言をしていますが、「手放し」とは言わないまでも、明らかにプラスの側面のほうが大きいです。
評論家であるなら、「このチャンスをどう利用するか」の戦略的目線で解説して欲しいものです。

政府がこのチャンスを座視しているとは思いませんが、迅速な行動が必要です。
まず第一にやるべきことは、打撃を受けている産油国とのパイプを経済のみならず政治的にも太くすることです。
その意味から、安部首相が年明け最初の外遊先に中東を選んだことは評価できます。
イスラム国(IS)による人質問題にからめて今回の外遊を批判する向きがありますが、相手は犯罪者集団です。
水面下での対応で解決すべきで、外交的影響を最小に抑え込むことが肝心です。
菅官房長官の記者会見を見る限りでは、その意図が伺えますが、うまく解決して欲しいものです。

次に、エネルギー戦略をアベノミクス第4の矢として格上げすべきです。
課題の原発再稼働も、この戦略の中に組み入れ、長期的視点で計画を練り直すべきです。

西欧以外の多くの国では、原発開発への意欲が旺盛です。
このことは、一方で、事故の発生確率が上がることを意味しています。
いくら欧米や日本での反対論が根強くても、原発の稼働数は増え、事故が起きる可能性は増え続けます。
原発事故を経験した国は、米国、ロシア、日本の3カ国しかありません。
しかも日本は、原爆被災、漁船の被曝などで多くの犠牲者を出した国です。
今も、福島では事故の終息に苦闘を重ねています。
これらの経験で世界に貢献できる日が必ず来るでしょう。
第4の矢には、それだけの思いを込められるはずです。

今号は政府の日本経済への対処を述べましたが、次号で企業、特に中小企業の対応策を述べたいと思います。