企業における社長の力(5)

2018.12.17

フィットネスジム運営のRIZAP(ライザップ)が、2019年3月期の連結業績予想を下方修正しました。
当期の最終損益が当初の159億円の黒字から70億円の赤字に、営業損益が同230億円の黒字から33億円の赤字にそれぞれ修正するとの発表です。
つまり、赤字転落ですから、完全なる経営の失敗というわけです。
 
派手なTVコマーシャルなどから意外に思った方も多いと思いますが、赤字転落の主因は、M&A(企業買収)でした。
経営不振企業の買収を積極的に続けてきたのですが、それらが軒並み赤字脱却できなかったということです。
急遽、新規のM&A(企業の合併・買収)の凍結や社長の役員報酬の全額返上を発表しましたが、回復可能なのでしょうか。
来期の動向が注目されます。
 
そんな折、ソフトバンクが、ドローンを使ったインフラ点検事業に2019年春から参入することを発表しました。
「そんな技術を持っているの?」と思いましたが、米国の会社(5×5テクノロジーズ)に出資して、技術を独占するということです。
ソフトバンクは、M&Aとアリババへの出資のような投資事業で大きくなった会社ですから、ライザップの先輩のような会社です。
 
ソフトバンクは、上場するということで大宣伝を繰り広げていますが、市場から資金調達をせざるを得なくなっていると、私は受け止めました。
上場すれば投資家に対する説明責任が生じますから、これまでのような孫社長の独断による意思決定に制約がかかることになります。
もちろん、そんなこと十分に考えた上での上場でしょうから、外野がとやかく言うことではありません。
しかし、孫社長の経営手法は「すごいけど、まったく参考にならない」と思わざるを得ません。
 
やはり、自分には孫子の兵法から得た「強者には出来ない、弱者だけが出来る道」を行こうと思います。
前号に書いた「ブルー・オーシャン戦略」は、その現代版といえる戦法です。
 
しかし、いくら立派な戦略があっても、実行できるレベルにまで落とし込んでいかなければ成果は得られません。
我々は、その具体的な手法として、「競争前の競争に勝とう。競争に巻き込まれたら撤退しよう」を合言葉にしています。
まさに、孫子の説く「戦わずして勝つ」の自社流のアレンジです。
新規営業の場面などでは、競合相手と価格競争を強いられたら「引け」と指示しています。
不毛な価格競争に巻き込まれるのは愚の骨頂だからです。
 
実は、この「競争前の競争に勝とう」は、サラリーマン生活20年の中でたどり着いた戦法なのです。
この話は、また次回に。