これまでの経済、これからの経済(6)

2020.02.19

日本経済をドン底に落とす要因となったバブルの期間は、1986年12月から1991年1月までと言われています。
私が建設会社の管理職として過ごした時期と重なります。
つまり、バブルを起こした側の人間だったわけです。
 
会社全体が浮かれていました。
社内では、「10億円以下はクズ工事」と公然と言われていました。
一晩100万円、200万円の接待など当たり前の雰囲気の中で、正常な感覚が麻痺していきました。
経理へ行き、「今度、重要な接待がある」と言うと、経理から「1つですか2つですか」と聞き返されます。
1つとは100万円の現金の束を意味します。
「今回は2つ」と言って、現金の束を受け取り、銀座に出向くわけです。
 
当時の銀座は、そんな社用族であふれ、タクシーを捕まえることが一仕事でした。
でも、高級クラブからだと、不思議とタクシーが捕まります。
それはそうです。我々は3~4万円のタクシー代を払う客でしたから上客でした。
 
さて、そんな思い出話はどうでもよく、本題に入ります。
バブルを一言で表現すると、「本来の価値とはかけ離れた値段を付けること」となります。
銀座の10坪の寿司屋の土地が10億円で売れました。
しかし、銀座とはいえ、寿司商売で、1坪1億円の儲けは容易には作れません。
実際の儲けが1000万円だとすると、10坪で1億円。
その差額9億円がバブルとなるわけです。
でも、その土地を20億円で転売したとすると、バブルは19億円となります。
こうしてバブルは膨れ上がりますが、実商売の価値は1億円のままです。
 
お分かりのように、バブル時には、良識を持っている人はそれほど儲けることができません。
「このバブルは異常だよ。いつかは弾ける」ということを理解し、無茶をしないからです。
バブル真っ盛りの頃、著名な経済評論家が、こう発言しました。
「いま、大きな投資をしない経営者は経営者じゃない!」
このような評論家に煽られて、無茶な投資を続ける人がバブル時には勝者となります。
 
しかし、いつか誰かが言い出します。
「あの銀座の10坪の本当の価値は、せいぜい1億円だよ」
札束に狂奔していた人々が、ハタと気が付きます。
「そうだよ、もともと、あの土地は1億円もしなかったんだよ」
その瞬間、20億円のうち19億円が泡と消えます。
バブル崩壊は、こうして一気に起こります。
 
現代は、投資バブルの時代です。
この時代の寵児は、間違いなくソフトバンクグループを率いる孫正義氏です。
ひたすら多額の借金をして投資を続けてきましたが、追い風が吹きアリババ等の投資先の大成功が続き、綱渡りに成功しました。
しかし、ウィーワークスの失敗に見られるような逆風が吹き始めています。
孫さんは、グループ内の資金の流れを複雑にしているので、全容は分かりません。
また、携帯事業やヤフー以外のビジネスの実態も見えません。
こうした煙幕作戦が功を奏して再び、「破竹の快進撃」になるのか。
それとも「自転車操業」に陥るのか。
これから見えてくるのでしょうか。