AIは果たして人間社会に益をもたらすのか(4)

2016.12.16

前号で、「近い将来コンピュータによって置き換えられていく可能性の高い職業」として、多くの職業をあげました。
しかし、いずれの予測調査でも、建設現場の仕事の大半はリストに入っていませんでした。
では、建設現場は安泰(?)なのか・・を、今号では論じたいと思います。
 
読者のみなさまには、この結論は既に分かっていらっしゃることと思いますが、暇つぶしにお付き合いください。
 
AI(人工知能)とロボット工学が結びつくことによって、人間の身体活動の全てが置き換えられるという世界は、いずれ実現するでしょう。
世界のロボット研究の中には、21世紀の半ばまでに「ロボットチームが、サッカーのワールドカップの覇者を破る」という研究があるそうです。
そこまで発達したならば、建設現場での「人がロボットに置き換わる」ことも現実化すると思います。
 
しかし、建設現場での人の動きは複雑です。
現場ごとに規模、形状、状況が異なり、しかも日々刻々と変化するわけです。
これは、ロボットが最も苦手とする状況・条件なのです。
ロボットの頭脳をAI化しても、変化の多様さと複雑さにAI学習が追いつくのは遠い先となります。
 
将棋は、打つ手が110万通りあると言われています。
囲碁は、その倍の220万通りです。
天文学的な数字と言えますが、性能の良いコンピュータと確率計算を効率よく実行できるソフトを組み合わせれば、解析は不可能ではありません。
事実、近年、そのようなシステムが出来て人間の名人と互角の戦いをしているわけです。
しかし、囲碁や将棋ファンの方には怒られるでしょうが、囲碁も将棋も、盤面が限られ、あらゆる確率が計算できてしまうゲームの世界です。
実際の建設現場はそうはいきません。
また、計算が外れて事故が起きても「ソフトのミスだよ」と言って済ませることはできません。
 
くどくどと、何が言いたいのかと言えば、「建設現場での仕事はそれだけ高度なのだ」と言いたいのです。
ロボットが進出する分野は増えていくでしょうが、建設現場の仕事は、最後まで人間の仕事として残る高度な仕事であることに誇りを持ちたいものだと思います。