これまでの経済、これからの経済(11):アフターコロナという経済地図

2020.07.16


新型コロナウィルスは、人々の意識を劇的に変えてしまった可能性があります。
当然、多くの企業はその影響をもろに受ける身でありながら、有効な対処法が見つからない状況に置かれています。
「とにかく直近の対策を」と資金確保に着手することは大事ですが、今の事態を新たなチャンスに変えるぐらいのしたたかな経営戦略が必要です。
それには、今回の災禍を拡大させてしまった、これまでの経済のあり方の分析から始める必要があります。
 
多くの識者が指摘していますが、新型コロナウィルスが世界中に一気に広まってしまった根本の要因は経済のグローバリズムにあります。
世界中の消費者がより安価な商品を望み、世界中の企業がより多くの利潤を上げることを望んだ結果、最も安価で製造できる場所と方法を求めて、企業活動は一気にグローバル化しました。
こうした企業側のニーズに応える形で、情報革命が進み、大量輸送手段が世界中に張り巡らされ、大量の人間が世界中を飛び回る時代になりました。
こうしたグローバリズムは、貧富の格差を極大化させ、巨額の富を得るものを多く出現させました。
そうなると、こうした富裕層の財産を集め、ごく短期間に爆発的に増やす投資家が出現します。
投資市場は過熱し、企業株主はより高い利益を企業に求め続けます。
さらに、先進国は、こうした動きを後押しすべく公的資金を金融市場に大量に供給します。
中国のような「遅れた先進国」は、カネの無い開発途上国に目を付け、先進国から大量に手に入れた外貨(大半は債務)で開発途上国を借金漬けにして、外交面を含めて子分にしていきました。
 
かくして、体制の違いはあれど、経済面での国境線は消え、国家単独での役割も消えたと思うくらい、グローバル化が進んだわけです。
安く製造できるのならば、独裁国家であろうと人権侵害国家であろうと構わない。利益を上げることのみが正義だという考えに世界中が染まっていったわけです。
国際政治すら「商売だ!」と言い切るトランプ米国大統領は、その典型です。
 
こうした資本主義のグローバル化が頂点に達した、そのタイミングで新型コロナウィルスの感染拡大が起きたわけです。
考えてみるまでもなく、これだけ大量に人が動く時代でなかったら、感染がここまで一気に拡大することはなかったでしょう。
経済のグローバル化による人の大量移動は必然の結果ですから、コロナウィルスの感染拡大も必然の結果なのです。
この結果、一変して世界は急激な逆回転を始めたわけです。
世界各国は国境を封鎖し、国内においても人の動きを極限まで制限する。
医療器具や医薬品の囲い込み、生活必需品の買い溜め等、人々の心を恐怖が支配します。
 
ただ、ロックダウンのような強制的な制限は1ヶ月少々が限界で、各国とも徐々に制限を緩和し出していますが、当然ながら2次感染が発生し、拡大を続けています。
新型コロナウィルスに効くワクチンが開発され、広く一般に行き渡るには、先進国でも1年以上かかると予想されています。
その間に数回の感染が広がると、専門家は予想しています。
しかも、そうしたワクチンは高価になることが予想され、世界中に行き渡るには数年かかるとも言われています。
さらに、人々の心のなかに生じた恐怖心は、そう簡単には消えず、これまでの経済活動には一定のブレーキがかかったままになる可能性があります。
 
こうした経済を「アフターコロナ」と呼ぶようですが、次回から、こうした経済を自社の追い風に変える経営について論じてみようと思います。
弊社自身が追い風にできるかどうかは別として、出来る限り客観的に論じていきます。